平成28年度トピックス
医療政策の推進等に関する事項
国等への政策提言に関する事項
国への政策提言
国の審議会、検討会等への参加
当センターの職員が、国の審議会や検討会等に委員やオブザーバーとして参加し、政策作りや運用に大きく貢献した。
- 参加している審議会、検討会等の数 42件(前年度比+23.5%)
- 委員や構成員になった職員数(延べ数)68人(前年度比+15.3%)
参加した主な審議会等
厚生労働省- がん対策推進協議会議(「第3期がん対策推進基本計画」策定)
- がん診療提供体制のあり方に関する検討会 など
- 健康・医療戦略参与会合(「健康・医療戦略」および「医療分野研究開発推進計画」改訂)
- ゲノム医療実現推進協議会 など
「海外承認済み、国内未承認」の抗がん剤リスト更新
平成27年4月より公開している「国内で薬事法上未承認・適応外となる医薬品・適応のリスト」を平成28年7月4日現在の情報で再集計しホームページで公開した。
同リストは厚生労働省の患者申出療養評価会議で検討資料として活用された。
集計のポイント
- 平成28年7月時点で、「欧米先進国既承認、日本未承認」の抗がん剤は延べ50剤(44薬剤50適応)だった。
- 50剤の抗がん剤のうち、薬剤費が判明している45剤中32剤において、1カ月当たりの薬剤費は100万円以上だった。
たばこパッケージの警告表示について意識調査実施 -画像つきの警告表示に過半数が賛成-
5月31日の世界禁煙デーおよび禁煙週間(5月31日から6月6日)を前に、たばこ製品パッケージの警告表示(注意文言)に関し、どのようなものが読まれるか意識調査を行い、その報告書をホームページで公開した。
調査の結果、警告表示の面積拡大や画像を入れることに過半数が賛成であることがわかった。画像を活用した警告は、先進国を中心に77か国で採用されおり、日本でも検討されている。
たばこ対策に関する国際シンポジウム スモークフリー日本のビジョン実現のためにを開催
東京オリンピック・パラリンピックに向け、さらに日本の受動喫煙防止対策を進めて いくため、平成28年7月、WHO(世界保健機関)、厚生労働省、国立がん研究センターの共催で、たばこ対策に関する国際シンポジウムを開催し、オーストラリア、ASEAN、 中国・北京、ロシア・ソチ、韓国・平昌、米国(ニューヨーク)の法制化対策について、 関係者と意見交換した。
たばこ白書の作成に参加
約15年ぶりに作成され、平成28年8月に公開された「喫煙と健康 厚生労働省喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(たばこ白書)の執筆・作成に参画した。また、たばこ白書の要点をとりまとめたリーフレットを作成し、がん情報サービスで公開した。
当センターからのたばこ白書への参加者数
編集者(喫煙の健康問題に関する検討会構成員)2名
執筆者 5名
「がんとの闘いに終止符を打つ『がんゲノム医療フォーラム2016』」を厚生労働省と開催
がん対策基本法の改正(平成28年12月9日成立)を受けて、厚生労働省、国立がん研究センター及び国会がん患者と家族の会の共催で、「がんとの闘いに終止符を打つ『がんゲノム医療フォーラム2016』」を開催した。
当フォーラムの様子は、全国15箇所のサテライト会場にも中継され、全国のがん患者、家族、医療関係者などに向けて発信した。
フォーラムの締めくくりには、塩崎厚生労働大臣が安倍内閣総理大臣からのメッセージを代読し、がんゲノム医療実現のためのプロジェクトを策定するという「がんゲノム医療推進への決意」を表明した。これを受け、厚生労働省において「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」(座長:間野研究所長)が開催され、がんゲノム医療の構築に向けた報告書がまとめられた。
握手を交わす尾辻参議院議員、塩崎厚生労働大臣、中釜国立がん研究センター理事長(左から)
医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項
ネットワーク構築の推進
都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会の運営
都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会は、都道府県がん診療連携拠点病院の機能強化や都道府県内のがん診療連携拠点病院、がん診療病院等との連携強化を目指し、平成20年に設置され、当センターがん対策情報センターが事務局となって運営している。
- 第3期がん対策推進基本計画の策定に向けてがん診療連携拠点病院の機能充実に関する提案を厚生労働省へ提出
