希少がんにおける専門施設のリストと情報公開を開始
全国の手足・体幹表面の軟部肉腫治療の53施設リストを初公開
2017年12月25日
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)は、厚生労働省委託事業「希少がん対策」の一環として、希少がんの一種である軟部肉腫(手足あるいは体幹の浅い部分:内臓以外に発生した)の専門的な治療が可能な53施設のリストとその実績を含む概要について、ホームページ「がん情報サービス」において情報公開を開始しました。
数が少ない希少がんは、これまでどの施設が専門的に診療を行っているのかが明らかではなく、診断に時間がかかったり、質の高い治療を受けられる医療機関等に関する情報の収集や提供に苦慮されていたりしていたのが現状で、このような情報公開により受診や紹介が円滑になることが期待されます。
情報公開される項目は、手足あるいは体幹の浅い部分の軟部肉腫に対する治療件数や、外科、内科、放射線治療、病理医などの専門医の勤務状況や経歴、連携の実態などの詳細が含まれており、患者さんや医療者がこれらの情報を見ながら、受診先の施設あるいは紹介先などを選択することができます。
情報公開のサイト
専門施設リストの作成と公開の経緯
希少がんは、希少がん医療・支援のあり方に関する検討会報告書」では、全人口で10万人当たり年間発生が6人未満の罹患率のがんと定義されているが、数が少ないがために、診療上・受診上の課題が他のがんよりも大きいと考えられます。平成25年8月の厚生労働省「希少がん医療・支援の在り方に関する検討会」の報告書に基づき、がん種毎の検討を行うために国立がん研究センターを事務局として「希少がん対策ワーキンググループ」が組織され、検討が行われてきました。軟部肉腫は第2期のがん対策推進基本計画でも希少がんの例として挙げられていることから、その中で担当診療科の比較的明確な、手足あるいは体幹の浅い部分にできる軟部肉腫(四肢軟部肉腫)が、最初の対象として検討されていましたが、このワーキンググループで、専門施設の情報公開が必要という合意が得られ、一定の条件を満たす専門施設を全国から募集した上で今回のリストが作成されました。
この専門施設の条件は、四肢(手足あるいは体幹の浅い部分)にできた軟部肉腫の患者さんを適切に治療する体制・実績があることであり、例えば、3年連続で軟部肉腫の治療開始した患者さんが毎年1人以上いること、軟部肉腫の治療を専門とする外科医(整形外科専門医)2人以上の勤務、化学療法を専門とする内科医(がん薬物療法専門医)の勤務、病理診断の専門医をはじめとする、各種専門家が勤務していること、また特に肉腫の病理診断を専門とする病理専門医との連携があること、肉腫の定期的な多診療科による検討会が開催されていること、などがワーキンググループの検討の中で定められました。
この基準に沿って、全国のがん診療連携拠点病院や各関連学会にお知らせをして、専門施設の応募を募り、基準を満たしていることを確認の上、専門施設のリストを作成しました。
軟部肉腫とは
軟部肉腫とは、軟部組織から発生した悪性腫瘍のことです。軟部組織とは、肺や肝臓などの臓器と骨や皮膚を除いた、筋肉、腱(けん)、脂肪、血管、リンパ管、関節、神経を指します。軟部肉腫は、手足、胴体、頭頸部(とうけいぶ)、おなかの中など、体のいろいろな部位に発生します。軟部肉腫は、推定罹患率が10万人に3.6人とまれです。軟部肉腫についての詳しい情報は、以下のサイトをご覧ください。
がん情報サービスHOME>それぞれのがんの解説>軟部肉腫(成人)基礎知識
URL: http://ganjoho.jp/public/cancer/soft_tissue_adult/index.html
今回の注意点
- 今回の対象は、全身にできる可能性のある「肉腫」のうち、手足あるいは体幹の浅い部分(内臓ではない)に生じたものに関する専門施設です。内臓や顔、頭にできた肉腫については、専門施設も診療科も異なることがありますので、ご注意ください。
- リストの施設は応募された施設において、基準の確認をして公開したものです。受診先の手掛かりを提供することが目的であり、リストにない施設では治療が受けられないというわけではありません。
- 公開された情報は変動する可能性があります(専門とする医師の異動など)。国立がん研究センターでは定期的に情報の確認を施設に依頼しますが、変化の反映までには時間差があることをご理解ください。
情報公開の背景
