小腸腺がんに対する術後化学療法の再発予防効果を検証する
世界初の国際共同第III相臨床試験開始
2017年5月31日
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:西田俊朗)は、根治手術後の小腸腺がんの再発予防効果を検証する世界初の国際共同第?相臨床試験を実施します。検証を行うのは、手術で完全に摘出された小腸腺がんに対するカペシタビン内服投与およびオキサリプラチン静脈内投与の併用療法(CAPOX療法)の再発予防効果で、現在の標準治療である手術単独(術後無治療経過観察)とランダム化して比較する信頼性の高い臨床試験です。
CAPOX療法は、大腸がんや胃がんの再発予防における有効性が確認されています。一方、小腸腺がんにおいては信頼性の高い臨床試験は実施されておらず、薬事承認がされている薬剤は存在しません。今回の試験は、先進医療制度下での「先進医療B」を適用することで、小腸腺がんに対する未承認薬を用いた医師主導型臨床試験として実施します。
小腸腺がんは、早期発見が難しい上に、同じ消化管原発の胃がんや大腸がんに比べ悪性度が高く、手術で完全に摘出できたとしても約半数は再発してしまうとされています。また、その希少性故に治療開発が進んでおらず、全ての病期における標準治療は確立されていません。
本試験の結果により、日本のみならず世界中の小腸腺がんの患者さんへ術後再発予防に関する有効な治療が提供されるようになることが期待されます。
本試験の概要
本試験は、希少がんの治療開発を目的とした国際的な臨床試験コンソーシアムInternational Rare Cancer Initiatives(IRCI)と共同で行うもので、また国立がん研究センター中央病院臨床研究支援部門が直接支援する研究班の集合体である日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)が計画・立案した第III相ランダム化比較試験です。
まずは未承認薬や適応外薬の投与・管理体制が整っており臨床研究中核病院でもある国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)で開始し、その後、当センター東病院(千葉県柏市)など全国のJCOG大腸がんグループ/肝胆膵グループ約20施設で順次登録開始となる予定です。6年半の期間で150名の患者さんにご参加いただくことを目標にしています。
本試験詳細(UMIN-CTR)
- UMIN-CTR 臨床試験登録情報の閲覧(外部サイトにリンクします)
小腸腺がんとは
小腸腺がん(ファーター乳頭部がんを除く十二指腸原発腺がん・空腸原発腺がん・回腸原発腺がん)は、同じ消化管原発の腺がんである胃がん・大腸がんに比べて悪性度が高く、予後不良な疾患と考えられており、手術で完全に摘出できたとしても約半数の患者さんが再発してしまうとされています。特に空腸・回腸から生じるものについては、検診で発見されることは非常に稀であり、腹痛や出血などを契機に診断されるため、かなり進行した状態で発見されることが多いとされています。また、小腸腺がんは世界的にも年間発症数が人口10万人に対し0.22-0.57人とされる希少ながんです。
- 希少がんセンター 小腸がん
第III相臨床試験について
臨床試験には大きく3つの段階があり、各段階で安全性や有効性を確認しながら順番に進めていきます。この開発の3つの段階のことを、第I相、第II相、第III相(あるいは、フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3)などと呼びます。第I相よりも第II相、第II相よりも第III相のほうが治療法の開発が進んだ段階にあり、より臨床現場に近い状況にあります。
第III相臨床試験では、新しい薬や治療法が従来の薬や治療法(標準治療)と比べ、安全性や有効性の面で優れているかどうかをランダム化比較試験で確認します。ランダム化比較試験では治療効果を客観的に評価するために、新しい薬や治療法で治療を行うグループと、従来の薬や治療法(標準治療)で治療を行うグループに、患者さんを無作為(ランダム)に割り付けて治療を行います。そのため、患者さんが希望する新しい薬や治療法を実際に受けられるかどうかはわかりません。
- 研究段階の医療(臨床試験、治験など) 詳細情報(がん情報サービスへのリンク)
先進医療について
「先進医療制度」における「先進医療」とは、効果・安全性などの評価が定まっていない新しい試験的な医療技術のうち、保険適用の対象にするかどうかの判断を下すための有効性・安全性の評価を行う医療技術として厚生労働省が指定したものです。効果・安全性が不明なことから、一部の医療機関でのみ実施が認められています。「先進医療B」では、公的医療保険が適用される医療と、上記のような保険適用の対象外の治療を共に実施すること(混合診療)が例外的に認められます。
- 研究段階の医療(臨床試験、治験など) 詳細情報(がん情報サービスへのリンク)
日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group; JCOG)について
JCOGは、国立がん研究センター中央病院臨床研究支援部門が直接支援するがんの多施設共同研究グループです。前向きの多施設共同臨床試験実施により有効性の高い標準治療(最も効果的な治療)を確立し、その研究成果を国内外に発信し、がん患者さんの診療の質と治療成績の向上を図ることを目的としています。開発を目指す新しい治療法には、抗腫瘍薬の組み合わせによる薬物療法、外科手術や放射線治療、内視鏡治療に加えて、これらを併用した集学的治療があります。16の専門分野別研究グループが実施するJCOG試験には、年間約3,000人のがん患者さんが参加されています。また、国内外の他の臨床試験グループとの共同研究も積極的に進めており、欧米や韓国との共同研究も実施しています。
- がん治療の進歩のために(外部サイトにリンクします)
研究費
- 日本医療研究開発機構(AMED)委託研究開発費 革新的がん医療実用化研究事業
小腸腺癌に対する標準治療の確立に関する研究 - 国立がん研究センター研究開発費
成人固形がんに対する標準治療確立のための基盤研究
プレスリリース
- 小腸腺がんに対する術後化学療法の再発予防効果を検証する世界初の国際共同第III相臨床試験開始
関連ファイルをご覧ください。
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国立研究開発法人国立がん研究センター
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