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2023年度 外部評価委員会 評価結果

概要

2024年3月11日がん対策研究所 外部評価委員会が開催され、事前に各部の活動内容、業績に関する資料を送付し、当日は、評価対象となった部、および、横断的プロジェクトにおける、研究・事業進捗、成果についての口頭発表を行い、外部評価委員から評価が行われた。

評価事項

評価事項 担当者
全体について

 

 

行動科学研究部 部長 内富 康介
サバイバーシップ研究部 部長 内富 庸介
がん情報提供部 副所長 井上 真奈美
がん医療支援部 部長代理 鈴木 達也
医療政策部 部長 東 尚弘
横断的プロジェクト 副所長 井上 真奈美

外部評価委員会名簿(五十音順)

   
飯野 奈津子 委員 山梨大学 客員教授
木澤 義之 委員 日本緩和医療学会 理事長
櫻井 公恵 委員 NPO 法人 GISTERS 副理事長
玉腰 暁子 委員 北海道大学大学院医学研究院公衆衛生学 教授
西嶋 康浩 委員 厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長
松浦 成昭 委員 大阪国際がんセンター 総長
松尾 恵太郎 委員 愛知県がんセンター研究所がん予防研究 分野長
安村 誠司 委員 福島県立医科大学 医学部公衆衛生学講座 教授

全体、各グループへのご意見と対応案

注:指摘事項は一部表現を修正し掲載

全体

課題1:取り組みについて

指摘事項

  • 様々取り組みを進めているが、その結果として何がどう変わるのか。変わったのか。評価のあり方も検討が必要と思う。遺族調査をした、患者体験調査をした、ファクトシートをまとめたなど、それはそれで成果だが、その先が重要。計画段階から、研究成果をどう生かしていくのか、情報をどう伝えていくのかなども考え、結果として社会がこう変わった、人々の行動がこう変わったというところまで評価ができるようにしてほしい。
  • 情報発信は国民の理解を深めるためにとても重要。情報発信部分は研究所だけでなくセンター全体の課題でもあり、新しい技術を活用することも含めて、別の専門的なところの手を借りるというのも一つの方法かもしれないと思う。
  • 社会一般や関係各所に向けた情報発信は非常に重要であるが、がん対策研究所だけのミッションではないことから、がんセンター全体として体制を整備していく必要があるように思われる。
  • がんの終末期についてはつい忘れてしまいがちだが国民の1/4はがんで死亡するものであり、ある程度の力をかけて扱っていただきたい。特に困窮者/ホームレス/外国人/刑務局どこが扱うかはわかりからない。

対応案

  • ご指摘の点がわかるような発表と評価軸について検討を進め、次回での改善につなげます。
  • 情報発信についてはR5年度よりがん対策情報センター本部がセンター全体の課題として取り組んでおります。その中で日々変革する新しい技術への対応についても議論し、様々な可能性について検討してまいります。
  • 緩和ケアを始め、がんの終末期についてもしっかりと取り組んでまいります。

行動科学研究部

課題1:研究の進め方

指摘事項

  • 限られた財源の中で、どう優先順位をつけていくのか、国民には分かりやすい形で説明が必要で、今後の取り組みに期待したい。
  • できるところから、という手始めから、戦略的に課題解決をする取り組みをお願いしたい。
  • 実装を全国で展開していく際の「課題」を明らかにし、「その解決策」の提示に結び付ける研究を強力に推進して頂きたい。
  • 数多くの重要な課題に取り組んでいるが、人員がそれにマッチしているか疑問
  • エビデンスとして、国がんとしてのエビデンス等を活用しているが、研究所内での連携の強化をして欲しい。
  • もしかしたら全ての研究が論文化のあとにこちらの部署を通り、事業化へのしかけや評価につなげる一役をするといいのかもしれない。
  • 患者・市民との協働という視点は大事だが、具体的にどう協働するのかよくみえなかった。

