患者のためのわかりやすい がん情報の提供に向け東京大学と国立がん研究センターの共同でがんコミュニケーション学 連携講座 設立
記者発表資料
2018年7月9日発行
要旨
1.がんコミュニケーション学連携講座の設立について
医療についての情報が氾濫する近年、がん患者やその家族が根拠の不明確な情報に惑わされることが少なくありません。しかし、これまで、がん患者や家族に向けて、医学研究により得られたがん情報をわかりやすく、かつ誤解のないかたちで伝えるためのコミュニケーションの方法について、体系的に研究し、よりよい方策を提案するための研究部門は、日本国内には存在しませんでした。
そこで、東京大学大学院医学系研究科と、国立がん研究センターが共同で、2018年4月に、がんコミュニケーション学連携講座を設立し、がん情報のわかりやすい提供のための研究と、医療従事者に対する教育を進めることとなりました。
東京大学大学院の学生に対する研究指導・教育を通じ、がんコミュニケーションの実務を担い、がんコミュニケーションを科学的に評価・計画できる人材の育成を目指します。
2.ヘルスコミュニケーション学記念セミナーの開催について
がんコミュニケーション学連携講座の設立にあたり、記念セミナーを開催します。同講座の准教授に就任した高山智子氏(国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部 部長 兼担)や、患者-医師間コミュニケーション研究の第一人者である石川ひろの氏(帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 教授)ら、国内のヘルスコミュニケーションの研究・実務の第一人者が一堂に会し、医療に関わるコミュニケーションの課題と、解決に向けた方策を議論します。
日時
2018年7月29日(日曜日)午後1時から午後5時15分
場所
東京大学医学部2号館講堂(本郷キャンパス)
講演演者
- 宮原哲
西南学院大学 文学部 外国語学科 英語専攻 教授
日米コミュニケーション学会 会長 - 中山健夫
京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学分野 教授
日本ヘルスコミュニケーション学会 代表世話人 - 高山智子
東京大学医学研究科社会医学専攻 がんコミュニケーション学連携講座 准教授
国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部 部長 - 石川ひろの
帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 教授
参加お申込みはヘルスコミュニケーション学記念セミナー(外部サイトにリンクします)
または参加申し込みフォーム(外部サイトにリンクします)宛にお願いします。
お問合せ先
- 東京大学大学院医学系研究科 医療コミュニケーション学分野
- 担当:軽部
- 電話番号(直通):03-5800-6549
- e-meil:secretary@umin.ac.jp
詳細
これまで、大学や研究所等の医学研究機関では、
1)がんの発症や進展のメカニズムの生物学的な研究、
2)がん治療法や診断法についての臨床試験、
3)がんのリスク因子等を研究する疫学研究、はさかんに行われてきました。
しかし、これらのがんに関する医学研究により得られた情報を、患者や家族にわかりやすく、かつ誤解のないかたちで伝えるためのコミュニケーションの方法について、体系的に研究し、よりよい方策を提案するための研究部門は、日本には存在しませんでした。
これまで、東京大学大学院医学系研究科では、公共健康医学専攻(専門職大学院)に医療コミュニケーション学分野を設置し、医師患者間等の対人コミュニケーションに加え、マスメディアやインターネットを介したコミュニケーション等、医療分野におけるコミュニケーションについて幅広く研究・教育を行ってきました。
また、国立がん研究センターでは、がんに関する信頼できる情報をわかりやすく提供し、それらの情報を患者や家族が活用できるよう支援するため、がん対策情報センターの中にがん情報提供部を設置しています。がん情報提供部では、インターネットやパンフレットを通じ、患者や家族に向けてがん情報を提供し、また、がん診療連携拠点病院等におけるがん相談センターの運営のための支援や職員の研修等を行ってきました。
そこで、医療分野におけるコミュニケーションで研究・教育業績を持つ東京大学大学院医学系研究科と、患者・家族に向けたがん情報の提供と相談支援の研究・実務業績を持つ国立がん研究センターが共同し、
2018年4月、東京大学医学研究科 社会医学専攻 がんコミュニケーション学連携講座を設立し、がん情報のわかりやすい提供のための研究と医療従事者に対する教育を進めることとなりました。
同連携講座の教員には、高山智子氏(国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部 部長 兼担)が就任しました。東京大学大学院の学生に対する研究指導・教育を通じ、がんコミュニケーションの実務を担い、がんコミュニケーションを科学的に評価・計画できる人材の育成を目指します。
がんコミュニケーション学連携講座の設立により、これまで医学界で科学的に検討されることが少なかったがんコミュニケーションについての発展が期待できます。その最も大きな受益者は、がん患者とその家族です。
具体的には、下記のような研究・教育に取り組んでまいります。
- 持続可能ながん情報提供体制のあり方の検討
- 「がん相談支援」の有効性の検証に関する研究
- がん患者やその家族からの疑問・質問の解析による知識データベースの構築に向けた研究
- 先進的な医療(臨床試験・治験、遺伝子治療、ゲノム医療等)に関する情報の提供方法に関する研究
- 患者からみたがん対策の評価に関する研究:がんの経済的負担、社会的苦痛の測定と施策への活用
- 健康情報を地域でどう広め、伝えるか:医療機関と公共図書館の連携による健康情報提供に関する研究
- 情報弱者への医療情報提供のあり方に関する研究
- 思春期・若年成人(AYA)世代のがん情報の提供方法、提供体制に関する研究
ヘルスコミュニケーション学記念セミナープログラムのご案内
時間 | 演目 | 演者 |
---|---|---|
午後1時から 午後1時15分 |
挨拶 | 木内貴弘 東京大学大学院 医学系研究科 医療コミュニケーション学分野 教授 |
午後1時15分から 午後1時20分 |
挨拶 | 若尾文彦 国立がん研究センター がん対策情報センター センター長 |
午後1時20分から 午後1時25分 |
挨拶 | 福田吉治 帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 研究科長 |
午後1時25分から 午後1時30分 |
挨拶 | 小林廉毅 東京大学大学院 医学系研究科 社会医学専攻 専攻長 |
午後1時30分から 午後2時 |
講演 | 宮原哲 「祝!がんコミュニケーション学連携講座設立―人間 コミュニケーション学と医療の統合への期待と挑戦―」西南学院大学 文学部 外国語学科 英語専攻 教授日米コミュニケーション学会 会長 |
午後2時から 午後2時35分 |
講演 | 中山健夫 「ヘルスコミュニケーションのこれまで・これから: お二人の先生方へのエール」京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学分野 教授日本ヘルスコミュニケーション学会 代表世話人 |
午後2時50分から 午後3時50分 |
講演 | 高山智子 「がんコミュニケーション学でめざすもの 実践から科学知へ、科学知を実践、そして生活へ」国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部 部長東京大学大学院 医学研究科 社会医学専攻 がんコミュニケーション学連携講座 准教授 |
午後4時から 午後5時 |
講演 | 石川ひろの 「ヘルスコミュニケーションの根拠をつくる:患者-医師間コミュニケーション研究から」帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 教授 |
午後5時10分から 午後5時15分 |
挨拶 | 木内貴弘 東京大学大学院 医学系研究科 医療コミュニケーション学分野 教授 |