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免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブで国内初の小児がん対象治験を医師主導で開始

2017年5月10日
国立研究開発法人 国立がん研究センター

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:西田俊朗)は、小児期およびAYA(Adolescent and young adult、思春期・若年成人)世代のがん患者のうち、標準的な治療に抵抗性の難治悪性固形腫瘍とホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)を対象に、免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの医師主導治験(NCCH1606、試験略称:PENGUIN)を開始いたします。ニボルマブでの治験を小児期およびAYA世代を対象として行うことは国内初の試みです。

小児がんは、個々のがんが極めて希少な疾患であり、患者数が少ないなどの理由から、製薬企業による新薬の臨床試験(治験)がほとんど進まないことが課題とされています。そのため国立がん研究センターでは、成人向けの薬剤を小児まで適応拡大させるなどを目的とした小児がん対象の医師主導治験を積極的に実施しています。

本試験は、成人の複数のがん種において有効性が示され、承認が得られている免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブが小児においても安全に投与できるかを評価するための国内初の試験です。本試験でニボルマブの小児における安全性が確認できた場合は、ニボルマブが有効と考えられるがんにおいて薬剤開発を進め、また、既に成人で承認が得られているホジキンリンパ腫に対する小児への適応拡大を目指します。
本試験は小野薬品工業株式会社から資金援助および薬剤提供を受け、医師主導治験として実施します。

本試験の意義

標準の化学療法に抵抗性の再発難治小児固形腫瘍は、がんの種類を問わず予後が不良で、有効な治療がほとんどありません。
ニボルマブはその作用のメカニズムから、成人と同様に小児においても複数のがん種に効果が期待できるものと考え、今回の医師主導治験を計画しました。本試験でニボルマブの小児における安全性を確認し、本試験の結果および海外の試験成績に基づき、有効性が期待できるがん種に対しては薬剤開発を進め、小児における承認取得を目指します。
本試験の結果からニボルマブの小児承認取得まで結びつけることができれば、選択肢の少ない小児悪性固形腫瘍患者における非常に有望な治療選択肢となるとともに、症例数の少ない小児がんの領域において、医師主導の新しい薬剤の開発のモデルとなることが期待されます。ホジキンリンパ腫については、成人ではすでに承認されており小児においても成人同様の高い有効性が期待できることより、本試験で有効性が評価されればホジキンリンパ腫の小児に対する適応拡大が期待されます。

治験対象

本試験の対象は、2つ以上の化学療法で治療を行った後に腫瘍が残っている難治小児悪性固形腫瘍とホジキンリンパ腫です。
小児悪性固形腫瘍は、大きく分けると胎児性組織が悪性化した「芽種」と骨や筋肉、脂肪などの基となる組織由来の「肉腫」に分けられます。小児がんは希少がんであり、患者数が非常に少ないため、がんの種類ごとに新規薬剤開発を進めることは困難であり、本試験では小児期およびAYA世代の「肉腫」と「芽腫」を含む難治小児悪性固形腫瘍を対象として、がんの種類を限定せずにニボルマブの小児における安全性の評価を行います。
また、ホジキンリンパ腫は血液腫瘍ではあるものの固形腫瘍に近い性質を持つこと、成人の臨床試験でニボルマブが高い有効性を示し、小児においても同様の有効性が期待できることより、本試験の対象に加えました。

本試験詳細

難治小児悪性固形腫瘍およびホジキンリンパ腫患者を対象としたニボルマブの医師主導第I相試験

ニボルマブについて

ニボルマブは、わが国を中心にシーズ探索、創薬、臨床開発まで行われてきた薬剤です。がん細胞に発現したPD-L1(programmed cell death ligand 1)やPD-L2は、リンパ球に発現する受容体PD-1(programmed cell death 1)と結合し、抑制性のシグナルを送ることでリンパ球のがん細胞に対する攻撃を弱めています。ニボルマブは、免疫チェックポイントと呼ばれるブレーキ役の部分(PD-L1とPD-1の結合)を阻害する薬(免疫チェックポイント阻害剤)です。ニボルマブがPD-1と結合することで、PD-1とPD-L1及びPD-L2との結合を抑制します。これにより、がん細胞のリンパ球機能へのブレーキを解除し、がん細胞に対するリンパ球の攻撃能を高めることでがん細胞を減少もしくは消失させることができると考えられています。
ニボルマブは製薬企業の小野薬品工業株式会社およびブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社により、さまざまながん種を対象に臨床開発が進められています。第III相試験において、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん及び頭頸部がんではがんの縮小効果が見られ、いずれも既存の抗がん剤による治療と比較して延命効果が優れていることが示されました。また、古典的ホジキンリンパ腫を対象にした第II相試験においてもがんの縮小効果が見られました。これらの臨床試験の結果をもとに、日本国内では悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、古典的ホジキンリンパ腫及び頭頸部がんの治療薬として厚生労働省に承認されています。

医師主導治験について

新しい薬が承認され、保険で使えるようになるためには新薬の臨床開発(治験)が必要です。以前は製薬企業だけが治験を行っていましたが、2003年7月に医師や歯科医師が治験を企画して医薬品開発にかかわることが認められました。このように医師や歯科医師が自ら治験を実施することを医師主導治験といいます。抗がん剤はその適応が細かく厳しく定められています。あるがん種に効くであろうことがわかっている薬剤でも、適応外であれば使うことができません。そこで国立がん研究センターでは、医師主導治験を積極的に行い、抗がん剤をはじめとする薬剤の適応を広げる取り組み推進しています。

プレスリリース

  • 免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブで国内初の小児がん対象治験を医師主導で開始

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国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
郵便番号:104-0045 東京都中央区築地5-1-1
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置き換えてください)

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