院内がん登録2021年全国集計速報値 公表
2021年のがん診療連携拠点病院等におけるがん診療の状況
2022年12月9日
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)は、国が指定するがん診療連携拠点病院等(以下、拠点病院)と小児がん拠点病院(以下、小児拠点)から、2021年1月1日から12月31日の1年間にがんと診断または治療された患者さんの院内がん登録データを収集し集計、速報値として報告書にまとめ、ウェブサイトで公表しました。
国立がん研究センター「がん情報サービス がん統計」報告書ページ
結果のポイント
- 2018年から2021年に、院内がん登録データの提出があった拠点病院453施設と小児拠点6施設のうち、過去4年間を通してデータ提出のあった計455施設を対象に、2021年におけるがん診療について分析を行いました。
- 2021年症例の院内がん登録数は、2018と2019年症例の2カ年平均登録数と比較したところ、2020年症例は95.6%と登録数の減少がみられましたが、2021年症例は101.1%と2カ年平均登録数と同程度でした。
- がん検診推奨部位(胃、大腸、肺、乳房、子宮頸部)を、発見経緯別に検診発見例と非検診発見例に分け、2021年症例を2018と2019年症例の2カ年平均登録数と比較したところ、検診発見例は胃、大腸、肺、子宮頸部で減少、乳房はやや増加していました。
- がん検診推奨部位(胃、大腸、肺、乳房、子宮頸部)の主な組織型におけるstage(病期)別登録数について、2021年症例を2018と2019年症例の2カ年平均登録数と比較したところ、多くのがん種で早期がんが減少しており、発見経緯別の検診発見例が減少している結果と合わせて、検診受診率と精密検査受診率の推移の確認が今後必要です。
- 2020年は前年と比較し院内がん登録数が減少しましたが、2021年にその減少分が増加したと考えることは難しく、2022年以降も継続的に分析を行う必要があります。
院内がん登録2021年全国集計速報
概要
この度、新型コロナウイルス感染症の流行下におけるわが国のがん診療の実態を少しでも早く国民のみなさまへ情報提供するため、データ収集が早期に完了した国が指定する拠点病院と小児拠点の2021年症例院内がん登録データを分析し、その結果を速報値としてまとめました。
院内がん登録2021年全国集計速報値では、新型コロナウイルス感染症流行下におけるがん診療の実態について国が推奨するがん検診の対象部位である、胃、大腸、肺、乳房、子宮頸部を中心に分析した結果を報告します。
集計方法
収集対象
2022年6月時点の拠点病院453施設、小児拠点6施設において、2021年1月1日から12月31日までの1年間にがんと診断または治療された症例
集計対象 拠点病院449施設、小児拠点6施設 計455施設806,589症例
2022年9月2日までに院内がん登録データを提出した、拠点病院453施設、小児拠点6施設の計459施設810,154症例のうち、2018年から2021年の4年間を通して院内がん登録データの提出があった拠点病院449施設と小児拠点6施設の計455施設806,589症例が集計対象
集計項目
- 症例区分別登録数の推移
- 診断月別登録数の推移
- 発見経緯別登録数の推移
- UICC TNM分類総合stage(病期)別登録数の推移
- 治療月別治療方法登録数の推移
集計結果
拠点病院および小児拠点455施設の806,589症例を2018と2019年の2カ年平均登録数(以下、2カ年平均登録数または2カ年平均)と比較したところ、2020年症例は95.9%と減少していたが、2021年症例は101.1%と2018年-2019年症例と同程度であった(図1)。(報告書10ページ)
<図1>2018年と2019年の2ヵ年平均と2020年、2021年の登録数との比
2020年1月から2021年12月までの2年間に、新規にがんと診断された登録数をみると、最も減少したのは最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月から5月で、2020年7月から8月と3回目の緊急事態宣言が発出された2021年5月と7月にやや減少していた。しかし、2回目の緊急事態宣言が発出された2021年1月から3月は減少がみられなかった。新型コロナウイルス感染症患者数が増加すると、新規にがんと診断される登録数がやや減少する傾向であった。しかし、2021年9月以降は新型コロナウイルス感染患者数が増加しても新規のがん登録数は減少しなかった(図2)。
