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設立の背景と役割
背景
わが国におけるゲノム医療については、2017年に厚生労働省が開催したがんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会において、世界最先端のがんゲノム医療をいち早く国民に届けるだけでなく、わが国の利点を生かした革新的治療法の開発や日本人集団での知見の集積によるアジア諸国への貢献等、世界をリードすることを目指したチャレンジングな仕組みを構築すべきであること、また、構築する基盤は国民共有の財産であることがとりまとめられ、がんゲノム医療を提供する医療機関やがんゲノム医療情報の集約・保管・利活用推進機関等の機能や役割について方向性が示されました。(報告書 2017年6月27日)
このような新しい医療体制を段階的に作り上げていくため、国は2018年2月にまず、全国11力所の病院を、がんゲノム医療中核拠点病院として指定し、各病院と連携するがんゲノム医療連携病院100施設とともに、2019年度を目途に、保険診療としてのがんのゲノム医療の提供を目指しております。
この国の方針に基づき、国立がん研究センターは、全国のがんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療連携病院(以下、合わせて「中核拠点病院等」という)と緊密なネットワークを作り、我が国のがんゲノム医療の情報を集約·保管するとともに、その情報を保険診療の質の向上と、新たな医療の創出に利活用するため、国の財源を得て、「がんゲノム情報管理センター」を設置することになりました。
「がんゲノム情報管理センター」の役割
まずは、がんゲノム医療・研究のマスターデータベースである「がんゲノム情報レポジトリー」*1を開発・構築し、2019年初めより試運転を開始する予定です。またがんゲノム医療に必要な知識データベース(CKDB: Cancer Knowledge DataBase)を構築します。これらの仕組みを活用して、中核拠点病院等とともに日本におけるがんゲノム医療を推進していきます。
- がんゲノム診断の質の確保・向上
- 日本人の臨床・ゲノム情報を国内公的機関に確保し、我が国に至適化されたCKDBを作成、がんゲノム医療中核拠点病院等のエキスパートパネル*2活動に貢献
- 全国の集計データに基づくがんゲノム医療の国民への情報提供・行政機関等への提言
- 情報の共有
- 中核拠点病院等の間でレポジトリーデータベースの情報を適切な取り決めのもとに共有、保険医療の改善のために活用
- 開発研究・臨床試験の促進
- 臨床試験・医師主導治験等の基盤データとしての活用
- 企業を含む創薬・個別化医療開発への利活用
- 全ゲノム解析の医療応用に向けた検討・人材育成
「がんゲノム情報レポジトリー」について(*1)
「がんゲノム情報管理センター」では、中核拠点病院等から、がん患者のゲノム情報のみならず、治療薬に対する効果や予後等を含めた臨床情報を共通の枠組み(テンプレートやElectronic Data Capture(EDC)システム等)で受領し、保管するとともに、適宜中核拠点病院等に問い合わせて修正を依頼する等により、品質を確保・管理するシステムを構築しま。また、受領したゲノム情報から患者毎の遺伝子変異を解析し、CKDBを用いて臨床的意義づけのついたC-CAT調査結果を作成してがんゲノム医療中核拠点病院に提供する予定です。
さらに、収集した臨床・ゲノム情報の一部を中核拠点病院等における保険診療や臨床試験の質の向上のために共有するポータル機能、大学や企業等における新しい医療の研究開発等のいわゆる二次利用のためのデータセットを作成し受け渡す機能を構築するとともに、中核拠点病院等に対して必要な支援が可能な体制の構築を目指します。
「エキスパートパネル」について(*2)
がんゲノム医療では、患者さん一人ひとりのがん細胞のゲノム情報を分析して、担当医が現時点でその方に最も適した治療法を選択するための基礎資料とします。その際、ゲノム解析の元データから、医療に役立つ情報を引き出すためには、様々な専門家の協議による検討が必要で、その仕組みを「エキスパートパネル」と呼びます。「エキスパートパネル」はがんゲノム医療中核拠点病院等に設置され、そこで作成される報告書が担当医の元に返されます。「がんゲノム情報管理センター」は、エキスパートパネルにおける検討の基礎資料の一つとして、C-CAT調査結果をがんゲノム医療中核拠点病院に提供する予定です。