全国397のがん診療連携拠点病院における診療実態を把握 5大がんの年齢別初回治療方法・診断病期も初集計がん診療連携拠点病院の院内がん登録2012年集計報告
2014年8月25日
独立行政法人国立がん研究センター
独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、所在地:東京都中央区、略称:国がん)は、全国のがん診療連携拠点病院397施設で2012年の1年間にがんと診断され登録された診療情報(院内がん登録)の集計結果をまとめ、8月25日に同センターがん対策情報センターのウェブサイトで公開しました。
集計を行った診療情報は、がんの種類、進行度、治療方法、年齢、来院経路、発見経緯などで、それらを都道府県別および施設別に集計し、国や都道府県におけるがん対策と、拠点病院における自施設機能の把握と診療の方向性検討に活用されます。本集計は、2007年分より開始して以降、今回の2012年分で6回目の集計となります。
がん登録とは、がん対策やその評価に不可欠ながんの罹患、生存率、診療実態についての指標を得るための情報収集システムで、同じ方法かつ精度を保ち継続集計することで、地域格差、施設格差、医療格差の経年変化を把握、評価することができます。「院内がん登録」は、現在日本で行われている3種類のがん登録のうちのひとつで、全国のがん診療連携拠点病院におけるがん診療状況を把握することで、わが国のがん診療の方向性を検討するなどに活用されるほか、各施設の評価に活用されます。このほか、都道府県が実施する地域の罹患をみる「地域がん登録」、各がん専門学会が実施する臓器別の診断・治療をみる「臓器がん登録」があり、それぞれに異なる役割を果たしています。2016年からは「がん登録推進法」のもと国の事業として日本でがんと診断された方のデータを収集する「全国がん登録」が開始されます。
5大がんの年齢別治療方法を特別集計 ライフステージごとの診療実態を把握
国立がん研究センターは、患者さんやがん診療機関が真に求めている統計情報の提供を目指し、院内がん登録の情報登録精度が一定程度向上した2010年分より、基本集計とは別により詳細な集計を特別集計として報告しています。2010年分では肺がんの組織型別集計を、2011年分では小児がんの国際分類集計を行い、様々に活用いただいております。
この度の2012年分で行った特別集計は、5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)の年齢別初回治療方法と診断時病期で、高齢者や働く世代などライフステージごとの医療のあり方を検討していくための実態把握のために集計いたしました。年齢別に診療実態を把握する統計はこれが初めてで、今後、様々な検討、研究に活用が期待されます。また、患者さんにとっても「自分と同じ部位、同じくらいの年齢、同じ病期の患者がどのような治療を受けているのか」の参考情報となればと思います。厚生労働省による推計では、働くがん患者は全国に32.5万人とされています。国立がん研究センターは、どの世代ががんになっても安心して暮らせる社会を目指し、それぞれのライフステージにふさわしい治療概念や医療技術の確立に向け、実態把握、研究、診療の推進を図ってまいります。
拠点病院以外の都道府県推薦236施設についても集計 日本のがん罹患数の約80%をカバー
拠点病院以外のがん診療施設の実態をも明らかにし、また各施設にデータ活用いただくため、前回より都道府県推薦のがん診療施設の集計も開始しておりますが、その集計対象施設も前回の155施設から、今回は236施設へ大幅に増加しました。拠点病院と都道府県推薦施設を合わせると最新の日本全体のがん罹患数の約80%にあたり、2016年に施行されるがん登録推進法で義務化される全国の医療機関での院内がん登録が、精度を維持しながら実施されることに期待できる結果となりました。
院内がん登録2012年集計概要
調査方法
調査対象施設
- がん診療連携拠点病院397施設(集計対象397施設)
- 都道府県推薦がん診療病院298施設(集計対象236施設)
調査対象期間
2012年1月1日から12月31日までの1年間
集計対象
自施設で診断または他の病院で診断された後、自施設に初めて受診した、すべてのがん及び脳腫瘍の患者
集計項目
性別、病院所在地の住所の都道府県、診断時住所の都道府県、年齢、来院経路、発見経緯、症例区分、がんの種類、治療前及び術後病理学的ステージ(病期)、初回の治療方法 11項目
