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PD-L1ゲノム異常の同定とがん免疫回避における役割の解明
ATLにおける遺伝子解析、およびthe Cancer Genome Atlas(TCGA)で利用可能な30種類以上の悪性腫瘍における10,000例を超えるがん横断的な解析を行い、ATLと12種類の主要な悪性腫瘍(消化器がん、肺がん、頭頸部がん、B細胞リンパ腫など)においてPD-L1 3′-非翻訳領域(untranslated region: UTR)を標的とするゲノム異常によりPD-L1の恒常的活性化が認められることを明らかにしました(Kataoka K, Nature, 2016)。さらに、CRISPR/Cas9システムおよびマウス腫瘍退縮モデルを用いた解析により、PD-L1 3′-UTR異常を持つ腫瘍は免疫回避による腫瘍増殖が促進されるが、その効果はPD-1/PD-L1阻害により著しく減弱されることを明らかにしました。これらの結果は、PD-L1 3′-UTR異常が免疫チェックポイント阻害剤の治療標的となり、そのバイオマーカーとして有用である可能性だけでなく、遺伝学的メカニズムが腫瘍細胞の免疫回避に重要な役割を果たすことを示しています。
図:様々ながん腫におけるPD-L1 3′-UTR異常(Kataoka K, Nature, 2016)
A. 様々な種類の構造異常によりPD-L1 3′-UTR異常が起こると、mRNA分解が抑制されてPD-L1恒常的活性化が誘導され、がん細胞の免疫回避が促進される。B. 各悪性腫瘍におけるPD-L1 3′-UTR異常とPD-L1発現の関係。
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