がん診療連携拠点病院等院内がん登録
2017年全国集計報告書公表
WHO血液がん分類初集計、院内がん登録全国集計結果閲覧システムで施設別の治療方法別登録数が検索可能に
本リリースのポイント
- がん診療連携拠点病院等の施設のがん登録数をまとめた集計で、本集計で11回目の報告となります。
- 腫瘍情報集計に、新たに胆嚢・喉頭・腎・腎盂尿管を追加しました。
- 血液がんについて、WHO分類2017年に基づき詳細な分類集計をしました。
- 腫瘍情報集計は、「院内がん登録全国集計結果閲覧システム」から閲覧することができます。例えば、がん種・病期別に施設での登録数を検索することができ、最寄りの病院を探す手がかりとしての活用が期待されます。
2017年全国集計
報告書のポイント
1.2017年がん診療連携拠点病院等院内がん登録全国集計
- がんの種類、進行度(病期)、その治療の分布を把握し、国や都道府県のがん対策に役立てること等を目的とし、その基礎資料として院内がん登録のデータを集計(本集計は、2007年診断例より行っており、今回は11回目の報告)。がん診療連携拠点病院等、小児がん拠点病院、都道府県推薦病院、任意で参加を希望された病院、計842施設、1,018,616件のデータを解析しました(2016年診断例収集データ778施設、962,308件)。
- 今回の報告では、WHO2017年血液がん分類に基づいて、院内がん登録全国集計としては初めて血液がんの詳細な分類集計を行いました。さらに、胆嚢、喉頭、腎、腎盂尿管の4部位を新たに加え腫瘍の詳細集計を実施しました。
2.院内がん登録全国集計結果閲覧システムを更新
今回の更新により、従来の施設(自施設初回治療開始例)におけるがん(がん種)別、病期別登録数に加え、治療方法別登録数が閲覧可能となりました。自宅近くの病院を探す一つの手がかりとして活用されることが期待されます。
解説
1.2017年がん診療連携拠点病院等院内がん登録全国集計
概要
各施設で登録された院内がん情報を用いて、年齢、来院経路、発見経緯、部位別の登録数、さらに詳細な腫瘍情報集計としてがん(がん種)別に病期や治療方法などについて、全体、都道府県別および施設別に集計することで、国や都道府県におけるがん対策と、拠点病院をはじめとするがん診療を担う病院のがん診療の実態把握に活用されます。院内がん情報の集計は、がん診療連携拠点病院で2007年診断例より開始し、本集計で11回目の報告となります。
今回の集計では、WHO2017年血液がん分類に基づき、院内がん登録全国集計において初めて血液がんの詳細集計を実施しました。さらに、昨年度公開した院内がん登録全国集計結果閲覧システムで、施設別にがん(がん種)の病期別登録数が閲覧できることに加え、治療方法別登録数の閲覧ができるようシステムを更新しました。
集計方法
集計対象施設
- 1,018,616例842施設
2018年7月時点のがん診療連携拠点病院等437施設、小児がん拠点病院15施設(がん診療連携拠点病院9施設を含む)、都道府県から推薦された343施設、任意で参加した56施設
登録(集計)対象腫瘍
- 悪性新生物および上皮内癌、髄膜または脳、脊髄その他中枢神経系に発生した腫瘍の良性および良悪性不詳の腫瘍、消化管間質腫瘍、卵巣の一部の境界悪性腫瘍。
- 詳細な腫瘍情報集計(がん種):胃、大腸(結腸癌、直腸癌)、肝臓(肝細胞癌、肝内胆管癌)、肺(肺小細胞癌、肺非小細胞癌)、乳房、食道、膵臓、前立腺、子宮頸部、子宮内膜、膀胱、甲状腺(乳頭・濾胞癌、未分化癌、髄様癌)、胆嚢、喉頭、腎、腎盂尿管
(前回からの追加部位:胆嚢、喉頭、腎、腎盂尿管)
集計対象例
- 2017年1月1日から12月31日までの1年間にがんと診断された例
集計項目
診断時住所(都道府県)別、年齢階級別、症例区分別、来院経路別、発見経緯別、部位別の登録数、さらに詳細な腫瘍情報集計としてがん(がん種)の病期別(UICC TNM(国際病期)分類ステージ)、定義に基づく自施設初回治療方法別登録数など
公表対象
各集計表において集計値が10例未満の場合、個人が特定される可能性があることから値を伏せ、「1から3」「4から6」「7から9」で表記
集計のポイント
- がん診療連携拠点病院等、小児がん拠点病院、都道府県推薦病院、任意参加病院を合わせ集計
がん診療連携拠点病院等、小児がん拠点病院、都道府県推薦病院、任意参加病院を合わせた842施設、1,018,616例について集計を行いました。昨年と比較して集計対象施設が64施設、登録数は56,308例増加しました。 - 特別集計として、WHO2017年血液がん分類に基づき、初めて血液がんを詳細に集計
自施設初回治療開始例で51,936例の登録があり、これらについて詳細な分類集計を行いました。 - 胆嚢がん、喉頭がん、腎がん、腎盂尿管がんの詳細集計を追加
