コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター

トップページ > 広報活動 > プレスリリース > 膵がんの診断を補助する体外診断用医薬品「東レAPOA2-iTQ」の国内製造販売承認について

膵がんの診断を補助する体外診断用医薬品「東レAPOA2-iTQ」の国内製造販売承認について

 2023年6月12日
日本医科大学
国立がん研究センター
日本医療研究開発機構(AMED)
In English

アポリポ蛋白A2(注1)(以下「APOA2」)は、C(カルボキシル)末端に、アラニン(A)、スレオニン(T)、グルタミン(Q)のアミノ酸配列を有し、血液中では、全長のタンパク質(以下「APOA2-ATQ」)とC末端が分解したアイソフォーム(以下「APOA2-AT」)が共存しています。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援等により、日本医科大学 大学院医学研究科 本田一文大学院教授(前国立がん研究センター研究所早期診断バイオマーカー開発部門長)らが行った研究で、膵がん患者の血液中で、2種類のAPOA2アイソフォーム(APOA2-ATおよびAPOA2-ATQ)の量比が変化することが見出されていました(参考文献参照)。

東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、日本医科大学(学長:弦間 昭彦)および国立がん研究センター(理事長:中釜 斉)との共同研究の実施ならびにAMEDの研究成果の活用により、2種類のAPOA2アイソフォームの末端構造をそれぞれ特異的に認識する抗体を独自に取得し、その抗体を用いて2種類のAPOA2アイソフォーム濃度を高精度に測定する検査薬を開発し、体外診断用医薬品として厚生労働省から製造販売承認を取得しました。本品は、血漿中のAPOA2の2種類のアイソフォーム濃度を測定することにより、膵がんの診断を補助します。

日本における膵がんの罹患者数は約44,000人(2019年)、死亡者数は年間約38,000人(2020年)に上ります(注2)。また、膵がんは早期に発見できれば生存率の向上が期待されますが、自覚症状が現れにくく進行が早いため、早期に発見することが難しいがんの一つです。
本品による検査方法は、血液を用いるため、より多くの方々が受診しやすい検査です。既存の腫瘍マーカーとは異なる物質を測定することから、既存の腫瘍マーカーでは検出できなかった膵がん患者を検出できることが期待されます。

なお、本成果は、AMED の「次世代がん医療創生研究事業」、「次世代がん医療加速 化研究事業」並びに「革新的がん医療実用化研究事業」の支援ならびに成果活用によるものです。これらの 事業は、医薬品プロジェクトの一環として医療現場のニーズに応える医薬品の実用化を推進しているもので、創薬標的の探索から臨床研究に至るまで、大学や産業界と連携して、研究支援を実施しています。

測定方法

本品は、サンドイッチ法を原理とする酵素免疫測定法(ELISA)により、2種類のAPOA2アイソフォーム(APOA2-ATおよびAPOA2-TQ)の濃度を独立に測定します。
測定したAPOA2-AT濃度とAPOA2-TQ濃度の相乗平均値(APOA2-i Index)を求めることで、膵がんの診断補助に役立てます。

注1  アポリポ蛋白A2(APOA2)は、高比重リポタンパク質(High Density Lipoprotein:HDL)の主要構成成分の1つ。主に肝臓や小腸で産生されており、末梢血中に大量に存在しています。全長77個のアミノ酸からなり、タンパク質が2つ結合した2量体を形成しています。
注2  国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)

参考文献

1. Honda K, Okusaka T, Felix K, Nakamori S, Sata N, Nagai H, et al. Altered plasma apolipoprotein modifications in patients with pancreatic cancer: protein characterization and multi-institutional validation. PLoS One. 2012;7(10):e46908.
2.  Honda K, Kobayashi M, Okusaka T, Rinaudo JA, Huang Y, Marsh T, et al. Plasma biomarker for detection of early stage pancreatic cancer and risk factors for pancreatic malignancy using antibodies for apolipoprotein-AII isoforms. Sci Rep. 2015;5:15:921.
3.  Honda K, Srivastava S. Potential usefulness of apolipoprotein A2 isoforms for screening and risk stratification of pancreatic cancer. Biomark Med. 2016;10(11):1197-207.
4.  Honda K. Risk stratification of pancreatic cancer by a blood test for apolipoprotein A2-isoforms. Cancer Biomark. 2022;33(4):503-12.

本成果に活用されたAMED事業における研究成果

・AMED 次世代がん医療創生研究事業
「タンパク質・ペプチド修飾解析による早期がん・リスク疾患診断のための血液バイオマーカーの開発(研究代表 本田一文)」
・AMED 次世代がん医療加速化研究事業
「抗体基盤網羅的スクリーニングによる消化器がん早期診断バイオマーカーの開発 (研究代表 本田一文)」
・AMED 革新的がん医療実用化研究事業
「血液バイオマーカーを用いた効率的な膵がん検診の実用化(研究代表 本田一文)」
・AMED 革新的がん医療実用化研究事業
「膵外分泌機能を評価する血液バイオマーカーを用いた膵がんリスク疾患・早期膵がんの診断法の臨床開発(研究代表 本田一文)」
https://www.amed.go.jp/news/release_20151109.html(外部サイトにリンクします)

問い合わせ先

本件に関する問い合わせ先

日本医科大学大学院医学研究科生体機能制御学分野
本田一文
E-mail:bioregulation.group●nms.ac.jp

広報窓口

日本医科大学 先端医学研究所 事務室
電話番号:03-3822-2131(代表)
E-mail:sentankenjimushitsu.group●nms.ac.jp

国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
E-mail:ncc-admin●ncc.go.jp

AMED事業に関する問い合わせ先

日本医療研究開発機構(AMED)           
次世代がん医療加速化研究事業 E-mail:jisedaigan●amed.go.jp
革新的がん医療実用化研究事業 E-mail:kakushingan●amed.go.jp

関連ファイル

Get Adobe Reader

PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。

ページの先頭へ