がん患者とその家族が納得して治療を受けられる環境の整備及び全国のがん医療の質を向上させるため、「第3期がん対策推進基本計画の策定に向けたがん診療連携拠点病院に求められる機能の充実に関する提案」をとりまとめ、11月1日に厚生労働省へ提出した。また、「がん相談支援センターからみたがん対策上の課題と必要と考えられる対応についての報告」も併せて提出した。 - 全国の都道府県がん診療連携拠点病院の機能向上に向けて、フォーラムを開催
都道府県レベルで取り組むがん診療の質を向上させるため、PDCAサイクルのモデルを提示するとともに、先進的に取り組んでいる都道府県の取り組みを全国の関係者に紹介し共有した。その内容をホームページに公開するとともに、東京都、奈良県、鹿児島県の具体的な取り組み状況についても情報を発信した。 - がん診療連携拠点病院等に対するコンサルテーション、技術指導等を実施
- 希少がんに着目したがん診療画像レファレンスデータベースを新たに作成・公開し、全国の希少がん診療に携わる医療関係者に情報提供を行った。
- がん診療連携拠点病院等に対し、コンサルテーションや支援等を実施した。
- 病理診断コンサルテーション 487件(前年度比 +7.0%)
- 画像診断コンサルテーション 28件(前年度比 ±0%)
- 放射線治療品質保証支援 101件(前年度比 ▲4.7%)
- 拠点病院への訪問による技術指導 14件(前年度比 ▲6.7%)
- 熊本地震への対応
平成28年4月に発生した熊本地震の際には、がん診療連携拠点病院のネットワークを活用し、熊本県内拠点病院の状況や近隣病院におけるがん患者の受け入れ状況を発信し、大規模災害時の医療確保に貢献した。
情報の収集・発信
がん登録等の推進に関する法律に基づき、平成28年1月から全国がん登録データベースを運用し、死亡者情報票の収集によるがん死亡の実態及びがん診療連携拠点病院等からの院内がん登録情報等を含むがん罹患及び診療の実態を把握し、発信していくとともに、がん情報収集の標準化を推進した。
インターネットを通じてがんに関する正しい情報を提供する「がん情報サービス」では、がんの臨床試験実施情報について、一般の方が容易に検索できるようデータベースを拡充するなど、がんに関する情報をわかりやすく国民に発信した。
業務運営の効率化に関する事項
効率的な業務運営に関する事項
効率的な業務運営体制
財務ガバナンスの強化
セグメント別予算に加え、部門別予算を設定することにより、予算執行に係る組織ごとの責任・担当を明確にし、より適切に予算の執行管理を行う体制を整備した。
個々の支出に係る意思決定の基準を明確化するとともに、大規模な支出について、新たに委員会を設け、センター全体の効率的な運営を確保する観点から、費用対効果等を踏まえて妥当性を判断するなど、財務ガバナンスの強化を図った。
スタッフデベロップメント研修
事務職員を対象としたスタッフデベロップメント研修を年11回開催し、企画立案能力の開発等について、職員のレベルアップを図った。
効率化による業務改善
経常収支率の2年連続黒字を維持
平成28年度の経常収支率は104.0%(経常収支 26.8億円)となり、平成27年度(経常収支率 101.6%、経常収支 9.9億円)に続く黒字。2年間を累計した経常収支率は102.9%となった。
給与水準の適正化
東京都の最低賃金の引き上げに伴い、非常勤職員の給与水準を引き上げた。
政府の人事院勧告を踏まえ、基本給、業績手当支給月数の見直しを行った。なお、地域手当は、センターの経営状況等を踏まえ据え置いた。
材料費等の削減
材料費や委託費について、国立高度専門医療研究センター等の間で価格情報などの共有化や仕様書の見直しによりコスト削減に努めた。
預託型SPDの委託契約更新(平成28年10月から)及び他施設購入価格ベンチマーク情報の活用により、医療材料の調達について27年度調達価格に比して1.96%のコスト削減を行った。(平成28年度は-約16,670千円。注:ただし平成28年10月から平成29年3月の期間)
後発医薬品の導入促進
後発医薬品の導入を推進し、数量シェアを拡大した。
- (中央病院)平成28年度実績 88.03%(前年度比+5.84%)
- (東病院)平成28年度実績 81.20%(前年度比+5.7%)
医業未収金の改善
医業未収金比率は、10万円以上未収金のある患者に文書督促を行い、それでも入金されない患者に裁判所からの督促を行う等の取り組みにより0.05%となり、平成27年度(0.09%)、平成26年度(0.12%)に比べ減少した。
一般管理費の削減
一般管理費(人件費、租税公課を除く。)は、委託費や消耗品費の削減等により、平成26年度に比べ5.6%減少した。
- 平成26年度 392,121千円
- 平成28年度 370,330千円(平成26年度比-5.6%)
- 経常収支率の推移
- 経常収益に占める運営費交付金の割合の推移
財務内容の改善
自己収入の増加に関する事項
外部資金の獲得
競争的資金の募集情報を速やかに研究者に提供し、応募を促すこと、共同研究の積極的な提案を行うこと等により、競争的資金を拡大した。
- 共同研究費
1,843百万円(前年度比+42.3%) - 治験
