男性向けアピアランスケアのガイドブック
「NO HOW TO(ノーハウツー)」公開がん治療中の男性が自分らしい外見で生きることを支援
2020年1月24日
国立研究開発法人国立がん研究センター
発表ポイント
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国立がん研究センターが作成した初めての男性向けアピアランスケアのガイドブックです。
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外見変化により直面する仕事や人間関係、気持ちや生き方に至る様々な問題への対処について、男性患者さんの生の声を多数紹介し、自分で選択・工夫しやすくしました。
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外見の問題に戸惑う男性患者さんが、はじめの一歩を踏み出せるよう、外見ケアに関する基本的な考え方とごく簡単な対処方法も説明しています。
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電子ブックでどなたでもご覧いただけます。
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中央病院で治療を受けてこられた患者さんのご寄付を活用し作成しました。
概要
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区)中央病院は、男性患者さんに向けた、治療中の外見変化への対処に役立つアピアランスケアのガイドブック「NO HOW TO(ノーハウツー)」を作成し、どなたでも閲覧できるよう1月24日よりアピアランス支援センターのウェブサイトで公開します。
本ガイドブックは、“見た目”の問題だけでなく、治療により外見が変化した時に直面する、仕事の問題、家族や身近な人との関係、自分自身の生き方やライフスタイルの揺らぎについての対応を、男性患者さんのインタビューをもとにしたリアルなコメントから作成しています。ただひとつのHOW TOではなく、人それぞれの、ライフスタイルや気持ちにあったやり方を選べるように、ヒントとなるアイデアを多く掲載しました。また、外見の問題に戸惑う男性患者さんが、はじめの一歩を踏み出せるよう、脱毛や皮膚の色素沈着や手術跡など、外見ケアのごく基本的な対処方法を医療者が解説しています。
なお制作にあたっては、アピアランスケアに深い理解と共感を示していただいたがん患者の皆様のご寄付により作成しました。
また、より具体的に眉の描きかたやウイッグの使用方法などを解説する「NO HOW TO」別冊も2月中旬に公開予定です。
アピアランスケアガイドブック「NO HOW TO」について
治療による外見の変化がもたらす苦痛。それは、単に“美しさ”や“今までの姿”を失うことではなく、“自分らしさの喪失”や“自分と周囲との関係性が変化することへの不安”によります。自分の人生のコントロールが効かなくなったような、そんなつらさです。
外見が変化したことで仕事に不利になるのでは?全身の毛を失うことでパートナーとの関係は?子供はどう思うだろうか?など今まで口に出しにくかった、男性患者さんの悩みに対し、経験者のインタビューを元にした様々なヒントをちりばめています。これらを元に、自分で方法を考え、自分らしい生き方を選択することで、再度人生のコントロールを取り戻してもらうことを目指しています。
また、具体的なケアの方法についても、細かな手順や方法ではなく、大きな考え方やアイデアを示しています。例えば、女性に比較し男性の方が罹患数の多い、口腔・咽頭がんや喉頭がんなどの術後の傷のカバーでは、テープや衣服、化粧品でのカバー、あるいはそのままで過ごしてよいなどのヒントを掲載することで、患者さんが決められた一つの方法ではなく、自分の生活や価値観に合わせ自由に選んでよいことをお知らせしています。
女性患者さんに比較し、情報の少ない男性に向けた内容ですが、女性の患者さんが読んでも参考になるよう作成しました。
タイトル
NO HOW TO(ノーハウツー)
ページ数
A5版 全68ページ
発行・公開サイト
国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/appearance/index.html
背景
がん患者さんの外見ケアについては、女性患者向けの情報が主流となっており、男性に向けた情報は非常に少ないのが現状です。また、その数少ない情報も、ウイッグや化粧品などの商品説明が多く、“隠す”“今まで通り装う”、が前提となっています。
しかし、さまざまな研究により、治療による外見変化の苦痛は、単に”外見が変わったこと“だけが問題ではなく、外見の変化に伴う”周囲との人間関係“や”仕事や社会活動への影響“、”自尊心の低下“など心理社会的な問題を含むことがわかってきました。つまり、外見が変化したことから周囲に病気が露見し、かわいそうな人だと思われて、これまで対等だった人間関係が変化してしまうのではないか、という不安が根底にあります。そのため、単に外見をカモフラージュするだけでは、患者さんは安心した療養生活を送れないことも少なくありません。
また男性では、外見をケアする美容的な方法に親和性がない人も多く、保湿剤や日焼け止めを肌につけることでさえ、抵抗感がある人もいます。このような患者さんでも、外見が変化しても安心して暮らせるよう、今回は単に外見をケアするHOW TOではなく、自分らしく生活できるような様々なヒントを準備しました。
アピアランス支援センターについて
ガイドブック「NO HOW TO」を編集・発行した中央病院のアピアランス支援センターは、「がんやがん治療による外見の変化がつらい、不安だ」と感じている患者さんの悩みを解決する部門です。医師や看護師、薬剤師、心理師、美容専門家などが連携し、治療中も安心して過ごせるよう、「臨床」「研究」「教育」の3本柱で患者さんのサポートを行っています。
中央病院1階に設置されたセンター内には、ウィッグ(男性・女性)や皮膚変色をカバーする化粧品、爪の変化に対処するマニキュアなどだけでなく、人工乳房やエピテーゼなど外見の変化に対応するさまざまな物品が揃っており、自由に見たり、試したりすることができます。
また、「がん患者に対するアピアランスケアの手引き2016年版」がん研究開発費(2014年)、「分子標的治療薬によるざ瘡様皮膚炎に対する標準的ケア方法の確立に関する研究」AMED研究費(2017年から2018年)、「がん患者に対するアピアランスケアの均てん化と指導者教育プログラムの構築に向けた研究」厚労科研費(2017年から2019年)など、外見のケアに関する科学的な検証から効果的な患者支援システム作りまで、しっかりと研究ベースで取り組んでいます。
そして、知りえた知見を広め、適切な患者支援が全国に行き渡るよう、2012年より全国のがん診療拠点病院の医療者を対象に「アピアランスケア研修会基礎編・応用編」を行っています。2019年1月現在、応用編を修了した医療者550名が全国にいます。さらに全国の医療者に広めるため、現在、e-learning教材も開発中です。
報道関係からのお問い合わせ先
国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
電話番号:03-3542-2511(代表) FAX:03-3542-2545 Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置き換えてください)