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FIOCセンター長挨拶
更新日 : 2024年09月02日
From Bench to Bedside and Back again!
基礎研究と臨床研究の架け橋を目指して
創薬開発は、病態解明や薬剤標的部位の特定を行う基礎研究からスタートします。リード化合物の創生や病態モデルによる作用機序解析を経て、薬効薬理試験、毒性試験、薬物動態試験などの非臨床試験を通過した新薬候補化合物が、GMPグレードで原薬の製造および製剤化が行われます。その後、治験薬をヒトに適用する臨床試験において、臨床薬理試験、探索的試験、検証的臨床試験(第1相試験、第2相試験、第3相試験)を経て承認申請がなされます。
特に、非臨床試験を通過した抗がん薬の成功確率は5%程度であり、多額の研究費と長期間が必要です。創薬開発は長期にわたるため、非臨床から臨床研究への橋渡しが極めて重要です。
First in Classの創薬シーズは、基礎研究における個人の発想の中から生まれます。しかしながら、最終目標である基礎研究成果の医療実装に向けては、特徴ある技術を有する研究者がそれぞれの役割に従い、創薬シーズを医薬品へと育てるために集団で協力することが最も重要です。このため、創造性を持って実施する実用化研究が求められます。
基盤的臨床開発研究コアセンター(FIOC)は、基礎研究から臨床研究への橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)および、臨床現場でのクリニカルクエスチョンを科学的に解明するリバーストランスレーショナルリサーチを推進し、研究成果の医療実装を目指しています。すなわち、「From Bench to Bedside and Back again」を集団で実現することを目指しています。
FIOCは、相談窓口である連携支援室をはじめ、研究支援基盤である動物実験施設・RI実験施設、コアファシリティ機能であるバイオバンク部門、臨床ゲノム解析部門、免疫ゲノム解析部門、バイオインフォマティクス部門、プロテオーム解析部門、創薬標的・シーズ探索部門、薬効試験部門、がんモデル開発部門、病理解析部門、免疫創薬部門を有し、一体的な運営を行っています。
主な研究支援成果として、ゲノム医療の実装化を目指した国内初の遺伝子パネル検査「NCCオンコパネル」の開発や、臨床現場のニーズに迅速に対応する「レインボークラウド(すぐやる課)プロジェクト」の遂行があります。また、日本人がん患者由来の腫瘍移植モデル「J-PDXライブラリープロジェクト」の推進と薬剤スクリーニングの実施、バイオバンクに保存された患者血液や組織(凍結組織・FFPE検体)の管理も行っています。さらに、WES/RNA解析、バイオインフォマティクス解析、免疫プロファイリング解析、腫瘍微小環境解析、プロテオーム解析、薬物血中濃度解析など、最新の研究手法を取り入れた解析を行っています。
今後もバイオリソースを充実させ、特徴ある解析技術を最大限に活用し、がん患者に新しい治療法や診断方法を提供することを目指し、創薬研究開発を推進して参ります。引き続き、皆様のご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
国立がん研究センター 基盤的臨床開発研究コアセンター(FIOC)センター長
濱田 哲暢