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国立がん研究センター

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アジア太平洋地域の肺がん遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-AP」を開始新たな大規模肺がん遺伝子スクリーニング基盤を構築し、アジア太平洋地域における個別化医療の確立を目指す

2022年12月21日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • アジア太平洋地域の進行・再発非小細胞肺がん患者さんを対象にした、遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-AP」を開始しました。
  • LC-SCRUM-APには、タイ、マレーシア、ベトナム、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、台湾の約20施設が参加します。
  • アジア太平洋地域における、遺伝子スクリーニング基盤を構築することで、遺伝子変化に基づいた個別化医療の確立を目指します。

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市、以下東病院)は、企業およびアジア太平洋地域の国々の協力を得て、アジア太平洋地域の肺がん遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-AP(エルシー・スクラム・エーピー)」 (研究代表者:東病院 呼吸器内科長 後藤 功一)を開始しました。

東病院は、2013年より全国の医療機関や製薬企業と共同で肺がんの遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-Asia(エルシー・スクラム・アジア)」*1を推進し、これまで様々な分子標的薬(様々な遺伝子変化を標的とした薬剤)や遺伝子診断薬の開発、臨床応用に貢献してきました。今回新たに開始したLC-SCRUM-APは、タイ、マレーシア、ベトナム、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、台湾の約20施設の医療機関が参加する、大規模遺伝子スクリーニング基盤となり、アジア太平洋地域における肺がんの診断薬・治療薬の開発に貢献し、個別化医療の確立を推進します。

背景

近年、次世代シーケンス法(next generation sequencing ; NGS)などの遺伝子解析技術の進歩により、個々のがん患者さんの遺伝子解析結果に基づいて有効な治療を選択する、個別化医療が確立してきました。肺がんでは、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF遺伝子変異、NTRK融合遺伝子、MET遺伝子変異、RET融合遺伝子、KRAS遺伝子変異を標的とする治療薬が国内で承認されています。さらに、様々な遺伝子変化を標的とする治療開発が盛んに行われており、今後、肺がんにおける個別化医療の確立は更に加速することが予想されます。しかし、EGFR遺伝子変異以外の遺伝子変化の頻度は非小細胞肺がんの1~3%と希少であり、臨床試験に基づいた治療開発を行うためには、国内だけでなく、他国の協力も得た大規模な国際的遺伝子スクリーニング基盤の確立が必要です。

研究概要

LC-SCRUM-APにはアジア太平洋地域(タイ、マレーシア、ベトナム、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、台湾)の約20施設の医療機関が参加します。東病院は株式会社Precision Medicine Asia(PREMIA 社)の協力のもと、2022年10月31日にタイ、マレーシア、台湾の施設の立ち上げを行いました。今後さらに他のアジア諸国への拡大とともに、臨床・ゲノムデータベースを集約した国際的な大規模肺がんデータベースの構築を目指します。

アジア太平洋地域の遺伝子スクリーニング基盤を構築することで、アジア太平洋地域における肺がんの診断薬・治療薬の開発に貢献し、アジアにおける個別化医療の確立に貢献することを目指します。

  • 対象症例:進行非小細胞肺がん
  • 目標症例数:2,000例
  • 解析方法:PCR (AmoyDx Pan Lung Cancer PCR Panel)、NGS (AmoyDx Comprehensive 116 gene assay)
  • 参加医療機関:アジア太平洋地域約20施設

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図1 LC-SCRUM-Asia/APに基づいた治療開発と国際的な臨床ゲノムデータベースの構築

002.jpg図2 LC-SCRUM-AsiaとLC-SCRUM-APの研究概要

今後の展望

LC-SCRUM-APによる、大規模な遺伝子スクリーニング基盤の構築により、分子標的薬の治療開発(臨床試験)の推進と、アジア太平洋地域における個別化医療の確立を加速させることが可能となります。

さらに、今後LC-SCRUM-AsiaとLC-SCRUM-APのデータベースを統合し、アジア太平洋地域の臨床・ゲノムデータベースを確立することにより、極めて大規模なリアルワールドデータが集積され、個別化医療の確立へ貢献することが期待されます。

用語解説

*1 LC-SCRUM-Asia(エルシー・スクラム・アジア)

LC-SCRUM.png

2013年より国立がん研究センターが全国の医療機関、製薬企業と協力して開始した国際的な遺伝子スクリーニング事業(代表:東病院 副院長/呼吸器内科長 後藤功一)。2019年よりその実施基盤を東アジアに拡大し、2022年8月までに17,000人以上の肺がんの患者さんが研究に参加。肺がんの新しい治療薬、診断薬の開発と臨床応用を目指して、大規模な遺伝子解析を行っている。今後も、肺がんのゲノム医療の発展を目指して、アカデミアと産業界が一体となり、新規の治療薬や診断薬の開発を推進する。

お問い合わせ先

患者さんからのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 LC-SCRUM-Asia事務局
電話番号:04-7133-1111(代表)
Eメール:LC-SCRUM-Asia●east.ncc.go.jp

取材・報道関係からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)
電話番号:04-7133-1111(代表) FAX:04-7130-0195 
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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