成人年齢とたばこについての世論調査結果 成人18歳、喫煙20歳年齢制限下の意識や課題を調査喫煙の20歳維持は認識されているものの、若年からの喫煙は健康影響が大きいことについて、普及啓発に課題があることが明らかになりました
2022年5月31日
国立がん研究センター
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)は、5月31日の世界禁煙デーに合わせ、成人年齢とたばこについての世論調査結果をウェブサイトに公開しました。
たばこによる健康への悪影響は科学的に明白です。特に若年層では、健康面への悪影響が大きくなります。また、たばこは本人の健康を損なうだけでなく、家族など周りの人の健康にも悪影響を及ぼします。
本年4月より民法改正に伴い、成人年齢が18歳に引き下げられました。しかしながら、喫煙については健康面への影響が大きいなどの理由から、20歳制限が維持されています。
そこで、国立がん研究センターは、成人年齢とたばこについて、若年の喫煙が健康へ大きな悪影響をおよぼすことに関する認知度、たばこを吸いたいと思う(思った)理由と喫煙行動、たばこ対策、特に受動喫煙対策に関する国民の意識や認識の把握を目的として本調査を行いました。
成人年齢とたばこに関するアンケート調査(報告書)PDF:807KB
調査結果のポイント
若年の喫煙は健康面への悪影響が大きいことに関する認識
- 成人年齢が18歳に引き下げられても、喫煙は20歳からが維持されていることについて知っていた割合は68.6%でした。
- 低年齢からの喫煙について、健康へのリスクがあるという認識は高くなく、普及啓発に課題があることがわかりました。
20歳になったときに吸いたいと思った割合と理由
- 「20歳になったときにたばこを吸ってみたいと思った」と回答した喫煙者は61.3%、非喫煙者は20.5%と、喫煙に対する意識が大きく異なることが浮き彫りになりました。
- たばこを吸ってみたいと思ったきっかけに関する回答から、家族、友人、周りの人がたばこを吸っていると、自分もたばこを吸いたいと思うようになることが読み取れました。
受動喫煙対策に関する認識や意向
- たばこの煙を不快と感じる割合は高く、非喫煙者では約9割で、喫煙者でも半数近くの人が不快と感じていることがわかりました。
- 非喫煙者が、公共空間での喫煙の一律禁止を求める割合は46.0%で、規制強化は29.3%と高い結果でした。一方、喫煙者では意見が割れ、禁止や規制強化を求める割合は約3割にとどまり、非喫煙者と喫煙者では意向に違いがあることがわかりました。
1.調査概要
本調査は、たばこを取り巻く実態や対策に関する国民の意識を把握することを目的にしています。具体的なたばこ対策の検討や実施にあたっては、国民世論の動向だけでなく、代替案やコスト、政策効果などを政策の特性に応じて比較衡量する必要があります。したがって本調査結果は、あくまで政策検討のための参考の一つとしての位置づけです。
- 実施期間 令和4年4月22日(金曜日)から4月27日(水曜日)
- 実施方法 インターネットによるアンケート調査(株式会社ネオマーケティングへ委託)
- 回答者(性別・年代別の回収数は報告書3ページ表1参照)
成人2000名のうち、喫煙者(毎日吸っている/時々吸う日がある)1,000名、
非喫煙者(吸わない)1,000名と18歳・19歳40名の計2,040名
注:20歳以上については、性別、年齢別、喫煙状況の実際の比率に合わせて結果を調整 - アンケート調査の回答者について(参考)
上述の調査概要のとおり、本調査はインターネット・アンケート調査を用いて実施しています。
「インターネット調査」には、(1)インターネット画面上で回答する、(2)調査対象が登録モニターである、という二つの特徴があります。前者は「測定誤差」、後者は「サンプリング・バイアス」の規定要因となり、調査結果の誤差に影響を与える可能性があります。そこで委託先に、広範なカバレッジの中から確率的に回答者を集める方法が採られていること、モニターの募集、管理が適切になされ、質の確保がなされていることを確認しています。また、サンプリング・バイアスについては、性別、年齢別、喫煙状況の比率にあわせてウェイトバックを行い調整しています(調整の詳細については成人年齢とたばこに関するアンケート調査(報告書)3ページ表1、図1のとおり)。
2.主な結果
1)18歳・19歳の成人は喫煙が禁止されていることの認知状況
- 20歳以上の全体では、18歳・19歳の成人は、喫煙が禁止されていることを「知っていた」と回答した割合が68.6%でした(図1)。
- 18歳および19歳では、喫煙が禁止されることを「知っていた」と回答した人は40人中36人(90.0%)でした。
図1 【20歳以上全体】18歳や19歳の成人は、喫煙が禁止されていることの認知状況
2)喫煙開始年齢と健康リスクの認知状況(図2)
- 喫煙開始年齢と健康リスクについて知っていることを複数選択する質問では、最も選択割合が多かった「喫煙開始年齢が低いと、喫煙年数が長くなる」でも44.9%と、半数に満たない結果でした。
- 喫煙開始年齢が低いと健康へのリスクが高くなることについて、一般的に認識が広まっているとは言えない結果でした。低年齢からの喫煙リスクについて、普及啓発に課題があることがわかりました。
図2 【20歳以上全体】喫煙開始年齢に関連して、知っていること(複数選択可)
3)20歳になったときに、たばこを吸ってみたいと思った割合
- 「20歳になったとき、たばこを吸ってみたいと思った」と回答した人は、20歳以上全体で27.3%でした。
- 喫煙状況別にみると、喫煙者では61.3%、非喫煙者では20.5%と大きな差がみられました(図3、4)。このことから、20歳になったときにたばこを吸ってみたいと思ったかどうかが、その後の喫煙状況に影響を与える可能性があることがわかりました。
