トップページ > グループ紹介 > 粒子線医学開発分野(柏) > 主な研究内容 > 陽子線に対する細胞応答に関する研究
陽子線に対する細胞応答に関する研究
最近の研究で拡大Bragg Peak(以下略記:SOBP)後方(図1-四角網掛け部分)の生物学的効果が高い可能性があることが示されました(Pankaj et al. IJROBP2014; 90(1): 27-35)。上記のRBE などの報告により、これまでは化学療法併用効果もX 線とほぼ同等との仮説に基づき、化学療法併用陽子線治療が頭頸部癌、肺癌、食道癌などを対象に実臨床や臨床試験で行われてきています。しかし、上記のような陽子線に関する生物研究の結果は、陽子線治療と化学療法との相互作用がX 線とは必ずしも同じではない可能性を示唆しております。このような背景から、陽子線治療と化学療法の至適な併用法を確立する意味でも、陽子線と化学療法薬剤との相互作用やその増感効果ならびにその機序などの基礎的な検証は必須と考えます。また、化学療法併用により増感効果が認められた場合、SOBP 内での生物学的効果の差異が大きくなり、治療計画と実際の効果が大きく異なる可能性も考えられます。これにより、予期せぬ有害事象の出現が懸念されるため、この観点での基礎的な裏付けも重要です。そこで、我々は、化学療法薬剤による陽子線照射の増感効果(放射線感受性の増強効果)について、1)陽子線照射における殺細胞効果の機序、2)薬剤による増感効果、3)X 線照射との相違の有無、4)照射野内の位置による増感効果の差異、を放射線生物学的な手法を用いて明らかにすることを主な目標としております。これらのデータを臨床でフィードバックできるように、当センター内の他の研究室とも連携して日々研究を行っています。
陽子線照射方法
陽子線照射後のコロニー
陽子線照射後のγH2AX foci