対応案

  • がんの一次予防についての実装研究は、がんの罹患・死亡に対する寄与度(人口寄与割合)が大きい要因である、喫煙、飲酒、感染症に対して有効性が確立した介入(エビデンスに基づく介入、EBI)、二次予防については、ガイドラインで推奨されるがん種の検診(すなわちEBI)について優先的に取り組むことを基本的な方針としています。
  • 人口寄与割合、介入の有効性に加えて、EBIの実施割合が低い、EBIの実施可能性が高い(実施のための費用、全国展開の受け皿となる実施組織がある)、などの要素を考慮する必要があります。これらの要素を考慮し、行動科学研究部では中小企業の喫煙対策の実装研究を保険者である全国健康保険協会と協働して進めています。
  • 一方で、有病率が相対的に低くても、対策しない場合に重篤な健康アウトカムを引き起こす遺伝性がんのような疾患予防のEBI実装も考慮する必要があり、様々な価値観をとりいれて実装研究として取り組むEBIの優先度を議論していく必要があります。また、少ない資源を有効に活用するにはEBIの優先度を関連する分野の研究者と共有し連携して取り組むことも重要です。このようなことから、令和6年度からのがん研究開発費の新規課題で、がん予防の分野について戦略的にEBIの優先度を決定する研究を、研究所内で連携を取りながら進めます。本研究により、予防分野でEBIの優先度を決定するプロセスの枠組みを提案することが可能となります。この枠組みは、他の分野で同様にEBIの優先順位を決定する際の指針になりうると考えています。
  • 人員については、多様な領域にわたるすべての研究を自ら実施する研究として行うことには限界があります。そのため、N-EQUITYのハブ機能を最大限に活用します。重要な研究課題に取り組むがん対策研究所内外の研究者らと連携し、我々が持つ実装科学の専門性を十分に生かした共同研究を積極的に進めて効率よくわが国の実装研究の促進に貢献していきます。
  • 患者・市民との協働については、研究課題の優先度検討や、個別研究の立案、実施、評価時等研究のあらゆるフェーズにおいて、アンケートやインタビュー調査、ヒアリング等を通して患者・市民のニーズを掘り起こし、それらのニーズをどう研究に反映していけるかを共に議論しながら研究を進めていきます。これにより、研究の成果を患者・市民の利益につなげられるようにします。
課題2:研究成果

指摘事項

  • 研究の性格上、難しいのかもしれないが、共著論文は非常に多いが、この部からの論文があまりないので、もう少し出ることを期待する。あるいは論文でなくても、別の形で社会発信して、活動を示すことも考えてほしい。
  • エビデンスを実装に結びつけるために、個々人の行動変容を促すことは重要であるが、より容易には集団全体として取り組めるよう環境整備をすることかもしれない。まだ、各実装研究の成果が十分に得られる段階には達しておらず、今後に期待したい。

対応案

  • 自ら実施する研究につきましては、ご指摘の通り論文成果をさらに出していきたいと考えております。実装科学のハブとして、実装研究を実施する外部の研究者と共同研究をすることが、もうひとつの活動の柱となります。実装科学の専門性を生かし、積極的に共同研究を行うことに関しては一定の成果が出ており、わが国の実装科学研究の普及に貢献していると考えております。論文以外の成果としましては、「つまずきポイント、解決ポイント別職場で行う喫煙対策好事例集」(冊子PDF並びに動画)を行動科学研究部のホームページで公開しました。このような論文の成果を現場で活用するためのツールも、今後積極的に発信していきたいと考えております。また、実装科学に関するセミナーや講演依頼も可能な限り引き受け、わが国における実装科学の普及啓発にも引き続き尽力してまいります。
  • 職場や病院、自治体などの環境レベルから、ケアを実施する事業主、医療従事者、自治体担当者のレベル、ケアの受益者である患者市民レベルまでそれぞれのレベルへの介入を同時多層的に行う介入研究を実施しております。国民の健康アウトカム改善に公衆衛生的なインパクトを与えることを実装研究の最終的なゴールとして研究を進めて参ります。
課題3:政策への活用

指摘事項

  • まだ研究が始まって日が浅く、政策につなげるところまで至っていないが、今後は全国、さらには世界的な健康格差を是正できるような政策につなげてほしい。
  • 今後、行動科学に着眼したとりくみの重要性は増すと考える。政策担当部署(厚労省)としっかり連携して社会に還元して頂きたい。
  • 政策化を意識した研究にして推進して頂きたい。