集計目的
- 都道府県別集計(記者説明会 配布報告書、8月25日Web掲載)都道府県におけるがん種、進行度、その治療の分布を把握し、国や都道府県におけるがん対策の計画立案等に活用
- 施設別集計(記者説明会での報告書配布なし、8月25日Web掲載)
がん診療連携拠点病院や都道府県推薦の各施設が全国と比較した自施設のがん診療状況を把握し、がん診療の方向性を検討するなど施設機能評価に活用
拠点病院の相談支援センターへも情報提供し、受診施設や治療選択など患者さんが知りたい情報を広く提供する
2012年の基本集計結果のポイント
- 397のがん診療連携拠点病院全施設の登録データが基準精度をクリアし集計対象となりました。(前回集計においては2施設がクリアできず集計対象は395施設)
- 397施設の全登録数は613,377例で、最新(2010年)の日本全体のがん罹患数の約70%にあたります。さらに県推薦236施設を加えると、633施設766,123症例となりカバー率は約80%と考えられます。
- 登録部位は、2010年からの3年間で上位6位までの変動はなく
1.大腸 2.胃 3.肺 4.乳房 5.前立腺 6.肝臓でした。 - 2010年からの3年間で、拠点病院における年齢層や性別等の患者の特徴、がんの発見の経緯や来院経路などの受療動向、拠点病院で行われている治療内容に大きな変化は認められませんでした。
特別集計結果のポイント(拠点病院のみ集計対象)
5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)の年齢別初回治療方法と診断時病期について
胃がん
- 90歳以上では、約50%が治療なし。
- 年齢が高いほど、薬物療法を含む治療が行われていない。
大腸がん
- 90歳以上でも、治療なしは約20%。
- 80歳以上で薬物療法を含む治療の割合は小さく、90歳以上ではほとんど行われていない。
肝臓がん
- 90歳以上では、約50%が治療なし。
- 80歳未満では、年齢階級による治療方法に大きな違いはない。
肺がん
- 90歳以上では、約60%が治療なし。
- 年齢が高いほど、放射線のみの割合が高い。
- 年齢が高いほど、薬物療法を含む治療が行われていない。
乳がん
- 90歳以上でも、治療なしは約10%。
- 80歳未満では、年齢階級による治療方法に大きな違いはない。80歳以上では、薬物療法のみの割合が高い(侵襲の小さい内分泌治療のため)。
全体
- 米国との同様の集計と比較し大きな違いは見られず、日本でも米国同様の治療が行われていることが分かりました。
- 拠点病院の初回治療患者においては、40歳未満や40歳代の比較的若い患者と90歳以上や80歳代の超高齢の患者は、4期が多く、0期や1期が少ない。拠点病院に治療の難しい患者が紹介されている可能性がある。
治療の集計の留意点
初回治療
- 治療開始時点で既に計画されていた治療内容で、後から随時に追加された治療は含まない
- 自施設で行った初回治療のみ登録
治療の登録区分と集計区分
- 登録は、外科的治療、内視鏡的治療、化学療法、内分泌療法、放射線治療など12区分の「有無」。
- 12種類の治療区分の「有無」から、集学的治療を考慮した集計用の12の治療区分と、いずれの登録区分も「無」であった“治療なし”の13種類
ただし、“治療なし”は吐き気や痛みの治療など、いわゆる症状緩和の治療なしを意味するものではありません。“治療なし”であっても、緩和ケアは適切に実施されています
プレスリリース:
- 院内がん登録2012集計報告
関連ファイルをご覧ください。
資料
- 概要説明資料
- 参考資料
- ウェブ掲載ページのご案内
- 院内がん登録2012年集計がん診療連携拠点病院施設別集計見本
- 院内がん登録2012年集計都道府県推薦施設別集計見本(1)
- 院内がん登録2012年集計都道府県推薦施設別集計見本(2)
関連ファイルをご覧ください。
問い合わせ先
内容に関するお問い合わせ
国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計研究部 診療実態調査室長
柴田 亜希子(しばた あきこ)
電話番号:03-3542-2511(内線1631)
Eメール:akshibat●ncc.go.jp(●を@に置き換えください)
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