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かかりつけ精神科での個別の検診勧奨で、統合失調症患者さんの大腸がん検診受診率が大きく改善精神障害を有する患者さんでのがん検診受診率の格差解消に期待

2021年8月3日

国立大学法人 岡山大学
国立研究開発法人 国立がん研究センター
国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部
日本がん支持療法研究グループ
国立大学法人 島根大学

発表のポイント

  • がん検診受診率は未だ十分に高いとは言えず、その中でも、精神障害を有する患者さんは一般住民と比べて更に受診率が低いことがわかっており、「格差」が生じたままでした。
  • かかりつけ精神科医療機関で行う個別のがん検診勧奨が、統合失調症患者さんの大腸がん検診受診率を向上させることを臨床試験で確認しました。
  • 本勧奨法の普及を進めることで、がん検診受診率の向上(格差是正)とがんの早期発見が期待されます。   

岡山大学病院精神科神経科の藤原雅樹助教と山田了士教授ら、国立がん研究センター島津太一室長ら、島根大学の稲垣正俊教授らの共同研究グループは、かかりつけ精神科医療機関の外来で行う個別のがん検診勧奨法が、市町村によるがん検診の案内のみと比べて、統合失調症患者さんの大腸がん検診受診率を向上させることを確認しました。統合失調症患者さんに対するがん検診勧奨法の有効性を調べた研究はこれまでになく、世界でも初めての成果です。

わが国では地域住民全体のがん検診受診率も未だに低いことが問題になっています。地域住民のがん検診受診率を高めるためには、とりわけがん検診受診率の低い人々に個別に対応していく必要があります。その中でも特に、精神障害を有する患者さんはがん検診受診率が低く、その恩恵を受けることができずに、格差が解消されないままの状態が続いています。この格差の解消はわが国に限らず、世界的な課題です。本勧奨法の普及を進めることで、精神障害を有する患者さんのがん検診受診率向上(格差解消)、がんの早期発見が期待されます。

本研究結果は、8月3日(火曜日)午前9時(日本時間)、国際医学誌「Acta Psychiatrica Scandinavica」のオンライン版に掲載されます。

 発表内容

現状

精神障害を有する患者さんは一般住民と比べてがん検診受診率が低く、その格差の解消は世界的な課題です。わが国において精神障害を有する方は419.3万人を数えますが、現在行われている一般的ながん検診の勧奨方法では、がん検診受診率に格差が生じたままであることがわかっています。また、この格差は統合失調症患者さんで特に大きいことが知られています。しかしながら、統合失調症患者さんのがん検診受診率を向上させるための勧奨法として有効性が確認された方法はこれまでにありませんでした。

研究成果の内容

今回の研究では、精神科外来へ通院中の統合失調症の患者さんを、通院先の外来スタッフが大腸がん検診の説明や個別に応じた受診手続きの説明・支援を実施した群(85人)と、市町村からのがん検診の案内のみを受けた群(85人)に分け、勧奨法の効果を検証する臨床試験を実施しました。実施した年度における大腸がん検診の受診率を比較したところ、市町村からの案内のみを受けた群は11.8%に留まったのに対して、個別の勧奨を実施した群では47.1%となり、有意に大腸がん検診を受診する人が多くなることが示されました。
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社会的な意義

本研究の勧奨法(実装戦略)は、実装科学(注1)の手法で開発されました。科学的に有効性が示された勧奨法が普及することで、精神障害を有する患者さんのがん検診受診の格差解消が期待されます。

論文情報

論文名

Encouraging participation in colorectal cancer screening for people with schizophrenia: A randomized controlled trial
「精神科臨床場面におけるがん検診勧奨法のランダム化比較試験」

雑誌名

Acta Psychiatrica Scandinavica

著者

藤原雅樹、山田裕士(岡山大学)、島津太一(国立がん研究センター)、児玉匡史、宋龍平(岡山県精神科医療センター)、松下貴紀、吉村優作、堀井茂男(慈圭病院)、藤森麻衣子、高橋宏和(国立がん研究センター)、中谷直樹(東北大学)、掛田恭子(高知大学)、宮路天平(東京大学)、樋之津史郎(札幌医科大学)、原田馨太、岡田裕之(岡山大学)、内富庸介(国立がん研究センター)、山田了士(岡山大学)、稲垣正俊(島根大学)

DOI

10.1111/acps.13348

URL

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/acps.13348 (外部サイトにリンクします)

研究資金

本研究は、厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)(H30-がん対策-一般-006、精神障害患者の低いがん検診受診率を向上させる勧奨法の開発および標準的ながん治療・ケアへのアクセスを改善するための課題の把握と連携を促進する仕組みの構築、研究代表:稲垣正俊)の支援を受けて実施しました。

また、本研究は、日本がん支持療法研究グループ(J-SUPPORT)(外部サイトへリンクします)、および健康格差是正のための実装科学ナショナルセンターコンソーシアム(N-EQUITY)国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部[Japan Health Research Promotion Bureau:JH](外部サイトへリンクします)実装科学推進のための基盤構築事業)の支援を受けています。

用語説明

注1:実装科学

エビデンスに基づく介入を、医療機関、医療保険者、都道府県、市町村などでの日々の活動の中に効果的、効率的に取り入れ、連続性をもって根付かせる方法(実装戦略)を開発、検証する学問領域のこと。

報道関係からのお問い合わせ先

国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室

〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
電話番号:03-3542-2511(代表) FAX:03-3542-2545
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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