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DELTAプログラムについて
せん妄の予防・治療を含めた対応プログラムの開発
DELTA(DELirium Team Approach)プログラム
平成28年度日本医療研究開発機構研究費「抗がん治療中のせん妄の発症と重症化の予防に対する通常ケアと多職種せん妄初期対応プログラムとの多施設クラスターランダム化比較試験」
高齢者の診療が増えるにつれ、せん妄の問題がどの施設でも課題になりつつあります。せん妄は、死亡率や合併症の増加に加え、退院後の死亡率の上昇や再入院にも関連します。せん妄への対策は、単なる不穏への対応だけではなく、一般・急性期病院のケアの質にも直結する課題です。
従来、せん妄対策と言えば、転倒・転落を防ぐための環境整備であったり、興奮を鎮めるための声かけであったり、「せん妄になってしまった後の問題行動への対処」が中心でした。また、見当識をつけるために、時計やカレンダーを置いても、せん妄自体の症状の改善というよりも対症療法的な関わりに留まっていたこともあります。「せん妄になったらどうしようもないし、ましてや防ぎようもない」と思われがちでした。
しかし、せん妄への対応、はこの数年で大きく変わりつつあります。特に、予防的なケアをすることにより、内科・外科を問わずせん妄の発症率を下げるとともに、転倒・転落を減らすこともできることが示されつつあります。今までの「せん妄になったらどうしようもない」というところから、「せん妄は適切なアセスメントとケアをチームで提供することにより、予防できる」ことが見えてきました。
DELTAプログラム開発の経緯
わが国においても、せん妄に対して、様々な取り組みがなされてきました。たとえば、病棟スタッフに対して講義をしたり、病棟にリンクナースを配置したりするなどの試みはなされてきましたが、主な取り組みは、環境整備が中心で、せん妄の原因となる身体的な要因を減らすことを目指した取り組みや、せん妄を予防することを意識した取り組みは残念ながらありませんでした。
また、海外で開発された介入プログラムをわが国の臨床に導入する試みもありましたが、医療職の配置数の違いや多数のボランティアを動員する必要があり、わが国の一般的な病棟では、そのまま導入することは現実的ではありませんでした。
そこで、私たちは、医療者の配置が少ない医療体制でもできるせん妄対策はどのようなものか、考えてみることにしました。そこで、まず病棟のスタッフがせん妄をケアするうえで、どのように対応をして、どのような困難を感じているのかをインタビューで確認し2つの課題を明らかにしました。
個人レベルでの課題:
- “せん妄”の症状を観察・評価でき、自信をもってせん妄と判断する
- 判断から具体的な次の行動をとることができる
チームレベルでの課題:
- “せん妄”を見る目線を揃えて情報を共有する
DELTAプログラムの特徴
これらの課題に対して、どのようにすれば臨床現場の行動を変えることができるのかを看護エキスパートと行動科学の専門家とともに話し合い、具体的な行動に自然とつなげることを目指して次のような工夫を凝らしました。
- せん妄発見の手がかりになる場面を出して、具体的な行動を観察・評価することを体験する
- せん妄を見つけたところから具体的な対応までの流れをシート1枚に「見える化」し、シートを見れば次に何をすればよいかがそのままつかめるようにする
最終的にDELTAプログラムは、90分の教育セッションを基本とした教育プログラムと運用プログラムとしています。
図:DELTAプログラムの構成
せん妄アセスメントシート(2017/2/27版)
注:教育のため自由にご利用いただいて構いませんが、再配布、ネット上への転載はご遠慮ください。お問い合わせは精神腫瘍学開発分野までお願いいたします。
- せん妄アセスメントシート(PDF:548KB)