対応案

  • 現時点では、現場のレベルでの介入の実施可能性を確認する段階の研究が主ですが、その結果をもとに、厚生労働科学研究費の研究班で政策レベルの展開を目指す研究も行っており、健康日本21(第三次)の目標到達のための施策として、国及び各自治体が取り組むべき健康増進施策(アクションプラン)のうち、職域における喫煙対策についての提案を行いました。政策担当部署と連携し、政策化につながる研究を進めていきます。
  • また実装科学においては、すでに政策化されているものや、病院や職場などのセッティングで制度化されているもののさらなる実装や普及も重要なテーマであり今後も引き続き進めて参ります。
課題4:国際的な取り組み

指摘事項

  • 国際的な取り組みに関しては十分とは言い難い。
  • 国際的な取組みが良く見えない。

対応案

  • 実装科学のハブであるN-EQUITYが、カンボジア、アンゴラ、ベトナムをフィールドとした共同研究を実施した実績があります。すでに構築されている、ANCCA(アジア国立がんセンター協議会)のネットワークを活用し、東アジア諸国で、実装科学の普及を目指す研究者と連携し、アジアの文化圏にあった社会実装のノウハウを共有することを計画しています。

サバイバーシップ研究部

課題1:研究体制

指摘事項

  • 課題が重要で多岐にわたるが、十分な人員が配置できているのか、人員への目配りができているのか。
  • 特に、AYA世代、および高齢者に関する研究者が配置されているのか。

対応案

  • がんサバイバーシップの課題は多岐にわたるため、オールジャパン体制で取り組むべく日本サバイバーシップ研究グループ(Survivorship and Quality of life Research Association: SaQRA)を運営し、全国の研究者が行う研究に対して、研究デザイン、アウトカム、データサイエンス、PPI、進捗等に関するコンサルテーションおよびマネージメントといった支援を行うことでサバイバーシップ研究を推進しています。また、セミナー開催や研究基盤のWebsite公開等を通じて研究者の育成にも取り組んでいます。さらに開発優先課題マップを作成、公開することで、優先度の高い取り組むべき課題を示しています。そのうえで外部研究者が取り組んでいない、取り組めない課題を当部で研究しています。人員のエフォートには十分に目配りできるよう、細やかなコミュニケーションを心掛けています。
  • 研究員の専門性に合わせ意思決定支援、AYA世代がん患者支援、高齢者支援を担当する研究者がそれぞれプロジェクトを主導しています。
課題2:研究の進め方

指摘事項

  • PPIによる開発優先課題マップを具体的に研究や政策につなげるための仕掛けが必要と感じる。
  • 自殺の調査によって得られた課題をいかに政策に結びつけるか、わかりやすい情報発信の方法も研究が必要と感じる。
  • 意思決定支援研究において、コミュニケーション・アウトカムの改善に加え、治療、健康アウトカムの改善は示されているのか。
  • 研究結果を論文発表で終わらせず、社会・臨床実装まで届けられるような橋渡しを希望する。
  • 治療中の患者も含めたがんサバイバーの日常生活の支援への考慮を希望する。

対応案

  • 開発優先課題マップを研究者、政策立案者に広く普及するために、見やすいマップのデザインや説明文を検討してWebsiteで公開しています。また、関連学会での出展および発表、シンポジウムの企画・開催等を通して普及を目指しています。
    さらにPPIによるマップの利活用、アップデート等の議論、関係各所との政策につなげる議論を継続しています。
  • 調査結果はWebsiteにて公開し、関連学会にて成果を発表し、自殺対策強化月間である3月に継続的にシンポジウムの企画・開催を行っています。昨年度のシンポジウムでは500名を超える申し込みをいただきました。本年度以降も学会発表、シンポジウムの企画・開催を継続し、よりわかりやすい情報発信を検討していきます。
  • 介入内容と直接関連するコミュニケーション・アウトカムを主要評価として研究成果として得られた患者エンパワメントと医師の共感的言動の増加をASCO2024オーラルプレゼンテーションにて公表しました。副次評価項目として治療アウトカム、健康アウトカムについても評価しています。観察期間終了後に成果を公表します。
  • 各研究プロジェクトは社会・臨床実装を見据え、研究体制にがん経験者、支援者、関連学会代表者に参画していただいています。有効性が示された介入法については、診療報酬への反映を目指して企業や学会と連携しています。また、診療ガイドラインへの収載を目指して成果公表をするとともに、普及のために研修会実施や介入マニュアルの公開等、実装科学研究室やN-Equityと連携して取り組んでいます。さらに薬事や保険以外の支援法をはじめとする介入方法の臨床実装を推進するために広く議論して参ります。
  • 治療中の患者も含めた幅広いサバイバーシップの課題にオールジャパン体制で取り組むために、日本サバイバーシップ研究グループ(SaQRA)を運営しています。SaQRAには、がん経験者、支援者、医療者や研究者に加え、社会学、公衆衛生学等、学際的な専門家に参画いただいています。
課題3:国際的取り組み