第2期のがん対策推進基本計画により希少がん対策が開始されたことをうけ、厚労省「希少がん医療・支援のあり方に関する検討会」が開催されました。そこでは情報公開の必要性が報告され、それを受けて、各がん種ごとに必要な診療体制について検討する「希少がん対策ワーキンググループ」が国立がん研究センターを事務局として設置されることになりました。最初の検討対象として取り上げられたのが四肢(手足あるいは体幹の浅い部分(内臓ではない))の軟部肉腫であり、整形外科、形成外科、放射線腫瘍科、腫瘍内科、病理診断科、皮膚科などの専門学会や、日本医師会、患者団体の協力を得て委員を構成して検討を行ってまいりました。ここで、専門施設の条件と情報公開すべき項目を定め、全国の施設に対して参加と公開すべき情報の収集を行いました。今回はその結果を整理して公表するものです。
専門施設の条件
- 過去3年間(平成25年から平成27年)連続して四肢軟部肉腫の新規診断・治療開始例が1例以上あること
- 肉腫の病理診断が可能な病理専門医、肉腫の薬物療法が可能ながん薬物療法専門医、放射線診断専門医、放射線治療医が常勤で勤務していること
- 軟部肉腫専門の整形外科専門医あるいは形成外科専門医が2名常勤で勤務していること
- 小児血液・がん専門医が勤務する施設と連携があること
- 軟部肉腫の診断を特に専門とする病理専門医(日本病理学会骨軟部腫瘍コンサルタント)と連携があること
- 肉腫に関するTumor Board(複数の診療科による治療方針検討会)の定期的な開催があること
- 核医学検査(PET)を行う施設を持っているか、あるいは、そのような施設と連携があること
- 術中迅速診断が実施できる体制にあること
- 生検・手術検体の凍結保存が可能であること。
- 軟部肉腫の診療において、薬物治療が必要になった場合に標準治療を提供していること
- 肉腫に関する英文論文が年1篇以上あること。 (他施設との共著でも良い)。
- 軟部肉腫の診療において、薬物治療が必要になった場合に標準治療を提供していること
- 定められた情報公開を行い、また、必要なデータ検証作業に協力すること
情報公開をしている四肢軟部肉腫治療専門施設
- 北海道がんセンター
- 札幌医科大学附属病院
- 弘前大学医学部附属病院
- 岩手医科大学附属病院
- 山形大学医学部附属病院
- 福島県立医科大学附属病院
- 群馬大学医学部附属病院
- 埼玉県立がんセンター
- 埼玉医科大学国際医療センター
- 東京歯科大学市川総合病院
- 千葉県がんセンター
- 国立がん研究センター中央病院
- 東京都立駒込病院
- がん研究会有明病院
- 東京大学医学部附属病院
- 帝京大学医学部附属病院
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院
- 慶應義塾大学病院
- 東京医科大学病院
- 東京医療センター
- 東京医科歯科大学医学部附属病院
- 神奈川県立がんセンター
- 横浜市立大学附属病院
- 東海大学医学部付属病院
- 新潟大学医歯学総合病院
- 富山大学附属病院
- 金沢大学附属病院
- 福井大学医学部附属病院
- 信州大学医学部附属病院
- 静岡県立静岡がんセンター
- 愛知県がんセンター中央病院
- 名古屋大学医学部附属病院
- 藤田保健衛生大学病院
- 京都府立医科大学附属病院
- 大阪国際がんセンター
- 大阪市立総合医療センター
- 大阪大学医学部附属病院
- 近畿大学医学部附属病院
- 大阪市立大学医学部附属病院
- 大阪医療センター
- 兵庫県立がんセンター
- 奈良県立医科大学附属病院
- 鳥取大学医学部附属病院
- 島根大学医学部附属病院
- 岡山大学病院
- 呉医療センター・中国がんセンター
- 香川大学医学部附属病院
- 愛媛大学医学部附属病院
- 九州大学病院
- 久留米大学病院
- 大分大学医学部附属病院
- 宮崎大学医学部附属病院
- 鹿児島大学病院
今後の予定
- ほかのがん種に関しても専門施設の検討と情報公開を行っていく予定です。現在眼の腫瘍に関して検討が進んでいます。
- 今回の基準や施設についても定期的に見直しを行っていきます。
参考
厚生労働省「希少がん医療・支援の在り方に関する検討会」報告書
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000095430.html(外部サイトにリンクします)
国立がん研究センター「希少がん対策ワーキンググループ」
https://www.ncc.go.jp/jp/cis/divisions/health_s/about/opinions/rcwg/index.html(外部サイトにリンクします)
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