院内がん登録全国集計で、初めて胆嚢がん、喉頭がん、腎がん、腎盂尿管がんの詳細集計を行いました。これまでのがん(がん種)別集計と同様に、平均年齢、病期別分布や治療方法別登録数を集計しました。
集計結果のポイント
- 血液がんは、自施設初回治療開始例として登録されていたのは51,936例で、平均年齢は68.4歳でした。最も登録が多かったのは成熟B細胞腫瘍(例:びまん性大細胞型B細胞リンパ種、濾胞性リンパ腫)43.6%、続いて血液細胞(赤血球、血小板、白血球)のもとになる増血幹細胞に異常が起こる骨髄異形成・骨髄増殖性腫瘍・骨髄異形成症候群12.6%でした。年齢によって登録分布に違いがみられ、40歳未満では前駆型リンパ球系腫瘍(例:急性リンパ性白血病(ALL))が最も多く、70歳以上では骨髄異形成・骨髄増殖性腫瘍・骨髄異形成症候群が多い傾向でした。
- 施設種別(がん診療連携拠点病院等、都道府県推薦病院、任意参加病院)に集計対象の平均年齢をみると、がん(がん種)によって若干の差はありますが、全体として任意参加病院や都道府県推薦病院では、がん診療連携拠点病院等よりも平均年齢が高い傾向にありました。
- 喉頭がんをみると、平均年齢は71.7歳(がん診療連携拠点病院等71.6歳、都道府県推薦病院72.7歳、任意参加病院73.3歳)でした。UICC TNM分類治療前ステージ(病期)をみると、I期が39.1%、II期が20.6%でした。治療方法をみると、I期では放射線療法のみが62.8%でした。
2.院内がん登録全国集計結果閲覧システム
- 院内がん登録全国集計結果閲覧システムを更新 2016年から2017年診断例について、従来の施設別がん(がん種)の病期別登録数に加え、治療方法別登録数が閲覧できるようシステムを更新しました。
- 院内がん登録全国集計結果閲覧システムは、施設別(自施設初回治療開始例)にがん(がん種)別登録数等の検索が可能なため、自宅近くの病院を探す一つの手がかりに活用されることが期待されます。
- 掲載サイト:がん情報サービスURL:https://ganjoho.jp
- 「がん診療連携拠点病院等院内がん登録全国集計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_registry.html - 検索項目:報告書付表7以降の自施設初回治療開始例におけるがん(がん種)別、施設別、都道府県別、病期別、治療方法別、年齢階級別、性別登録数(検索可能ながん(がん種):胃がん、大腸がん(結腸癌、直腸癌)、肝がん(肝細胞癌、肝内胆管癌)、肺がん(肺小細胞癌、肺非小細胞癌)、乳がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、膀胱がん、甲状腺がん(乳頭・濾胞癌、未分化癌、髄様癌)、胆嚢がん、喉頭がん、腎がん、腎盂尿管がん)(下線:新規追加)
検索画面
- 「がん」を選ぶ (オプションで臨床病期別集計値も選択可)
- 「施設」を選ぶ (都道府県を選ぶと、当該県内施設が表示、検索対象施設へ追加)
- 「集計表示対象」を選ぶ (治療方法をみたい場合は、治療方法にチェックする)
- 結果表示をクリック
院内がん登録について
「院内がん登録の実施に係る指針」 (平成27年12月15日厚生労働省公布)より
院内がん登録とは
病院において、がん医療の状況を適確に把握するため、当該病院におけるがん患者について、全国がん登録情報よりも詳細な治療の状況を含む情報を収集し、院内がん登録データベースに記録し、および保存すること
院内がん登録データベースの活用により期待される効果
- 病院において、当該病院において診療が行われたがんの罹患、診療、転帰等の情報を適確に把握し、治療の結果等を評価することおよび他の病院における評価と比較することにより、がん医療の質の向上が図られること
- 国立がん研究センターにおいて、院内がん情報等を全国規模で収集し、当該情報を基にしたがん統計等の算出等を行うことにより、専門的ながん医療を提供する医療機関の実態把握に資すること
- 病院や国立がん研究センターにおいて、院内がん情報等を適切に公表することにより、がん患者及びその家族等の医療機関の選択等に資すること
- 行政において、前号に基づき公表された院内がん情報を活用し、がん対策の企画立案やがん医療の分析及び評価を行うことにより、がん対策の充実が図られること
報道関係からのお問い合わせ先
国立研究開発法人国立がん研究センター
郵便番号:104-0045
住所:東京都中央区築地5-1-1
企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
E-mail:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置き換えてください)