国立がん研究センターに「がん対策研究所」を開設すべての人々が健康と尊厳を持って暮らせる社会の実現に向けた組織改革
2021年9月1日
国立研究開発法人国立がん研究センター
発表のポイント
- すべての人々が健康と尊厳を持って暮らせる社会の実現を目指す新組織「がん対策研究所」を2021年9月1日に開設しました。
- 「がん対策研究所」は、「社会と健康研究センター」と「がん対策情報センター」を統合することで両センターが持つ専門性を集結・再編し、高度化・多様化が求められるがん対策を推進し、社会のニーズに機動的に対応します。
- がんや医療に関する情報が氾濫する中、国民に確かな情報を届けるため、理事長を本部長とする対策本部「がん対策情報センター本部」を設置し、国立がん研究センター全部門の情報発信機能を統括する体制を整備します。
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区)は、すべての人々が健康と尊厳を持って暮らせる社会の実現を目指す新組織「がん対策研究所(所長:中釜 斉、副所長:祖父江 友孝、英語名:National Cancer Center Institute for Cancer Control)」を2021年9月1日に開設しました。
近年、ゲノム解析をはじめとする科学技術の向上や高齢化等の進展を背景に、がん対策に対する社会のニーズは急速に高度化・多様化しています。さらに、がんや医療に関する情報も氾濫するなか、エビデンスに基づく確かな情報提供の重要性も増しています。
「がん対策研究所」は、このような社会のニーズに機動的に対応するため、公衆衛生・社会医学研究を担ってきた「社会と健康研究センター」と、がんの情報提供・がん対策支援を担ってきた「がん対策情報センター」を統合・再編し、両センターの疫学、行動科学、実装科学、サバイバーシップ、医療経済評価、情報発信、国際保健など多様な専門性を集結させ、研究開発から政策提言、社会実装まで一貫し、迅速に実現できる体制を整えた組織です。
また、国民に確かな情報を届けるため、「がん対策情報センター本部(本部長:理事長)」を設置し、国立がん研究センター全部門の情報発信機能を統括する体制を整備します。
-
左から)国立がん研究センター がん対策研究所
研究統括(予防・検診研究担当)代理 井上 真奈美
研究統括(支持・サバイバーシップ研究担当) 内富 庸介
所長(国立がん研究センター 理事長) 中釜 斉
副所長 祖父江 友孝
事業統括 若尾 文彦 -
左から)厚生労働省 医政局長 迫井 正深
厚生労働省 健康局長 正林 督章
国立がん研究センター 理事長 がん対策研究所長 中釜 斉
背景
日本のがん対策は、1984年に策定された「対がん10ヵ年総合戦略」を始めとする10か年戦略、2006年に成立した「がん対策基本法」とそれに基づく「がん対策推進基本計画」の下で進められてきました。国立がん研究センターは、2004年に「がん予防・検診研究センター」を、2006年に「がん対策情報センター」を開設し、科学的根拠に基づくがんの予防、検診、モニタリング、情報提供などの分野を担ってきました。その後「がん対策情報センター」の組織拡充、2016年の「社会と健康研究センター」開設により、がん患者・サバイバーへの支援、支持療法を含めたがん医療の支援を組み入れ、社会的、経済的、倫理的な諸問題に関する研究と事業を展開してきました。
一方で、ゲノム解析をはじめとする科学技術の向上や高齢化の進展を背景に、社会医学系の研究・事業に求められる役割はますます重要になっています。がんの予防のみにとどまらず健康長寿を実現するためのPPI疾患横断的な研究や、ゲノム情報を用いた個別化医療・個別化予防に資する研究、がんとの共生を実現するための研究、地球規模での健康課題を解決するための研究が社会から求められています。また、患者・市民参画(Patient and Public Involvement:PPI)による、より実効性のある研究立案・政策提言が必要です。さらに、国民が信頼できるがん対策を推進するためには、情報や統計等のデータを活用した証拠に基づく政策立案(Evidence-Based Policy Making:EBPMM)注が必要であり、政府においても2018年に各省庁にEBPM推進組織が設立され、試行的な運用が開始されているところです。
