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臨床腫瘍病理分野(柏)

:がん組織など写真

病理学は基礎医学と臨床医学を結びつける窓口の様な分野です。1994年に発足した臨床腫瘍病理分野は、ヒトがんの微小環境とがん生物像や臨床病理像を解析し数多くの研究論文を発表するとともに、TR研究を中心に発展し、HER2やEGFR診断など様々なコンパニオン診断法の確立・実臨床への導入、病理検体を用いたゲノム研究の標準化など、我が国のゲノム医療の基盤の提供を行ってきました。また、WHO組織分類やInternational Collaboration on Cancer Reporting(ICCR)などの国際的な病理標準化の一端も担ってきています。

これからの臨床腫瘍病理分野が目指すものは、病理学の革新であり、東病院の病理・臨床検査科と協働して高品質で世界水準に対応できる新しい病理診断・治療法の開発とともに、イノベーション技術によって得られる情報を統合した次世代の病理学の創成を目指します。特に見えないものや見ているが認識できていない情報(物性情報や新しいオルガノイドなど新規がんモデル情報など)を、デジタル化し、AI技術を用いた解析や数理モデル化することにより、次世代病理学を創成することです。このためには、企業との連携だけでなく、数理・物理・生物の統合を目指したアカデミア連携を推進し、次世代病理学の魁となるような研究を進めていきたいと思います。
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1:小嶋 基寛 (ユニット長)

がんを始めとして様々な病態において、腫れたり、熱を持ったり、硬く触知されたりといった、物性の変化が生じます。一方、がんの硬さが、その生物像と相関していることは判明していますが、その分子機構は明らかになっていません。私は主に腫瘍の物性計測から、病態における物性変化を病理学的な観点から検討し、発現情報やモデルの情報と統合させることで、がんは何故硬いのかを究明し、その生物学的な意義を解明します。
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2:坂本直也 (ユニット長)

がん研究の新しいモデルとしてのオルガノイドは、組織の制御機構を明らかにできる技術です。私は、胃がん、大腸がんを中心に、オルガノイドを用いて消化管がんにおける薬剤耐性獲得機構の解析を行ってきました。現在は病理観察から抽出される、がん組織の特性や組織の制御機構をより生体に近い形で再現できる新しいin vitroモデルを自ら樹立し、時空間的な観点から、様々な解析を加えることで、がんの生物学的な特徴を様々な学問分野から多面的に解析できるプラットフォームの確立を目指しています。
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3:坂下信悟 (ユニット長)

がんは、病理組織を病理医が顕微鏡診断する事で確定されますが、AIの進歩はこの病理診断のあり方自体を変えてしまうかもしれません。今後の医療の中でAIがその力を十分に発揮するためには、標準化された情報をもとに開発されたAIによる病理診断支援技術(病理診断の完全標準化)が実現するかもしれません。このAI病理診断支援を適切に運用するためには、画像の標準化(画像の作成過程すべての工程の標準化)が不可欠であると考えられます。私は、病理標本作製および取得画像の全自動化を通じて、まず画像の標準化を達成することを目標としています。これが達成された暁には、遠隔医療なの様々な可能性にもつながると考えています。
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