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野中 美希

特任研究員インタビュー

野中 美希
がん患者病態生理研究分野

野中 美希
  • 現職
    研究所がん患者病態生理研究分野 特任研究員
  • NCC在籍期間
    平成27年から現在
  • 指導者
    上園 保仁(がん患者病態生理研究分野 分野長)
  • がん患者のQOL向上を目的としたcardio-oncologyに関する研究

私は、九州大学大学院医学研究院臨床薬理学分野において、拡張型心筋症によって起こる心不全に対する薬物治療に関する研究を行い、学位を取得しました。がんとは全く無縁な研究テーマを行っていましたが、就職を決める際、学部学生の頃よりお世話になっている先生に、一流の研究者を目指すなら一度は東京に出て九州では学べない研究環境で勉強するべきだ、と背中を押され大学の大先輩である上園保仁先生の研究室の門をたたきました。上園ラボではがん患者のQOLの維持・向上を目指すための研究を行っており、その中でも抗がん剤の副作用の軽減や、がん治療によって起こる痛みや苦しみを取るためにはなにをすればよいかを研究していました。

私はこの大きなテーマの中で今まで自分が学んできたことを活かせるようにCardio-oncology/Onco-cardiologyに関する研究を3年前より開始しました。Cardio-oncology/Onco-cardiologyとは近年新しくできた概念です。抗がん剤や分子標的薬の中には心毒性を持つものが知られており、またがん自身でも心機能障害を起こすことが知られてきました。こうしたがん治療やがん自身によって起こる心機能障害は晩期性のものが多く、がんが寛解した後に起こるケースもあるため、早くから心毒性や心機能障害を現すバイオマーカーも含めた検討が必要となってきています。基礎研究で心毒性発現のメカニズムを明らかにすることはもちろん重要なことですが、患者さんに還元するためにはやはり臨床研究が必要となってきます。国立がん研究センターは研究所と中央病院が併設されており、基礎から臨床へのトランスレーショナルリサーチが可能であり、臨床医ではない基礎の研究者にとっても臨床研究に携われるチャンスが得られます。

がん研究センターは、がん治療やがんの本態解明を行われている先生がほとんどですが、私のようにがん研究をこれまで主として研究していないような若手研究者にも、がん研究について学ぶ機会がたくさんあります。例えばがん研究のトップランナーの先生方がご講演され、その講演を拝聴する機会があること、さらに若手研究セミナーといって若手が運営を任されている研究所内での研究セミナーがあります。若手研究セミナーは、月に一度所長である間野博行先生が座長を務められ、各分野の若手研究者が3人ずつ自分の研究テーマについて発表を行っています。さらに、若手の研究発表に対して、研究分野を超えた活発な意見交換が交わされ、研究内容についてブラッシュアップする絶好の機会と、その延長で生まれる研究交流・情報交換の場を設け、国立がん研究センター全体の研究推進力を高めるような活発な活動を展開しています。がん研究センターでの研究生活は、がん研究に携わったことがない若手研究者にとっても、学ぶ機会はたくさんあり、若手研究セミナーで得られる情報や人間関係を活かし、自分自身のキャリアパス形成において大きなステップアップになると考えられます。

最後に、私が始めたCardio-oncology/Onco-cardiologyに関する研究は、この3年間で国立循環器病研究センター研究所の先生方、ならびに中央病院の先生方と臨床研究を準備できるところまで進んできました。今年の4月から臨床研究が開始されます。国立がん研究センター研究所にいなければこのような機会に恵まれることはきっとなかったと思いますし、この3年間で築いた研究環境ならびに研究体制は、もちろん指導者にも恵まれましたが、なによりがん研究センターで仕事をしていたからだと思います。理解ある指導者の下、自分が貢献できかつ自分だけのオリジナル研究は何かを考え、それに沿って進んでいくことで研究の視野も幅も広がりました。当研究所でこれまで取り組んできたCardio-oncology/Onco-cardiologyはがん研究でも今後重要性が増すと考えられ、この分野でオリジナリティとプライオリティを持って活躍できるよう精進したいと思っています。

主要な論文(NCC在籍中)

  1. Yoshiyuki Meguro, Kanako Miyano, Shigeto Hirayama, Yuki Yoshida, Naoto Ishibashi, Takumi Ogino, Yuriko Fujii, Sei Manabe, Moeko Eto, Miki Nonaka, Hideaki Fujii, Yoichi Ueta, Minoru Narita, Naohiro Sata, Toshihiko Yada, Yasuhito Uezono. “Neuropeptide oxytocin enhances μ opioid receptor signaling as a positive allosteric modulator.” (in press), J Pharmacol Sci. 2018.
  2. Kengo Hayamizu, Sachio Morimoto, Miki Nonaka, Sumio Hoka, Toshiyuki Sasaguri. “Cardiotonic actions of quercetin and its metabolite tamarixetin through a digitalis-like enhancement of Ca2+ transients.” Arch Biochem Biophys. 2017; 637: 40-47.
  3. Tomohisa Mori, Naoko Kuzumaki, Takamichi Arima, Michiko Narita, Ryunosuke Tateishi, Takashige Kondo, Yusuke Hamada, Hirotsugu Kuwata, Miho Kawata, Mitsuaki Yamazaki, Kazuyuki Sugita, Akinobu Matsuzawa, Kanae Baba, Takayasu Yamauchi, Kimio Higashiyama, Miki Nonaka, Kanako Miyano, Yasuhito Uezono, Minoru Narita. “Usefulness for the combination of G protein- and β-arrestin-biased ligands of μ-opioid receptors: Prevention of antinociceptive tolerance.” Mol Pain. 2017; 13: 1744806917740030.
  4. Miki Nonaka, Nagomi Kurebayashi, Takashi Murayama, Masami Sugihara, Kiyoshi Terawaki, Seiji Shiraishi, Kanako Miyano, Hiroshi Hosoda, Shosei Kishida, Kenji Kangawa, Takashi Sakurai and Yasuhito Uezono. “Therapeutic potential of ghrelin and des-acyl ghrelin against chemotherapy-induced cardiotoxicity.” Endocr J. 2017; 64: S35-39.