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国立がん研究センター

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類上皮肉腫患者を対象としたEZH2阻害薬(E7438)の全国4施設共同第2相医師主導治験開始「MASTER KEYプロジェクト」で超希少がんの治療開発に挑む

2023年6月22日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 超希少疾患である類上皮肉腫について、東北、関東、中部、九州の全国4施設で多施設共同の医師主導治験を実施します。
  • 類上皮肉腫では初となるEZH2阻害薬の国内での薬事承認を目指します。
  • 本試験は希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進する「MASTER KEYプロジェクト」の枠組みを用いて行われ、超希少がんでも治療開発モデルの構築を目指します。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:島田和明)は、局所進行・再発類上皮肉腫患者を対象に、ヒストンメチル基転移酵素の一種、EZH(enhancer of zeste homolog)2に対する選択的かつ可逆的な低分子阻害薬であるE7438(タゼメトスタット)単独療法の多施設共同第2相医師主導治験(試験略称:TAZETTA)を開始しました。当院のほか東北大学病院(所在地:宮城県仙台市)、愛知県がんセンター(所在地:愛知県名古屋市)、九州大学病院(所在地:福岡県福岡市)の全国4施設で実施します。

類上皮肉腫は、前腕から手の浅層に多く発症する稀な肉腫です。有効性が高い薬物療法はなく、唯一根治が期待できる治療法は手術による完全切除ですが、診断時点で約半数は手術が行えず、予後の極めて厳しいがんです。また、超希少疾患であることから企業による治療開発が進み難い現状です。今回用いるEZH2阻害薬のタゼメトスタットは、海外での臨床試験において類上皮肉腫に対する有効性が報告されています。本試験では、日本人での有効性を検証し、良好な結果が得られた場合は類上皮肉腫では初となるEZH2阻害薬の国内での薬事承認を目指します。

希少がんの治療開発について

希少がんの新規治療開発は、患者さんの数が極めて少ないことや、対象となる疾患の患者さんの情報を集約する仕組みが十分に構築されていないことから、患者登録に長い年月を要し、ランダム化比較試験を実施することが困難であり、企業による開発が積極的に行われていません。

国立がん研究センター中央病院では、希少がんでの治療開発を推進するため、2014 年には「希少がんセンター」を開設し、2017 年からは企業とも共同で希少がんの研究開発・ゲノム医療を推進する「MASTER KEY(マスター キー) プロジェクト」を立ち上げています。MASTER KEY プロジェクトはレジストリ研究と副試験の2つのパートに分かれ、これまでに 3,200 例以上の患者さんが登録しています。副試験パートでは現在27 件(16件の医師主導治験、11件の企業治験を実施)の臨床試験を実施しています(2023 年5月)。今回の医師主導治験もMASTER KEYプロジェクトの枠組みで実施するものです。

本試験を、希少がんの中でも極めて少ない超希少ながん腫で成功させることにより、超希少がんの臨床試験計画や新薬開発手法の新たなモデル構築となり、わが国の希少がん領域における臨床開発の活性化に貢献できるものと考えます。zu.png

MASTER KEY(マスター キー) プロジェクト ウェブサイト
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/masterkeyproject/index.html

類上皮肉腫について

類上皮肉腫は、悪性軟部肉腫の約 1%以下を占める稀な腫瘍で、全国骨・軟部腫瘍登録によると 2006年から2015年の10年間に国内の主要な病院から登録された症例数は 174 例です。前腕から手の浅層に多く発生します。

類上皮肉腫に対する治療法は、手術による完全切除が基本です。切除不能の場合は、症状緩和は延命を目的として抗がん剤治療が行われます。類上皮肉腫に対して承認されている薬剤は国内では存在せず、悪性軟部肉腫に対して承認されているドキソルビシンなどが使用されていますが、こういった化学療法が効きにくいことが分かっており、予後不良な疾患です。

本試験について

2020年に海外から、類上皮肉腫に対してEZH2阻害薬であるタゼメトスタットが有効だという臨床試験結果が報告されました。類上皮肉腫の患者にタゼメトスタットを投与し、15%の患者で腫瘍の縮小を認めています。この試験結果を参考に、ドキソルビシンを含む1レジメン以上の化学療法治療後に増悪を認めた日本人の類上皮肉腫の患者を対象に、タゼメトスタットの有効性を検証する臨床試験を計画、実施することに至りました。

タゼメトスタットは、EZH2阻害薬という分子標的薬の一つです。類上皮肉腫の患者さんの 90%以上で、SMARCB1 という遺伝子が働いていないことが分かっています。SMARCB1 遺伝子はINI1蛋白の生成に関わっており、INI1 蛋白がないことによって、EZH2 という酵素が過剰に活性を起こし、異常な細胞増殖を引き起こすことがわかっています。EZH2 を阻害することで、類上皮肉腫の進行を抑制することが期待されています。

今回の医師主導治験は、国立がん研究センター中央病院希少がんセンター、学会による疾患登録、および臨床試験グループのネットワークを有効に活用し、全国の患者さんが参加できるよう計画しています。

また、一般的な治験の多くは、対象年齢が 18 歳、もしくは 20 歳以上ですが、本試験では類上皮肉腫の特性を踏まえ、対象年齢を 16 歳以上として計画しました。本試験はエーザイ株式会社から資金および薬剤の提供を受けて実施します。

本治験と研究の詳細

試験名

局所進行・再発類上皮肉腫に対するタゼメトスタットの第2相医師主導治験NCCH2107/MK012(試験名称:TAZETTA試験)

使用される新薬(治験薬)

E7438 タゼメトスタット(経口薬:EZH2阻害薬)

治験に参加いただける患者さんの身体状況(患者選択基準)

  1. 文書による同意が得られる
  2. 16歳以上である
  3. 組織学的に類上皮肉腫であり、切除不能と診断されている
  4. ドキソルビシンを含む抗がん剤治療後に悪化している
  5. 各臓器機能が規定内に保たれている

注:上記の患者選択基準は概要であり、上記に該当していてもこの治験に参加できないことがありますので、ご了承ください。

研究代表者

米盛 勧(中央病院 腫瘍内科)

臨床研究実施計画・研究概要公開システム

jRCT番号:jRCT2031220523

本治験の詳細は、臨床研究実施計画・研究概要公開システムよりご確認ください。
https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031220523(外部サイトにリンクします)

医師主導治験(TAZETTA試験)参加施設一覧

東北大学病院
国立がん研究センター中央病院
愛知県がんセンター
九州大学病院

問い合わせ先

医師主導治験に関するお問い合わせ

中央病院 臨床研究支援部門 研究企画推進部 臨床研究支援室
郵便番号:104-0045
住所:東京都中央区築地5-1-1
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール:ncch2107_office●ml.res.ncc.go.jp

広報窓口

国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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