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医療者が患者中心のコミュニケーションを行なっていると認識している患者の割合は3分の1未満
更新日 : 2024年3月13日
概要
日本の医療者における患者中心のコミュニケーション:患者の認識と関連因子 -INFORM study 2020
背景
患者-医療者間のコミュニケーションは、医療の基本的かつ重要な部分です。特に、患者中心のコミュニケーションは、患者の知識を高め、患者医療者間の治療連携を強化し、患者の自己効力感を高めることにより、健康や生活の質に寄与しています。本研究の目的は、日本の医療者の患者中心のコミュニケーションについて、患者認識を記述し、関連因子を検討することです。
方法
本研究のデータは、INFORM Study 2020(全国の代表サンプルを対象者に実施された自記式質問紙の郵送横断調査)によるものです。有効回答者3,605人のうち、過去12ヶ月間に1度以上医療機関を受診した2,703人(75.0%)を分析対象者としました。患者中心のコミュニケーションに関する認識は患者中心のコミュニケーション尺度(patient-centered communication scale:PCCS)9項目を用いて測定しました。医療者がどれくらいの頻度(いつも,たいてい,ときどき,全くない)でそれぞれの項目を行なったかを患者に尋ねています。社会人口統計学的変数および健康関連変数を独立変数、PCCSの各項目を従属変数としてロジスティック回帰分析を行い、関連を検討しました。
結果
医療者が「いつも」患者中心のコミュニケーションをとっていると回答した患者の割合は、「質問をする機会を与えてくれた」25.8%、「気持ちや感情に十分配慮してくれた」21.5%、「健康管理についてしなければならないことを理解しているかどうか確認してくれた」19.4%、「理解できるように説明してくれた」31.2%、「十分に時間を取ってくれた」20.0%、「発言を尊重してくれた」21.5%、「注意深く聞いてくれた」23.4%、「治療を決める際に望みを聞いてくれた」21.3%、「先々の健康状態・治療効果等確実でないことの不安への対応を手助けしてくれた」17.3%でした。年齢50歳以上、高学歴、健康状態が悪いこと、過去 12ヶ月間に受診した回数が多いことと、患者中心のコミュニケーションの肯定的な認識との関連が示唆されました。
結論
本研究の結果から、日本において医療者が患者中心のコミュニケーションを行なっていると認識している患者の割合は低いことが示されました。 医療者と協力し患者が満足のいく治療選択を行い、適切な治療とケアに繋げるために、患者-医療者コミュニケーションの質を改善し、患者中心のコミュニケーションを促進することが求められます。
発表論文
Okamura M, Fujimori M, Otsuki A, Saito J, Yaguchi-Saito A, Kuchiba A, Uchitomi Y, Shimazu T. Patients’ perceptions of patient-centered communication with healthcare providers and associated factors in Japan – The INFORM Study 2020. Patient Educ Couns. 2024 May:122:108170. doi: 10.1016/j.pec.2024.108170.