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国立がん研究センター

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小児・AYA世代がん患者のドラッグアクセスの改善を目指す複数の適応外薬、未承認薬を対象とする医師主導臨床研究開始

2024年1月19日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 小児・AYA世代のがん患者さんで、日本で他のがんに承認されていても保険適応外である、あるいは海外ではすでに小児がんなどに承認されているものの日本では未承認であるために使えない治療薬を患者申出療養制度のもとで使いたいと希望する方に対し、安全性と治療効果を評価する医師主導臨床研究を2024年1月から開始しました。
  • 適応外薬あるいは未承認薬の予期せぬ副作用にも対応できるよう、医師主導臨床研究として適切な管理の下で薬を使用します。
  • 本研究において、新たな治療薬を使える体制を整えることにより、小児・AYA世代のがん患者さんのドラッグアクセスの改善を目指します。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:島田和明)は、患者申出療養制度*1を利用して適応外薬*2または未承認薬*3の使用を希望する小児・AYA(Adolescents and Young Adults:思春期・若年成人)世代の患者さんを対象に複数の医薬品を準備して行う医師主導臨床研究を2024年1月から開始しました。

本研究は、国立がん研究センター中央病院にて開始した後、国立がん研究センター中央病院が調整事務局となり、複数の病院での実施を予定しています。

患者申出療養制度は、適応外薬または未承認薬を迅速に使いたい旨を患者さんから医療機関に申し出た場合、その使用を国が承認すれば、原則全額自己負担となる検査や入院料等を保険給付の対象にする制度です。本研究は2023年12月21日の患者申出療養評価会議において、患者申出療養制度を利用した研究として承認されました。これによって、患者さんの申し出があり、対象となる医薬品の使用条件に合致する場合は、本研究に参加し、適応外薬または未承認薬を使うことができます。

医薬品は、本研究の趣旨に賛同いただいた企業から医薬品を無償提供していただきます。開始時点ではノバルティス ファーマ株式会社、中外製薬株式会社から無償提供される5医薬品を対象として実施予定です。今後さらに多くの企業の協力が得られるようお願いしてまいります。また、本研究を適正に運営するために必要な費用は研究費●から支払いますので患者さんの負担はありませんが、経過中の検査料や入院料等などは保険診療の範囲で患者さんのご負担となります。

●国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 令和5年度「臨床研究・治験推進研究事業」

背景

小児がんに対して国内で承認されている医薬品は、欧米に比べて多くありません。さらに、小児やAYA世代のがん患者さんが参加可能な治験や臨床試験も欧米に比べて少ないのが現状です。近年、難治性の固形がん患者さんに対してがん遺伝子パネル検査*4が使用できるようになり、小児がん患者さんでも治療候補となる遺伝子異常が見つかるようになってきました。ただし、小児がん患者さんの多くは、候補となる薬が承認されていない、または参加可能な臨床試験がないといった理由で、希望する治療を受けることができません。

現在、日本において治療選択肢を増やす試みとして、がん遺伝子パネル検査により判明した遺伝子異常に対し、患者申出療養制度を利用して適応外薬を投与するNCCH1901試験*5(遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく複数の分子標的治療に関する患者申出療養;BELIEVE試験)が実施されています。しかし、NCCH1901試験では小児を対象とする医薬品が限られています。

このような背景から、小児がん患者さんでは、海外で有効性が報告された医薬品の適応外使用、あるいは未承認薬の患者さんやご家族による個人輸入も含めた使用がなされることも少なくありません。適応外薬や未承認薬を使用する場合、効果が期待できる可能性がある一方で、予期せぬ副作用が起きることも考えられるため、適切な管理下で実施することが重要です。さらに、保険外診療となり医療費が原則全額自己負担となります。

注意)適応外薬の薬剤費については、国立がん研究センター「国内で薬事法上未承認・適応外である医薬品について」のページをご参照ください。
https://www.ncc.go.jp/jp/senshiniryo/iyakuhin/index.html

本研究は、患者さんのご家族からの「保険適用されていない薬を使用しなければならないのであれば、医師の管理の下で安心して使いたい」という声や、使いたかった薬を使えなかった患者さんのご家族の「自分の子どもの経験を他の子どもたちのために役立ててほしい」という要望などに基づき立案されました。

取り組みの詳細

本研究は、難治性小児・AYAがん患者さんを対象に、患者申出療養制度を利用して適応外薬あるいは未承認薬を投与する臨床研究です。

本研究で使用する医薬品は、すでに国内または海外で小児を対象とした臨床試験が行われており、小児における一定の安全性情報がある医薬品を対象としています。国内で小児に対する投与方法(用法・用量)が定められていない医薬品については、海外で承認されている小児に対する投与方法や小児に対する治験等をもとに、本研究に参加する小児がん患者さんにおける投与方法(用法・用量)を決めています。

本研究の概要は以下の通りです。

試験名

小児・AYAがんに対する遺伝子パネル検査結果等に基づく複数の分子標的治療に関する患者申出療養(Protocol No. NCCH2220;PARTNER試験)

対象となる患者さん 

(記載した以外にも対象患者さんとなるための規準があります)

