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計算生命科学ユニット

発がんや悪性化といったがんの進展は、いつどこでどのようにして引き起こされるのでしょうか。近年、網羅的な分子計測を行うオミクス技術の発展によりがんの進展を網羅的な分子プロファイルに裏打ちされた時空間システムとして捉える下地が整いつつあります。当研究室では、一細胞・空間オミクス解析をはじめとする最先端のオミクス観測技術に対する情報解析技術の開発を行なっています。深層学習技術をはじめとするデータ駆動型アプローチに加えて、生命現象に対する深い洞察に基づく数理モデリングの技術を融合することにより、これまでにない革新的な解析技術の創出を行います。これにより腫瘍の進展の背後にある網羅的な分子プロファイルの時空間動態を捉えることで、腫瘍微小環境下において悪性化を決定づける細胞間相互作用の抽出等、がん医療に貢献する生物学的発見を目指します。
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当研究室の特徴的技術

深層生成モデルに基づく一細胞・空間オミクス解析技術

 多数の分子を一度に観測するオミクス技術の発展は、網羅的な分子情報を一細胞ごとに空間情報を伴って観測することを可能にしつつあり、RNAの発現とクロマチン状態など、異なる種類のオミクスが同時に観測されるようなケースも登場しています。このように複雑性を増しているオミクスデータから、効率的に知識抽出を行うためには高度な情報解析技術が必要となります。当研究室では、近年画像生成などの分野で大きな成果を上げている深層生成モデルの技術を応用した解析手法の開発を行なっています。深層生成モデルでは、変数間の関係性をニューラルネットワークで実装することにより、画像やDNA配列、発現量といった様々な形式の情報を統合したデータの生成過程の記述を可能にします。当研究室では、がん組織の中にある多様な細胞の状態を様々な角度から観測されたオミクスデータと深層生成モデルによって繋ぎ合わせることで、がんの進展を駆動する分子メカニズムの同定を目指します。

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深層学習と数理モデルの融合

深層学習を活用した取り組みが各分野で進む中、物理学の分野では、現象を記述する数理方程式を深層学習に対する制約として取り込むPhysics Informed Neural Networkという枠組みが発展してきており、人類が獲得してきた物理的な知見を深層学習に備えさせることで、物理学的に妥当な推論の実現が目指されています。一方で、このような数理的な関係性を記述する方程式は、がんを駆動する生命現象についても数理生物学の分野で見出されてきたものが多数あります。当研究室では、このような生命現象の数理モデルをデータの生成過程に組み込むことにより、生物学的に妥当な推定を行うとともに、数理モデルを実際のデータへと適合させる深層学習技術の開発を行なっています。これにより、数理モデルの記述する一細胞ごとのダイナミクスの解析や、最適化された数理モデルの前向きシミュレーションによる予後の予測など、多様な応用の展開を目指しています。

研究参加者の募集

当研究室では、一緒に研究にご参加いただける方を募集しております。プログラミングやデータ解析経験者の方はもちろん大歓迎ですが、未経験の方でも機械学習やバイオインフォの基礎から身につけていただくことができるように最善を尽くします(数理的なトピックが好きな方は特に親和性が高いかと思います)。現在、オミクス解析技術の飛躍的な進展によりデータの複雑性が増大したことで、その情報解析技術の開発はとてもエキサイティングな分野になっています。ぜひ、先端的情報解析技術の開発を通して、がん治療を大きく加速させましょう。
実際の参加形態としては、国立がん研究センターの連携大学院生としての参加も可能ですし、連携大学院の対象大学でなくても、学部生・大学院生のどちらでも任意研修生として研究にご参加いただくことができます。また、学振DC・PD研究員の受け入れ研究先としてもご検討いただければ幸いです。もし、興味がございましたらお気軽に小嶋(yakojim@ncc.go.jp)までご連絡ください。