福島第一原子力発電所周辺で活動する保健師の個人ごとの被ばく量測定調査結果の報告と国立がん研究センターからの提案
国立がん研究センターは、福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の影響に対し、被災された住人の方々の健康を守るため、国立がん研究センターは、個人の被ばく量の測定の必要性を4月14日に全国で初めて提案するとともに、その実施を求めてまいりました。
今回、住民の健康と安全のためにおこなったガラス線量計(ガラスバッジ)による調査として、渡會睦子氏(東京医療保健大学医療保健学部看護学科准教授、住民とともに活動する保健師の会代表)と国立がん研究センターが共同で行った研究により、被ばく量については同一地域でも個人差が大きいという結果が明らかになりました。
個人の被ばく量を実測していくことの必要性がエビデンスに基づいて示され、被災された住民の方々が安心して生活していくことができるよう、ガラス線量計(ガラスバッジ)による調査の実施を改めて提案することを目的とし、平成23年9月13日(火曜日)に記者会見を開催しましたので、以下にご報告します。
記者会見概要
開催日時
平成23年9月13日(火曜日)14時から15時
開催場所
国立がん研究センター中央病院 管理棟1階 第1会議室
出席者
- 理事長:嘉山 孝正
- 企画戦略室長:成田 善孝
- 研究所所長:中釜 斉
- 中央病院・放射線治療科科長:伊丹 純
- がん対策情報センターがん統計研究部長:祖父江 友孝
- 企画戦略室副室長:加藤 雅志
- 東京医療保健大学医療保健学部看護学科准教授
住民とともに活動する保健師の会代表:渡會 睦子
個人ごとの被ばく量測定調査結果と国立がん研究センターからの提案
4月14日に国立がん研究センターは、全国で初めて住民向けに被ばく量測定のために個人ごとのガラス線量計(ガラスバッジ)による調査を提言いたしました。
その後4ヶ月以上が経過し、いまだ福島第一原子力発電所の事故は収束せず、被災地域の住民の方々は放射線の影響について大きな不安を抱いております。
今回、住民の健康と安全のためにおこなったガラス線量計(ガラスバッジ)による調査として、渡會睦子氏(東京医療保健大学医療保健学部看護学科准教授、住民とともに活動する保健師の会代表)と国立がん研究センターが共同で行った研究により、被ばく量については同一地域でも個人差が大きいという結果が明らかになりました。
個人の被ばく量を実測していくことの必要性がエビデンスに基づいて示され、被災された住民の方々が安心して生活していくことができるよう、ガラス線量計(ガラスバッジ)による調査の実施を改めて提案いたします。
福島県原発周辺地域における保健師のガラス線量計(ガラスバッジ)着用による蓄積放射線量測定について
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国立がん研究センターの見解と提案を示す
嘉山理事長 -
東京医療保健大学医療保健学部看護学科准教授
住民とともに活動する保健師の会代表:渡會先生
福島県では放射線量等の安全が証明されていないため、他県からの被災者支援が滞っている現状にあり、福島県における放射線の影響を明らかにする必要がありました。原発周辺地域において巡回、家庭訪問活動を実践している各自治体保健師に対しガラス線量計を配布し、蓄積線量を測定し、真の被ばく量を可視化することを目的として調査を実施しました。
5月1日から31日までの2週間から4週間に計測測定値を、地区ごとの空間線量率と各個人の屋外活動時間記録とともに測定しました。その結果、地域の空間線量率と個人線量計測定値の平均値は相関するものの、個人ごとの被ばく量は同一地域でも個人差が大きいということが明らかになりました。個人の被ばく量は行動パターンとも一致せず、屋外に長い時間活動したからといって、線量が多いとは限らないことも明らかになりました。
また、調査の意義を理解し、調査参加への意識が高い保健師を対象とした本調査でしたが、行動パターンの調査票の記入率は高くなく、一般の住民の方々を対象とした調査票を用いた調査は困難であると考えられました。
これらのことから、正確な被ばく量を把握するには、行動パターンの記録ではなく、ガラスバッジ等で地域住民の方々の一人一人の線量を測定していく必要があります。
住民の方々の安心のためには個人ごとに被ばく線量を測定して正確に把握することが必要
今回の調査は、地域によって被ばく線量を区別するのではなく、地域で生活する住民、就業する方々について、個人ごとに被ばく線量が異なるということを初めて明らかにしています。
これまでの原発事故などでの調査では、ガラスバッジ等で住民個人の被ばく線量を把握することはなされていませんでした。今回の調査により、ガラスバッジを用いて個人ごとの被ばく量を測定することにより、住民の方々の健康障害のリスクについて、根拠のある情報をもとに判断ができます。
今回の調査結果を踏まえ、改めて住民の方の安心のために、ガラスバッジにより個人の線量を正確に把握する必要があることを提案いたします。
被災地周辺地域で生活、就業しておられる方々を支援するため、国立がん研究センターでは、当センターが持つ技術を提供していくとともに、引き続き最大限の協力をしてまいります。
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各専門分野から7名が記者会見に臨んだ
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中央病院 放射線治療科科長 伊丹先生
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企画戦略室長 成田先生
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会場を埋める報道各社
記者会見資料は関連リンクをご覧ください。
(平成23年9月13日)