指摘事項

  • 国際的な取り組みはなされているのか。

対応案

  • 研究プロジェクト毎に、共同してデータ収集や文献レビューを行う、既存のデータや解析結果を共有する等、様々なレベルで海外(ドイツ、台湾、カナダ等)の研究者との連携を図り、共同研究に取り組んでいます。

がん情報提供部

課題1-1:がん情報サービスのアクセス向上について

指摘事項

  • がん情報サービスへのアクセスがあまり伸びていないのは残念。その原因を調べて、もっと広く活用できるよう手だてが必要。
  • アクセス解析からいずれの指標も思ったほど増加していない。「戦略」具体的にハード面ソフト面(コンテンツ)でさらなる工夫が必要。
  • がん情報サービスの宣伝をもう少ししても良いと思う(これは信頼度が高いが故)

対応案

  • Google Analyticsを用いてセンター内で解析、SEO対策を講じていますが、Google Analyticsの仕様変更等もあり、技術的な面でも専門的なスキルが必要となっています。民間企業の知見を活用し、解析精度の向上や対策の高度化を図ることを検討しています。また、利用者にも幅があることから、利用者ニーズに応じた多様なコンテンツの提供にも努めてまいります。
  • インターネット広告により正確性に疑念のある医療機関ががん情報サービスより検索上位に表示される問題を認識しています。センターが同様の広告・宣伝を出稿することはできないことから、検索会社との協力、共同研究により「モジュール表示」の取り組みなどを行っているところです。資源(ヒト、カネ)によらずにできることを継続、発展していきたいと考えています。
課題1-2:がん情報サービスに掲載する情報の範囲と充実について

指摘事項

  • 日本語以外の言語対応の検討を。英語化をぜひ進めてほしい。
  • がん情報:全国の緩和ケア病棟の情報が得られなくなってしまったことは大変残念。
  • できたら加えていただくと患者さんの役に立つのではと思う。(ホスピス緩和ケア協会のHPだけではカバーできないので)患者、がん相談員から情報を得て、内容、デバイスを考えてはどうか。
  • 情報が必要とされる稀ながんの情報こそ優先度を上げてご対応いただきたい。冊子はなくてもせめてPDFで情報をまとめてくださるとたいへんありがたい。
  • 臨床の現場でも活用いただけるのではないか。
  • 発信内容を整理(情報更新と同時にスリム化も)していくことも重要ではないか。稀少がんやAYA世代のがんに関する情報の発信こそ、がん研究センターの役割として取り組んでほしい。
  • 情報更新が重要。治験情報などは必要ないのではないか。
  • 情報更新の優先順を付けることに早めに取り組んでいただきたい。
  • がん情報は増加の一途をたどり追いつかなくなるかもしれないので、全国がんセンター協議会などの他団体や都道府県がん診療連携拠点病院とも負担を分け合うことを考えたらどうか。