図3 【20歳以上喫煙者】
図4 【20歳以上非喫煙者】
4)20歳になったときにたばこを吸ってみたいと思ったきっかけ(図5)
- 「家族がたばこを吸っていて、たばこが身近にあったから」を選択した回答が最も多く52.0%でした。続いて、「友人や知人にすすめられたから」37.3%、「たばこを吸っている人を見て、真似をしたいと思ったから」26.4%の順に割合が高く、「20歳になって得られる権利を行使したいから」は12.6%、「たばこの広告を見て、たばこに興味や関心を持っていたから」は11.5%と、それほど高い割合ではありませんでした。
- 以上の結果から、今後、若年層の喫煙開始を防ぎ、喫煙率を下げるためには、子どもの周りでたばこを吸わない、たばこを見せないことが重要と考えます。
図5 【20歳以上全員】20歳になったとき、たばこを吸ってみたいと思ったきっかけ(複数選択可)
5)たばこの煙についての認識(図6、7、8)
- たばこの煙について、20歳以上全体で「不快に思う」と回答した人は半数以上の55.6%でした。「どちらかといえば不快に思う」26.1%とあわせると、8割以上(81.7%)の人がたばこの煙を不快に感じていることがわかりました。
- 喫煙状況別にみると、喫煙者でも周りの人のたばこの煙を「不快に思う」16.2%、「どちらかといえば不快に思う」32.2%と、あわせて約5割(48.4%)の人が不快に感じていました。非喫煙者は、「不快に思う」63.3%、「どちらかといえば不快に思う」24.9%と、あわせて約9割(88.2%)と高く、喫煙状況によって認識が異なることがわかりました。
図6 【20歳以上全員】周りの人のたばこの煙について
図7 【喫煙者】周りの人のたばこの煙について
図8 【非喫煙者】周りの人のたばこの煙について
6)公共空間での受動喫煙対策についての認識
- 20歳以上全体では、「受動喫煙のない社会をめざし、公共空間での喫煙を一律に禁止すべきである」という回答が最も多く41.4%でした。続いて、「受動喫煙を減らすように、公共空間の喫煙に対する規制を強化すべきである」が27.0%でした。改正健康増進法が完全施行となって2年ですが、一律の禁止を含めて規制の強化を今後推進すべきという意見が多い結果でした。
- 喫煙状況別にみると、喫煙者では、「喫煙者の気配りや配慮にゆだね、公共空間の喫煙に対する規制は緩めるべきである」が31.3%と最も多く、次に「喫煙はあくまで個人の自由であり、公共空間の規制はなくすべきである」が21.4%と、この2つの回答をあわせて過半数となっていました。その一方で、「受動喫煙のない社会をめざし、公共空間での喫煙を一律に禁止すべきである」や「受動喫煙を減らすように、公共空間の喫煙に対する規制を強化すべきである」の禁止や規制の強化を求める意見も25.4%ありました(図9)。非喫煙者では、「受動喫煙のない社会をめざし、公共空間での喫煙を一律に禁止すべきである」46.0%と「受動喫煙を減らすように、公共空間の喫煙に対する規制を強化すべきである」29.3%をあわせると75.3%にも達し、禁止や規制の強化をさらに推進することを強く求める意見が多いことが示唆されました(図10)。
図9 【喫煙者】公共空間での受動喫煙対策について
図10 【非喫煙者】公共空間での受動喫煙対策について
3.まとめ
- 本調査は、国民の意識を把握することを目的として、2020年4月にインターネット調査により実施し、2,040名(20歳以上の喫煙者1,000名、非喫煙者1,000名、18歳・19歳40名)の回答を得ました。
- 喫煙開始年齢と健康リスクについての認知度・理解度は、全ての項目で半数の5割に満たず、健康上の悪影響についての普及啓発が重要な課題とわかりました。
- 20歳になったときにたばこを吸いたいと思ったかどうかは、喫煙者と非喫煙者で大きく割合が異なる結果が示されました。20歳になったときにたばこを吸ってみたいと思ったかどうかが、その後の喫煙状況に影響を与える可能性があることがわかりました。
- 20歳になったときにたばこを吸ってみたいと思ったきっかけは、「家族がたばこを吸っていて、たばこが身近にあったから」を選択した回答が最も多い結果でした。今後、若年層の喫煙開始を防ぎ、喫煙率を下げるためには、子どもの周りでたばこを吸わない、たばこを見せないことが重要と考えます。
- 公共空間での受動喫煙対策についての認識は、20歳以上全体で、一律の禁止を含めて規制の強化を今後推進すべきであるという意見が最も多い結果でした。公共空間での喫煙禁止や規制の推進は、たばこを吸う行為を見せないことにもつながり、若年層がたばこを吸ってみたいと思うきっかけの減少にもつながると予想されます。
- 今後、さらにこの調査を発展させ、以下のような調査研究を行うことで、喫煙開始年齢の低年齢化を抑え、喫煙率を下げるための具体的な政策提言へつなげることができると考えます。
- 喫煙開始年齢と健康リスクについての普及啓発活動の推進および効果検証
- 受動喫煙対策による喫煙開始の抑制や喫煙率低下へのインパクト評価
- 各種たばこ対策による喫煙開始の抑制や喫煙率低下へのインパクト評価
- 喫煙者、とりわけ若年層の喫煙者への禁煙介入方法および効果の検討
お問い合わせ先
本調査に関するお問い合わせ先
国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部 たばこ政策情報室
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
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その他全般についてのお問い合わせ先
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