3,268百万円(前年度比+38.5%) - 公的競争的資金
6,288百万円(前年度比+33.5%)
寄附金の増額に向けた取組
寄附金の支払方法について、従来は現金および銀行振込のみであったが、平成28年10月から、WEBサイトからのクレジットカ-ド払の受入を開始した。
この結果、寄附金は112,324千円(前年度比+71.6%)、570件(前年度比+99.3%)と大幅に増加した。
資産及び負債の管理に関する事項
独法移行時点での債務残高は170.65億円であったところ、必要な投資を行うため、これまでに143.21億円の借り入れを行い、平成28年度末の債務残高は165.91億円(前年度比-0.6%)。独法移行時点と比較すると4.74億円減少している。
新規借入額
- 平成22年度 なし
- 平成23年度 40.42億円
- 平成24年度 8.18億円
- 平成25年度 38.24億円
- 平成26年度 4.40億円
- 平成27年度 30.00億円
- 平成28年度 21.97億円
- 合計 143.21億円
債務残高
- 独法移行時の承継債務残高 170.65億円
- 28年度末の債務残高 165.91億円
その他業務運営に関する重要事項
法令遵守等内部統制の適切な構築
- 「研究に携わる者の行動規範」「研究活動における不正行為の防止に関する規程」等にもとづき、被験者保護及び研究不正をテーマとした研究倫理セミナーや、研究費の不正をテーマとしたコンプライアンス研修を開催し、職員へ周知啓発を行った。
また、理事長直属の「研究監査室」として、独立した立場で臨床研究の監査を行うことにより、研究に係る法令遵守状況等の評価を行った。 - 監査室において、監事及び外部監査人と連携しながら、ガバナンス及び法令遵守等の内部統制のため、業務効率化、経営管理等多角的な視点による内部監査を24件実施するとともに、監査後の改善状況をモニタリングしフォローアップすることにより、センター各部門の業務改善及び業務効率の向上を図った。平成28年度は、内部監査(現場実査)において新たな重点監査項目を設定し、ハイリスクとなる事項への集中的な監査を実施して、職員の意識改革やガバナンスの一層の強化を図った。
- 取引業者に対し、当センターの債権及び債務残高調査を実施して、研究費の不正使用防止策を一層強化した。
- 不適正事項を認識させて自主的な業務改善につなげるため、各担当の所管事項について、自己評価チェックリストによる自己評価を継続して行い、効率的な内部監査を実施するための資料として活用した。
- 6ナショナルセンターの監事連絡会議を開催し、情報共有及び監査水準の向上に努めた。
その他の事項(施設・設備整備、⼈事の最適化に関する事項を含む)
施設・設備整備に関する計画
研究所の「新総合棟(研究棟)」が予定どおり完成した(平成29年3月)。
がんを克服するため、がんの本態を明らかにし、死亡率の低下につながる革新的な予防法等を開発するとともに、個々人に最適化された治療法を見出すことが喫緊の課題である。これらの課題克服を加速するため、臨床部門(中央病院・東病院)および製薬企業・大学等と協働し、革新的医療開発を目指して新しいがん研究を推進する。
東病院の「次世代外科・内視鏡治療開発センター(NEXT棟)」が予定どおり完成した(平成29年3月)世界有数の外科・内視鏡技術と最先端の科学技術のマッチングを通じ、日本発の革新的医療機器の創出を目指す。
人事システムの最適化
国立大学法人等との人事交流
優秀な人材を持続的に確保する観点から、以下の人事交流を実施した。
- AMED、PMDAとの人事交流を実施するため医師、研究員、薬剤師、看護師等を派遣した(AMED 6名、PMDA 6名)。
- 国、国立大学法人等との人事交流を実施するとともに、在籍出向制度等により国立大学法人等から職員を採用した
(東京大学 1名、京都大学 1名、東北大学 1名、金沢大学 1名)。 - 国立大学法人、研究開発法人とクロス・アポイントメント制度を用いて人事交流を行い、研究成果の最大化を図った(東京大学 1名、名古屋大学 1名、長崎大学 1名、AMED 1名、国立成育医療研究センター 2名)。
障がい者雇用の促進
- 障がい者雇用の新たな取り組みとして、精神障害者を1名採用した。
- 平成28年度の雇用率は2.45%となり法定雇用率(2.3%)を達成した。
- 障がい者の雇用促進に役立つ知識等を習得するため、ジョブコーチ等1名が企業在籍型職場適応援助者(ジョブーチ)養成研修を修了した。
広報に関する事項
がんに関する最新の知見や研究成果、科学的根拠に基づく診断・治療法について広く国民に情報提供を行うため、プレスリリース・記者会見を開催し、その内容をホームページに掲載した。
- プレスリリース 54件(前年度比+20%)
- 5大紙への掲載件数 354件(前年度比+9.3%)
- TV在京キー局放映件数 101件(前年度比-24.1%)
中央病院、東病院における患者数の推移等