対応案

  • 英語化について今後検討してまいります。また、在留・在日外国人等への情報ニーズへの対応のうち、疾患情報についてはインターネットの利用により、母国語で提供された情報にもアクセス可能であると考えられますので、日本の医療機関や保険制度の仕組み等について、行政機関や各種窓口が提供している情報へのリンクの充実を図りたいと考えています。
  • 緩和ケア病棟の情報についてご指摘を頂いていますが、がん診療連携拠点病院に指定されていない病院の情報を効率的に収集するのは困難であり、情報の信頼性を確認することにも多くの工程が想定されることから、すぐに実現することは難しい状況ですが、病院情報の提供については、サイトリニューアルでの検討と含め対応していきます。
  • 情報の少ない領域における情報提供の重要さは、国立がん研究センターとしての役割としても大きいものと考えています。希少がんセンター等とも連携し、必要とされる情報の提供体制について検討していきます。
  • 国内外部機関の情報発信状況を踏まえ国がんが担うべき部分に対応しつつ、ニーズに合った情報の整理・検討を行い、治験や薬剤情報など外部機関で提供されている情報の活用も更に検討していきます。また、情報作成については、全国がんセンター協議会との連携を試みています。
課題2:市民参画の強化

指摘事項

  • 患者市民参画はパネルの運営に留まらず、新しい技術なども駆使して積極的に取り組んでほしい。今後進めようとしている実装科学への市民参画について、もう少し詳しく聞きたかった。
  • 市民参画が形式的なものにとどまらないよう、フィードバックもしっかり進めてほしい。

対応案

  • 患者市民パネルの活動の場が広がるよう、がん対策研究所内外の研究グループとの連携を深めていくべく、常設の横断的プロジェクトとして継続的な活動を行うサイクルを確保しました。研究協力などの場合には、即時の還元が難しい場合もありますが、検討会の結果等は丁寧なフィードバックに務めて参ります。患者・市民パネル以外の方からの意見収集やフィードバックを得る方法として、がん情報サービスのメルマガ会員登録の拡大等の準備を進める予定です。
課題3:把握した相談内容やニーズの活用

指摘事項

  • 患者家族の困りごとの最前線にいてくださる相談支援員さんから提案があったり施策につなげたり、そうした研究も育まれることを期待したい。
  • がん相談窓口での内容をDB化し、AIを活用しやすい環境をつくる

対応案

  • 情報提供・相談支援部会において、相談員から見える患者家族の困りごとや課題感を集約し、施策提案(整備指針や基本計画への反映)に取り組んでいます。ただ、整備指針や基本計画改定のタイミングでの数年に1回という頻度なので、別の方法で施策提案につなげていく道も検討していきます。
  • また、がん情報サービスサポートセンターでのチャット相談の内容はDB化し、チャットボットの実用化に向けて取り組んでいます。全国のがん相談支援センターの相談内容をDB化するのは、個人情報の問題・記録の二重入力の負担等の問題があり、全国一律に行うことは難しい状況ですが、まずはがん情報サービスサポートセンターの相談(電話相談含む)でDB化を図っていきます。
課題4:がん情報提供部の運営方針について

指摘事項

  • 情報提供はがん対策研究所に留まらずセンター全体を横ぐしで刺した課題。新たにできたがん対策情報センター本部会議がどのような役割を果たしているか、横の連携もどうなっているのか、研究所内、センター全体の他の部署の研究成果についてもわかりやすく発信する必要があり、がん情報提供部がどうかかわっているか見えなかった。
  • 国際的な取り組みに関しては十分とは言い難い。
  • 副所長が情報提供部長を含め複数の部長を併任している状況は改善すべき

対応案

  • 現状では、がん対策情報センター本部会議では、がん情報サービスやNCC公式ページをはじめとする、NCC組織としての情報発信の全体戦略についての議論がなされており、2024年1月に情報提供に関する基本方針が取りまとめられました。がん情報提供部は、がん情報サービスの運営を主として担っており、基本方針に沿って、引き続きがんと診断された患者・家族のための情報提供を継続していく予定です。海外の動向についても注意を払い、海外の同様のミッションを持った部門との協力・連携や在日・在留外国人へ外国語による情報提供についても今後検討していきたいと考えております。
  • 5月1日より部長が着任いたしました。

がん医療支援部

課題1:都道府県がん診療連携拠点病院等の支援に関して

指摘事項

  • 都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会の運営をよりしっかりとお願いしたい。
  • 全国がんセンター協議会とも連携し、別の切り口からがん診療の均てん化や推進に貢献している。
  • 地域緩和ケア連携調整員研修は重要である。地域包括ケアの取り組みとがん医療の統合を考えるためにも、地域の実情に合わせてモディファイできるようなものを作ると良い。

