支持療法・緩和治療領域での臨床研究指針を明文化「支持療法・緩和治療領域研究ポリシー(総論)」公開
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉/所在地:東京都中央区)中央病院支持療法開発センターは、支持・緩和領域の臨床研究および新規治療開発の推進に欠かせない「支持療法・緩和治療領域研究ポリシー(総論)」を作成し、ホームページで公開しました。
本研究は、日本医療研究開発機構の革新的がん医療実用化研究事業「支持/緩和治療領域研究の方法論確立に関する研究」(研究開発代表者:全田 貞幹 国立がん研究センター東病院 放射線治療科 医長)の支援により行いました。
背景
現在、がん治療そのものについての研究が積極的に進められ多くの標準治療が確立されている一方で、その副作用対策や患者さんの生活の質を向上させる支持・緩和領域の標準治療は確立していません。それは、科学的根拠の蓄積に必要な臨床研究や臨床試験に必要な、方法論や評価方法、支持療法/緩和治療の定義などが明確でないことも大きな要因と考えられます。
がん治療における副作用対策はすすめられていますが、新たな治療開発に伴い新たな副作用が生じたり、個々に反応が異なるなど複雑化しており、重篤な場合は治療の継続が困難となります。また、生存率の向上に伴い、働きながら治療を行う患者さんも増え、治療中の生活の質を左右する支持・緩和領域の発展は患者さんのみならず社会的な課題と言えます。
「支持療法・緩和治療領域研究ポリシー(総論)」の概要
「支持療法・緩和治療領域研究ポリシー(総論)」では、支持療法・緩和治療の臨床研究、特に臨床試験を行う際の諸問題を整理し、指針を示すため、臨床研究における(1)支持療法/緩和治療の定義、(2)研究の特性、(3)対象集団、(4)デザイン、(5)エンドポイントと評価尺度、(6)対象患者の死亡に関する扱い、(7)実施体制と品質マネジメントについてのポリシーを明文化しました。各項目は臨床研究を行う上で欠かせない要素となるため、本ポリシーはこれから始める研究、現在行っているが進捗に問題のある研究を適正に進めていくうえでの指針として活用することができます。
なお、各専門領域における支持療法・緩和治療領域研究のあり方に差異があることを踏まえて、本ポリシーでは共通で用いるべき基本的な考えと、臨床試験を遂行するという観点から必要最小限の定義を示しています。
「支持療法(supportive care for side-effects induced by cancer treatment)」の定義
がん治療(注)で発生する有害事象に対して予防もしくは症状軽減を目的として行う治療
「緩和治療(palliative care for cancer-induced symptoms)」の定義
腫瘍の影響によって生じた苦痛や症状に対して予防もしくは症状緩和を目的として行う治療
(注)がん治療について
上記で示したがん治療とは、直接腫瘍に働きかける抗腫瘍効果を目的とした治療、すなわち、外科治療、がん薬物療法、放射線治療を指しており、抗がん剤治療と区別しています。
今後の展望
「支持療法・緩和治療領域研究ポリシー(総論)」が広く認知され、記載されている内容に準拠した研究が多く立案されることにより臨床研究の質が向上します。本ポリシーの提示により支持療法・緩和治療の臨床研究、臨床試験の実施および標準治療の確立が加速し、がん治療全体の質の向上につながることを期待しています。
また、支持療法・緩和治療は分野が多岐にわたるため個別の事案にも対応できるよう「支持療法・緩和治療領域研究ポリシー(各論)」についても作成を開始しています。
本研究への支援
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
革新的がん医療実用化研究事業
支持/緩和治療領域研究の方法論確立に関する研究
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