参考として、2015年から2021年の7年間を通して院内がん登録データの提出があった施設にさらに限定して登録数の推移を観察すると、2020年は減少が観察されたものの、2021年の登録数は2019年と同程度であり、2020年の減少分が上乗せされている様子は見受けられなかった(図3)。(報告書13ページ、19ページ)
<図2>2020から2021年の診断月別登録数の推移(2018年と2019年の2ヵ年平均と比較)
<図3>2015年-2021年の年間登録数の推移
発見経緯別に検診発見例と非検診発見例に分け、2021年症例を2カ年平均登録数と比較したところ、検診発見例は98.8%、非検診発見例は102.2%であった。これをがん検診推奨部位別に検診発見例をみると、胃は87.3%と大きく減少し、大腸、肺、子宮頸部はやや減少(96.6から97.8%程度)、乳房は105.7%とやや増加傾向であった。非検診発見例は、胃のみが92.1%と減少していた(表1)。(報告書P23から25)
<表1>2021年症例発見経緯別登録数の2018年-2019年2ヵ年平均登録数との比
がん検診推奨部位 | 検診発見例 | 非検診発見例 |
---|---|---|
胃 | 87.3% | 92.1% |
大腸 | 96.6% | 101.6% |
肺 | 97.8% | 102.9% |
乳房(女性) | 105.7% | 107.8% |
子宮頸部 | 97.5% | 103.0% |
部位別病期別登録割合について、2021年症例を2カ年平均登録数と比較したところ、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんは、stage0・1がやや減少(1%未満)しており、全体的に、早期がんの割合が2021年も低い傾向であった(表2)。(報告書P27-28)
<表2>部位別病期別登録割合(2018年-2019年2ヵ年平均登録数と比較)
胃がん | stage1 | stage2 | stage3 | stage4 |
---|---|---|---|---|
2021年と2カ年平均との差 | -0.8% | 0.0% | 0.1% | 0.5% |
大腸がん | stage0 | stage1 | stage2 | stage3 | stage4 |
---|---|---|---|---|---|
2021年と2カ年平均との差 | -0.9% | -0.1% | 0.0% | 0.5% | 0.5% |
乳がん | stage0 | stage1 | stage2 | stage3 | stage4 |
---|---|---|---|---|---|
2021年と2カ年平均との差 | 0.1% | -0.6% | 0.3% | 0.0% | 0.2% |
子宮頸がん | stage0 | stage1 | stage2 | stage3 | stage4 |
---|---|---|---|---|---|
2021年と2カ年平均との差 | 0.3% | -0.9% | -0.4% | 0.9% | 0.1% |
治療月別治療方法登録数を部位別にみると、胃がんと子宮頸がんでは、外科的治療・鏡視下治療の割合が2カ年平均登録数より減少しており、胃がんは2.2%、子宮頸がんは3.1%減少していた。また、膵がんでは、化学療法実施割合が2カ年平均登録数より2.9%増加していた。(報告書P44-45)
注1)「2カ年平均登録数」「2カ年平均」とは、2018年-2019年症例の2カ年登録数の平均を指す
注2)がん検診推奨部位とは、胃、大腸、肺(または非小細胞性肺がん)、乳房、子宮頸部を指す
注3)治療方法とは、外科的治療+鏡視下治療(胸腔鏡治療または腹腔鏡治療)、内視鏡的治療、放射線治療、化学療法、内分泌療法を指す
報道関係からのお問い合わせ先
院内がん登録全国集計速報値について
国立研究開発法人 国立がん研究センター
がん対策研究所 がん登録センター 院内がん登録分析室
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
ダイヤルイン:03-3547-5201(内線1600)
メールアドレスl:hbcr_analysis●ml.res.ncc.go.jp(●を@に置き換えください)
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担当:がん対策研究所 がん登録センター 院内がん登録室 高橋ユカ
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