対応案

  • 全国のがん診療の質を向上させるためは、がん診療連携拠点病院や全国がんセンター協議会等、がん専門病院の連携強化が不可欠と考えております。事務局として、拠点病院等とのコミュニケーションを密に図り、ニーズを把握し、必要な支援を提供できるよう努めてまいります。
  • 引き続き、地域におけるがん診療の中心的役割を果たしている全国がんセンター協議会の事務局として、がん診療の均てん化や推進に貢献してまいります。
  • 地域緩和ケア連携調整員研修について建設的なご助言をいただきありがとうございます。人口構造の高齢化やがん医療の外来化、ゲノム医療等の発展によるがん治療の長期化に伴い、がん治療病院と地域の医療者、介護福祉の担い手との連携は益々重要になると考えております。地域の実情に応じて地域緩和ケア連携調整員が活躍できるよう、患者さんやステークホルダーの意見を伺い、事業を発展させていきたいと考えております。
課題2:がん医療の均てん化に関する取り組みについて

指摘事項

  • 均てん化の評価は別の部とのことであるが、具体的に均てん化の活動の活性化を図ってほしい。
  • がん医療の均てん化を目指した活動をしているといいながら、均てん化の現状さえ把握できていないというのは残念である。指標の検討も必要であり、現状をおさえ、その原因を探り、解決策を考えるという方法をとっていただきたい。

対応案

  • 医療現場の支援は医療支援部、データを元とした体制に対する提言は医療政策部、がん政策評価研究部という役割分担が明確となりましたが、ご指摘いただいた通り、当部においてもその結果をもとに原因を探り、解決策を考える役割があると考えております。今後は、関係部署と協同し、がん医療の均てん化のための活動に取り組んでいきたいと考えております。
課題3:遺族調査について

指摘事項

  • 遺族調査は重要であるが、全体の事業の中でどのような位置づけで行われているのか。
  • せっかくの遺族調査をもう少しわかりやすく情報発信する必要があるのではないか。
  • 政策にいかすために、調査から見えてきた課題が何が原因で起きているのか、その改善のために何が必要か等の研究を深める必要があると感じる。

対応案

  • 遺族調査は、「がん患者の療養生活の最終段階における実態把握事業」として、遺族の視点で終末期医療の質を評価することで、施策の策定や改善に向けたがん対策の評価指標として活用されています。
  • 遺族調査結果は、電子ブックでカラーグラフを用いて報告していますが、今後の報告では、患者・家族・遺族からも見て理解しやすい報告ページを作成するなどの工夫を検討します。
  • 遺族調査で収集したデータを用いて、課題解決に向けて多角的な視点で分析を進めるため、専門委員会でテーマを確定し、NCC内外の専門家間で分担して研究論文化に取り組んでいます。
課題4:組織体制の問題、その他

指摘事項

  • 組織の整理を分かりやすくしてほしい。
  • 少ないスタッフで大切な仕事をしているので、もう少しマンパワーが必要だと思う。
  • 他部署から移管された希少がんに関する取り組みが不明であった。
  • 国際的な部分は皆目みえない。

対応案

  • 組織体制が不安定であり、ご心配をおかけしたことをお詫び申し上げます。当部は、昨年度一年をかけて部の体制を整えました。人員も増えたことで、全国のがん医療ネットワークのハブとしての役割を強化していくことができると考えております。
  • 希少がんに関しましては、臨床部門と連携し、社会医学的見地から実情を評価し、がん診療連携拠点病院等の支援につなげたいと考えております。
  • 他国に比べ急速に人口構造の高齢化が進んでいる日本において、がん診療のあり方や質の向上、地域社会との連携について検討し、実践することで、今後高齢化を迎える他国の参照となるべく努めてまいりたいと考えております。

医療政策部

課題1:患者体験調査の活用について

指摘事項

  • 患者体験調査は患者本位の医療の実現につながっているか評価する上でも重要。都道府県ごとの対策に生かすよう推計値を算出するようしたのも評価できる。
    第3回目の患者体験調査を実施され、今回は患者数も多いので、その結果には期待が大きく、政策にもつながる重要な研究と評価する。
  • 患者調査の結果をどう政策に生かすのか、その道筋が十分見えない。調査して終わりではなく、貴重なデータをしっかり状況改善に生かす仕組みを考えてほしい。

