化学療法不応の膵がんに対するGBS-01医師主導治験の患者登録を開始
アカデミア発の新薬、難治がんの新たな治療選択肢として期待
2013年3月25日
独立行政法人国立がん研究センター
独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田 知光、以下国立がん研究センター)早期・探索臨床研究センターは、ゲムシタビンならびにフッ化ピリミジン系抗がん剤不応(注1)の膵がん(注2)を対象とした新薬「GBS-01」の医師主導治験(注3)(前期第II相試験)の患者登録を3月11日より開始しました。実施施設は、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)、同中央病院(東京都中央区)、がん研究会有明病院(同江東区)の3ヵ所です。
GBS-01は、国立がん研究センター東病院 江角 浩安院長らのグループと富山大学、クラシエ製薬株式会社の共同研究によって生まれたアカデミア(注4)発の治験薬です。研究グループは、マウスによる実験で天然物「アルクチゲニン」に膵がんに対する抗腫瘍効果があることを発見し、さらにアルクチゲニンを含んだ漢方生薬「牛蒡子(ゴボウシ)」を特別な方法で抽出、製剤化することに成功しました。すでにゲムシタビン不応の膵がんを対象とした第I相試験において、GBS-01の安全性が確認されています。
創薬シーズの発見から開発までを一貫して行い、日本のがん患者さんに有効な新薬をいち早く届けることは、国立がん研究センターの重大な使命です。国立がん研究センターでは、GBS-01が治療選択肢の少ない膵がん患者さんの新たな希望となり得ることを願い、本試験の実施に注力してまいります。
詳しくは関連ファイルのプレスリリースをご参照ください。
- プレスリリース:化学療法不応の膵がんに対するGBS-01医師主導治験の患者登録を開始
注1:(化学療法)不応
化学療法を行っても効果が得られない状態。
注2:膵がんについて
膵がんは膵臓から発生するがんで、難治がんのひとつです。罹患率(患者さんの割合)は60歳ごろから増加し、高齢になるほど高くなります。外科治療(手術)が最も確実な治療法ですが、早期発見が難しく、診断時に切除が可能な患者さんは全体の20%から30%とされています。切除ができない場合は、放射線治療や化学療法、それらを組み合わせた化学放射線療法などが行われます。
- 参考:がん情報サービス「膵がん」(がん情報サービスへリンクします)
注3:医師主導治験について
本試験は、厚生労働科学研究費「難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業(がん関係研究分野)」(課題番号:平成24年-実用化(がん)一般-005)を用いて行われる医師主導治験です。
注4:アカデミア
大学、病院などの研究施設。従来、日本では早期開発を行う体制が不十分だったことから、国内のアカデミアで発見されたシーズが海外で開発・販売され、結果としてドラッグラグや医薬品の輸入過多を生む一因となっていました。近年、国を挙げて早期開発体制の整備が進められ、アカデミア発のシーズを国内でいち早く実用化する取り組みに大きな期待が寄せられています。
早期・探索臨床研究センターについて
国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター(センター長:大津 敦、略称:NCC-EPOC(エポック))は、厚生労働省「早期・探索臨床試験拠点整備事業」の支援を受け、2012年に設立された組織です。
- 世界で初めてヒトに投与を行うfirst-in-human(FIH)試験
- 未承認薬医師主導治験
- 橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)の推進をミッションとして
世界トップレベルの新薬開発拠点を目指します。