抗がん剤開発の世界的パラダイムシフトへ対応
日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業開始
2018年2月21日
株式会社LSIメディエンス
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
株式会社LSIメディエンス(代表取締役社長:伊藤 昭夫)と国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉)、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(理事長:米田 悦啓)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」の採択により、「がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業(以下、本事業)」を3月1日より開始する予定です。
PDX(patient–derived xenograft)は、がん患者さんのがん組織を免疫不全マウスに移植し腫瘍を再現するものです。PDXは患者さんのがん組織の特徴を保持できるため、抗がん剤開発にパラダイムシフトを起こしています。従来の実験モデルで5%程度といわれる治療効果の予測能が、PDXモデルマウスの場合は80%以上という報告があり、新しい抗がん剤をヒトに投与する臨床試験の前に、薬剤の効果を予め確認するためにPDXモデルマウスの利用が進んでいます。
「がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業」は、日本人の特性も加味した効率的な新薬開発を目指して、日本人のがん患者さん由来のPDXを産業活用できるよう、またさらに高度な研究・医療への応用を推進する取り組みです。
背景
抗がん剤の開発は極めて難しく、動物実験で有効性が示されても、実際にヒトに投与する臨床試験では有効性が示されないことがあります。実験に用いているがん細胞株は、元のがん組織の特性が失われているため、抗がん剤の正確な治療効果を予測できない可能性があります。近年、国内においてもPDXモデルの創薬利用が進み、PDXモデルを活用した研究開発の実績が出始めています。
一方、PDXの樹立・品質保証・維持等には多額の費用が必要となり一企業での対応が困難なため、日本での産業利用を可能とする国レベルの体制整備が求められています。
採択課題
- 採択者
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) - 事業名
医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE) イノベーション創出環境整備タイプ - 課題名
がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業 - 代表機関
株式会社LSIメディエンス - 分担機関
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 - 実施期間
2018年3月1日から2020年5月31日(予定)
がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業
事業概要
本事業では、厚生労働大臣の定める基準に適合するGLP (Good laboratory practice)施設を擁しPDXの取り扱い実績のあるLSIメディエンス、世界に先駆けて重度複合免疫不全マウスを用いて多種多様なPDXの樹立に成功した実績と最先端創薬技術を保有する医薬基盤・健康・栄養研究所、2つの臨床研究中核病院と国内最大のがん専門研究所を擁する国立がん研究センターの3者が協働し、世界最高水準の日本人がん患者由来PDX(J-PDX)研究拠点の整備と当該分野の専門人材の育成を進めます。
- 日本人のがん患者由来PDX(J-PDX)の産業利用に関する倫理的課題の解決
- 5大がん(肺がん、大腸がん、乳がん、胃がん、子宮がん)、前立腺がん、膵がん等の難治性がん、臨床試験が困難とされる希少がんを含む世界最高品質のJ-PDXライブラリーの整備
- J-PDXの樹立と使用に関する基準の作成
- GLP施設においてJ-PDXライブラリーの管理およびJ-PDXマウスを用いた薬事承認基準に準拠した非臨床試験の実施
- PDXに関する基礎研究およびPDX樹立方法の高度化研究
また、患者さんのがん組織およびマウスに移植されたPDXの解析情報(病理組織所見、がんゲノム、遺伝子発現等)を、患者さんの継時的な臨床情報と併せて一元管理し、抗がん剤の効果や作用機序をマウスと人で相互比較、検討することで、ゲノム医療・創薬の実践に貢献します。
本事業の特徴
1.最高品質の日本人がん患者由来のPDXライブラリーを構築
5大がんを中心に詳細な臨床情報が付帯した高品質のライブラリーを構築します。海外のPDXは外科手術検体から作成された後の臨床情報が付帯されていないものがほとんどです。手術後の抗がん剤治療の効果について情報がないので、PDXモデルマウスの実験成績と比較できません。本事業ではPDX樹立後の臨床情報も付帯したライブラリーを構築します。
2.希少がんPDXを含むライブラリー
希少がんは、臨床試験を組むこと自体が困難であり、臨床試験を補完しうるPDXマウスライブラリーを作成・維持することは希少がんの創薬開発に重要。
3. PDXをGLPグレードで維持
GLP施設内でPDXを保存・管理し、薬事承認基準に準拠した非臨床試験をPDXマウスで実施することが可能。
本事業と並行して、国立がん研究センターは国内外製薬企業と連携し、がん患者とPDXマウスの薬剤応答性データ等を突合・解析するCo-Clinical Study並びに希少がんの創薬研究を実施します。医薬基盤・健康・栄養研究所は、世界最先端の創薬技術を用いて製薬企業を支援し、新たな創薬標的の探索とシーズ創生を行い、J-PDXライブラリーを用いる循環型研究開発を推進します。
報道関係からのお問い合わせ先
株式会社LSIメディエンス
総務・法務・知財部 広報担当
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国立研究開発法人国立がん研究センター
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