対応案

  • 本事業は厚生労働省からの委託事業ですので、報告書を発行するとともに、がん対策推進協議会をはじめとして厚生労働省の各場に報告し、議論を深める所存です。また、その他、ご協力を頂いた患者関係者の皆様、また、関心のある人々とともに検討する場を可能な限り持ちたいと考えています。前回は、報告書だけでなく別途、提言書を発行して、その中のいくつかはがん対策で取り入れていただいたと思います。同様の活動を行ってまいりたいと思います。
課題2:Quality Indicator(QI)の対象がん種について

指摘事項

  • Quality Indicatorは最近、婦人科がんの項目が目立つが、他がん種も検討いただきたい。
  • 肺がん・大腸がんについても、順次進めてほしい。
  • 均てん化を標準治療ではかるとしたら、標準治療が少ないあるいはないがん種の評価はどのようにはかるのか。

対応案

  • 婦人科腫瘍学会の先生方が熱心に進めてくださるので、婦人科がんのQIが目立ちますが、熱心な臨床専門家がいらっしゃるところで進めていきつつ、是非他のがん種にも広げていければと考えています。
  • 肺がん・大腸がんについても鋭意進めていきます。
  • 標準治療が確立していないものについては、アウトカム(生存率あるいは、測定が可能であればQOL等)を見ていくことになります。院内がん登録では施設別生存率の公表を行っていますが、その精緻化などを検討して進めていければと考えます。
課題3:Quality Indicator(QI)の今後の展開、活用について

指摘事項

  • 均てん化のためのQIも重要な取り組み。院内がん登録とDPCをあわせることで、誰に何がしかたがわかり、有用な取り組みだと思う。また標準診療実施率を各病院や行政にフィードバックしているのも、自らを知り改善につなげるためには有用。
  • QIはがん医療の均てん化のためには必須の研究で、非常に価値のあるデータだと思います。
  • 標準治療実施率は患者の側もぜひ知りたい情報であるので、公開できる手法を検討してほしいし、標準治療が実施できていない医療機関について原因を探り、改善につながる手法の検討もお願いしたい。
  • QIを拠点病院まででとどめず、一般の方が受診を考える上での指標として使える要にしてはどうか?
  • 均てん化を都道府県へは返す予定とのことであるが、より積極的に提供していくべきと考える。
  • 得られたQIが地域、病院で活かされるよう、還元とその活用方法について、全国展開を目指してモデル的に検討してはどうか。
  • 国際比較なども難しいですが、できるとなおよいのでは、と感じた。

対応案

  • 標準治療実施率の公開についての方策は今後の大きな課題と思います。現時点では施設名付きでの公開をしないことを施設と約束してデータを収集していますので難しいですが、今後に関しては、本事業の委託元である厚生労働省と共に検討を続けます。理由がなければ標準治療を行うことを確保するのは大変重要ですが、標準治療であっても患者体力的には負担が大きい治療も多く、難しいこともあるので、標準治療の実施率が高ければよいということでもないことで、「公表」が誤解を生む懸念がありためらわれます。多くの意見を聞きながら公開の仕方を議論してまいります。
  • 22の都道府県ではすでに都道府県フィードバックのページにアクセスするIDを持っています。他の都道府県においても、働きかけていこうと思います。
  • 国立がん研究センターでの人員的な余裕はありませんが、がん診療連携拠点病院の整備指針で、都道府県毎にQIも活用して均てん化を検討することが要請されているので、その好事例の共有などはPDCAサイクルフォーラムなどを通じて行っていきたいと思います。
課題4:組織体制について

指摘事項

  • がん医療支援部とのすみ分けがわかりにくいので、明確にしていくことで活動を活性化していただきたい。
  • がん医療支援部と医療政策部の業務内容の整理が必要。連携も取れているかがよくわからない。
  • 医療政策部と支援部の違いが不明瞭
  • マンパワーは足りているのか。
  • 職員体制もこのままで大丈夫か心配になる。育休職員の手当てなどは行われているのかどうか。