このような高度化・多様化する社会のニーズを的確に捉え、積極的かつ機動的に課題解決に向けた政策提言をしていくためには、社会医学系の研究者の多様な専門性を結集し、組織横断的プロジェクトとして、研究開発から政策実装までを一貫して実施できる体制が必要となります。
そこで、社会医学系の研究・事業に携わる部署を統合し、研究・事業の遂行機能を向上、効率化することを目的に、「がん対策研究所」を2021年9月1日に開設することにしました。
注:(参考)「統計改革推進会議 最終取りまとめ」(平成29年5月19日統計改革推進会議決定) (外部サイトにリンクします)
組織改革の概要
「がん対策研究所」は、国立がん研究センターの社会医学系の研究・事業に携わる既存の部署を統合し、研究・事業の遂行機能を向上、効率化することを目的に発足した新組織です。母体となった、公衆衛生・社会医学研究を担ってきた「社会と健康研究センター」及びがんの情報提供・がん対策支援を担ってきた「がん対策情報センター」の組織・人員は、全てがん対策研究所に移行します。
がん対策情報センターが運営してきた「がん情報サービス」、企画・編集を行ってきた「がん情報編集委員会」については、がん対策研究所がん情報提供部が所管することになりますが、国民の情報ニーズの高度化・多様化に適切に対応していくためには当センターの総力を挙げて情報発信する必要があります。このため、「がん対策情報センター本部(本部長:理事長)」を設置し、センター各部門(研究所、中央病院、東病院等)の情報発信機能を組織横断的に統括する体制を整備します。「がん対策情報センター本部」は、最新の知見に基づく情報コンテンツを「がん情報編集委員会」に提供し、がん情報サービスの充実を図ります。
「がん対策研究所」の理念・使命・行動方針
「がん対策研究所」は、「すべての人が、健康と尊厳をもって暮らせる社会を実現する」を理念とし、「社会と協働して、エビデンスを創り、がん対策につなげ、すべての人に届ける」ことを大きな使命としています。具体的には、1.世界を変える新たな科学的知見を創る、2.社会のニーズに応え、科学的知見を結集し、がん対策につなげる、3.すべての人に確かな情報を届け、がん対策の実装とその支援を行う、という3つの柱を使命として掲げ、これらを確実に実現していきます。
また、理念・使命を実現するため、「がん対策研究所」に所属する研究者等が実践すべき行動方針を以下のとおり定めました。組織統合に合わせて、所属する研究者等のマインドセットの転換を図ります。
これらの行動方針に基づき、患者・市民のニーズを取り入れながら、研究・事業を着実に進めていくことで、エビデンスの創出からがん対策・社会実装に至るまでのリーダーシップ(研究開発力)、国の健康戦略への積極的関与(政策提言力)、新たに発生する喫緊の課題への迅速かつ柔軟に総力で取り組める体制(進行・喫緊課題対応力)、国際研究力の強化(国際研究力)、高い専門性と俯瞰的視野を備えた人材を育成できる体制(人材育成力)を強化します。
組織横断的プロジェクトの実践
EBPMを実践するためには、当センターの社会医学系の研究者の多様な専門性(疫学、行動科学、実装科学、サバイバーシップ、医療経済評価、情報発信、国際保健など)を結集し、国立がん研究センターの各部門(研究所・先端医療開発センター・中央病院・東病院・がんゲノム情報管理センター等)とも連携する必要があります。このため、これまでの専門部署単位での活動方式から、プロジェクト単位での大規模な活動方式に重点を移します。
組織横断的プロジェクトの企画・運営・評価
組織横断的プロジェクトでは、社会のニーズを的確にとらえ、課題解決に向けた出口戦略を明確にした上で、Plan(提案・企画)、Do(実施)、Check(評価)、Action(改善)のPDCAサイクルを回していきます。
組織横断的プロジェクトの企画・運営・評価を行うための組織として、副所長の下に企画室を設けます。
報道関係からのお問い合わせ先
国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp