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B細胞リンパ腫におけるPD-L2の機能および発現制御機構の解明

我々は、マウスを用いた単一細胞マルチオミクス解析と、シス制御部位およびトランス制御因子に対するCRISPRスクリーニングにより、B細胞リンパ腫におけるPD-L2の腫瘍促進機能と発現制御機構を解明しました(Shingaki S, Koya J, Yuasa M, Leukemia, 2023)。PD-L1PD-L2は、免疫チェックポイント分子PD-1のリガンドです。これまで多く研究されているPD-L1とは対照的に、PD-L2のがんにおける生物学的意義と発現制御機構についてはほとんど知られていませんでした。我々は全がん解析によりPD-L2がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫で最も高発現であることを見出し、細胞系列特異的な機能と発現制御に関する研究を実施しました。まず、B細胞リンパ腫マウスモデルを用いた単一細胞マルチオミクス解析を行い、腫瘍微小環境においてPd-l1Pd-l2の過剰発現が骨髄系細胞の増殖を促すなど、細胞動態や表現型に同等の影響を与えることを明らかにしました。次に、ヒトB細胞を用いたエピジェネティック解析とCRISPRタイリングスクリーニングの統合解析の結果、B細胞リンパ腫で特徴的に発現している新規の転写開始点を含む、複数のPD-L2シス制御部位を見出しました。さらに、機能喪失型CRISPRスクリーニングにより、IRF4EBF1などのPD-L2トランス制御因子を網羅的に同定しました。本研究により、B細胞リンパ腫の腫瘍免疫に対する理解が進み、がん免疫療法の改善に繋がることが期待されます。当研究室は、このように大規模がんゲノムデータ解析、単一細胞マルチオミクス解析、CRISPR/Cas9システムなど、様々な研究手法を統合的に駆使することにより、がんの生物学的特性の理解に取り組んでいます。

図1

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