対応案

  • これまでは、医療現場の支援は医療支援部、データを元とした体制に対する提言は医療政策部、といった切り分けでした。今後の方向性については、がん対策研究所内全体で役割分担をどのように行うのが適切かという議論を含め、がん対策研究所で検討・整理をしているところです。

横断的プロジェクト

課題1:取り組みへの評価と期待

指摘事項

  • 様々な部門にまたがる問題が多いだけに、組織横断的なプロジェクトに対する期待は非常に大きい。その中ですでに7つのプロジェクトが活動し成果も出している点を高く評価したい。
  • がん対策センターの各部の活動に加えて、部が連携する横断プロジェクトを重要視いただき、着実に芽が出てきたと思う。
  • 非常に重要な考え方で、個別課題の解決では難しいことを、共通課題として効率よく対応しようとしている点。
  • ここまでの全ての研究が手上げ式で、提案型であるところ。
  • 今後は更に手上げからがん対策基本計画に沿った戦略的な研究への取り組みを期待する。
  • 研究のその後の社会への展開をはかっていくために、という視点を軸にお願いしたい。
  • 国立がん研究センター、がん対策研究所にとって重要なものである。是非タイムリーなトピックを取り上げていってほしい。
  • 国際的な取り組みは評価できる。政策に直結した分野横断的なもの。
  • 横断プロジェクトで作成したロジックモデルが第4期がん対策推進基本計画に採用されたのは意義深い。
  • アジアがん予防指針も、日本がリーダーシップをとって進めており、今後の成果を期待したいし、持続可能なIT体制の実現もぜひ検討を深めてほしい。
  • アジア版がん予防指針の策定や患者・市民パネルによるPPI型検討など、広い視点で取り組んでいることも評価できる。
  • アジアがん予防指針は国立がん研究センターらしい取組みである。日本を代表してアジアをリードしてほしい
  • 胃がんのリスク層別検診も重要な取組みである
  • HPVに関する取組みも素晴らしく、これで終わらずアップデートしていってほしい
  • 子宮頚がんファクトシート(一般向け)をどう普及していくかを検討しているとのことだが、是非具体的に進めていただきたい。
  • 組織横断的な課題として、情報発信のあり方も重要なテーマだと思う。新しい技術の活用や情報の伝え方なども研究し、国民一人一人が自分事として行動できるように、予防につながるよう取り組んでほしい。
  • 単発でプロジェクトを提案するのではなく、取り組むべきプロジェクトを挙げたうえで、インパクト、これまでの成果の程度、実施の困難さなどの観点から整理し、優先度をつけて選択することが望ましいのではないか。

対応案

  • 今後の展開として、研究者の自由な発想による課題提案も残しながら、がん対策推進基本計画に沿った戦略的課題、政策に直結した課題、研究を社会へ実装していくための課題など、タイムリーで戦略的なプロジェクトだてを検討していきます。
  • これまで、プロジェクトを実際に承認するプロセスとして、ICC研究者の参加する企画検討会議の中で、議論をした後に進めるべきプロジェクトかどうかの決定をしてまいりました。今後も、情報発信の在り方をはじめ、取り組むべきプロジェクトを整理し、優先度をつけ、プロジェクトの承認プロセスを進めていきたいと考えます。
課題2:今後解決すべき課題

指摘事項

  • 所属部の業務での負担を考慮できるようにしてあげてほしい。
  • 特定の部、研究者に負担が偏っているのではないか。
  • 人員が限られている中でどう研究を広げ深めていけるのか。外部の人材を活用する手立ても検討が必要。
  • すでに一部では病院との共同プロジェクトも始まっていますが、今後、研究所も検討するとよい(が、あまり無理にいそがなくても結構)。
  • 大所高所の視点、俯瞰できる能力が求められ、迅速に組織の人的強化が求められる。

対応案

  • 横断的プロジェクトに特定の人のみが参加している状況を回避するため、誰がどのプロジェクトに参加しているかについてモニターします。
  • 外部人材の活用についてはプロジェクトの特性によって積極的に検討して参ります。
  • 研究所との横断的プロジェクトも検討してまいります。
  • 迅速な組織の人的強化に努めて参ります。