  • 標準治療がない、または標準治療に抵抗性である0-29歳(注)の小児・AYAがん患者。
  • 以下のいずれかを満たすこと

1.保険適用または先進医療などで実施されたがん遺伝子パネル検査を受けて、何らかの適応外薬の推奨が、専門家会議(エキスパートパネル)及び担当医からなされていること。
2.国内成人または海外小児において薬事承認された医薬品の適応がん種と診断されていること

  • 適格規準を満たさないなどの理由により、治験や先進医療に参加できないこと
  • 日常生活に大きな支障がなく、重症の合併症を有さないこと
  • 血液検査や尿検査等の規準を満たすこと

注)対象年齢は医薬品によって変わることがあります。

募集期間

2024年1月より、4年間(予定)

予定人数

1医薬品あたり最大30人

実施病院

国立がん研究センター中央病院 (今後施設の追加を予定)

対象医薬品(2024年1月時点)

  • グリベック®錠100ミリグラム (一般名:イマチニブメシル酸塩)
  • ヴォトリエント®錠200mg (一般名:パゾパニブ塩酸塩)
  • ジャカビ®錠5mg, 10mg (一般名:ルキソリチニブリン酸塩)
  • メキニスト®錠0.5mg, 2mg (一般名:トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物)
  • 一般名: トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物経口液(未承認薬)
(ノバルティス ファーマ株式会社)

  • テセントリク®点滴静注840mg, 1200mg(一般名:アテゾリズマブ(遺伝子組み換え))
(中外製薬株式会社)

今後、対象医薬品が増えていく見込みです。

展望

小児がんの患者さんから使用したいという申し出があると想定される適応外薬、あるいは未承認薬などの医薬品をあらかじめ準備し、使える体制を整えておくことで、必要とする医薬品を迅速に患者さんに届け、医師の管理のもとで使用できることを目指しています。さらに、研究の中で収集する各医薬品の国内小児における治療効果や副作用のデータが今後の患者さんのために役立ち、さらには将来的に保険適用を検討する際の参考となることを期待しています。

 用語解説

*1 患者申出療養制度

困難な病気と闘う患者の思いに応え、先進的な治療を受けたいという患者さんの申し出を起点とし、身近な医療機関で迅速に受けられるようにする制度です。患者さんの申し出をもとに臨床研究中核病院が臨床研究を立案し、国の患者申出療養評価会議の承認を受けた上で、患者さんの希望する療養を安全性・有効性等を確認しながら臨床研究として実施します。国内の未承認・適応外のさまざまな治療法が対象になりますが、保険収載を前提とするものに限ります。したがって未承認薬等の費用に加え、保険収載を目指すためのデータ作成に対し、研究支援者の人件費や研究の品質管理、統計解析の費用などがかかり、それらを研究費から負担します。

厚生労働省「患者申出療養」制度とは?
https://www.mhlw.go.jp/moushideryouyou/(外部サイトにリンクします。)

*2 適応外薬

医薬品はその薬を使用する病気に対する効能・効果や投与方法(用法・用量)が細かく定められた上で承認され、公的保険での投与が可能となっています。承認されている効能や投与方法以外で投与される医薬品を「適応外薬」といいます。適応外薬の使用は原則保険外診療として実施する必要があります。

*3 未承認薬

外国(主に米国や欧州)で承認されているものの、日本では薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で承認されていない医薬品のことをいいます。未承認薬を使う場合、基本的には臨床試験のもとで使うことが必要となります。

*4 がん遺伝子パネル検査

1度に多数のがんにかかわる遺伝子の変化(遺伝子異常)を調べる検査で、見つかった遺伝子異常に合う治療薬を選び、その後の治療に役立てることを目的としています。がんゲノムプロファイリング検査とも呼びます。単一遺伝子の異常を調べる検査を複数回行うよりも検査時間が短く、患者さんが生検を何度も受けるという負担も軽減できます。がん遺伝子パネル検査を受けても遺伝子異常や対応する医薬品が見つからない場合もあります。

詳しくは下記をご参照ください。
がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査
https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp 
「がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査」ウェブサイト
(こちらのバナークリックでジャンプします。)

*5 NCCH1901試験(BELIEVE試験)

がん遺伝子パネル検査で治療候補となり得る遺伝子異常が見つかったものの承認されている医薬品や治験等の選択肢がない患者さんに対して、適応外薬を使用しその治療効果を検討する臨床研究です。詳しくは下記をご参照ください。

がんゲノム医療  治療選択肢の可能性を求めて(患者申出療養)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/genome/90/index.html

お問い合わせ先

  • 研究に関する問い合わせ

国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科 科長 小川 千登世 
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール: ncch2220_office@ml.res.ncc.go.jp

  • 患者さんからのお問い合せ先
国立がん研究センター中央病院
がん相談支援センター
電話番号:中央病院の患者さん・ご家族 03-3547-5051
     中央病院の患者さん以外の方 03-3547-5293 (平日9:00~16:00)
 

  • 広報窓口
国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール:ncc-admin@ncc.go.jp

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