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がん免疫療法でのT細胞応答モニタリングによる抗腫瘍免疫応答の本態解明
現在、抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体といった免疫チェックポイント分子阻害剤を用いたがん免疫療法が注目されています。これらの免疫チェックポイント分子阻害剤は、悪性黒色腫や非小細胞肺がんなどのいくつかの難治性悪性腫瘍に対して有効な治療法であると報告されていますが、治療効果がみられない患者も依然として多く、より効果的ながん免疫療法の開発が望まれています。この現状を解決するために、免疫治療を受けた患者さん体内の免疫細胞機能を解析する試みがなされています。近年の解析結果から、免疫療法はがん細胞の遺伝子変異によって発現する新たな抗原(neo-antigen)を多くもつ患者さんに効果的であると報告されています1,2。 私たちの研究室では、がん免疫療法を含む様々ながん治療を受けた患者さんから血液あるいは腫瘍組織を提供していただき、それらに含まれるTリンパ球の機能を解析しています(図)。解析には最先端の技術を導入しており、その一つとしてマスサイトメーター(CyTOF)を用いた新規標的分子マーカーの探索を行っています3。CyTOFは従来の蛍光抗体を用いたフローサイトメーター(現時点では最大30マーカー程度を同時に検出可能)とは異なり、重金属ラベルされた抗体を用います。この方法により、CyTOFでは理論上100を超えるマーカーを同時に検出可能であり、少量サンプルでも新規標的マーカーを効率よく探索することができます。また、上述したneo-antigen特異的T細胞の検出も試みています。Neo-antigenを特異的に認識するCD8陽性T細胞を検出することで、免疫療法後に抗腫瘍免疫応答が増強されているか否かを正確に評価することができます。さらに、Tリンパ球のTCR多様性にも着目しており、CD8陽性T細胞あるいは制御性T細胞のTCR多様性の広がりと治療効果との関連性を明らかにすることを試みています。これらの解析結果から、がん免疫療法に効果がある患者さんに共通する特徴的なTリンパ球のフェノタイプや動態を解明することで、がん免疫療法が有効な患者さんを層別化するとともにこれまでがん免疫療法に対して効果がない患者さんを治療する新規がん免疫療法を開発することができると考えています。
- Snyder A, Makarov V, Merghoub T, Yuan J, Zaretsky JM, Desrichard A, et al. Genetic basis for clinical response to CTLA-4 blockade in melanoma. N Engl J Med, 371:2189-2199, 2014 [PubMed(外部サイトにリンクします)]
- Rizvi NA, Hellmann MD, Snyder A, Kvistborg P, Makarov V, Havel JJ, et al. Cancer immunology. Mutational landscape determines sensitivity to PD-1 blockade in non-small cell lung cancer. Science, 348:124-128, 2015 [PubMed(外部サイトにリンクします)]
- Newell EW, Sigal N, Nair N, Kidd BA, Greenberg HB, Davis MM. Combinatorial tetramer staining and mass cytometry analysis facilitate T-cell epitope mapping and characterization. Nat Biotechnol, 31:623-629, 2013 [PubMed(外部サイトにリンクします)]