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サバイバー5年生存率を初集計

院内がん登録2012年10年生存率集計 公表
サバイバー5年生存率を初集計

2025年2月13日
国立研究開発法人国立がん研究センター

国立研究開発法人国立がん研究センターは、国が指定するがん診療連携拠点病院等(以下「拠点病院」という。)を含む院内がん登録実施施設から収集した院内がん登録データを用いて、2012年登録の10年生存率集計結果を報告書にまとめ公表しました。

国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」院内がん登録生存率集計 報告書ページ(外部サイトにリンクします)

生存率の種類

生存率には、その目的と算出の仕方によって「実測生存率」、「疾病特異的生存率」、「相対生存率」、「純生存率(Net Survival)」等が存在し、本報告では、実測生存率と純生存率を用いて算出しています。本報告は「拠点病院を含む院内がん登録実施施設を受診した患者」という地域的な定義のない集団の生存率ではありますが、すでに公表されている他の数値との比較指標になると考え、純生存率も算出しています。
実測生存率は「100人の患者が○年後に○人生存している」という考え方の数値で、特定のがん種や年齢、ステージにおいて、医療関係者及びがん患者や家族が、治療方針やその後のケア等の計画立案に役立つ指標の一つです。一方、純生存率は、統計モデルに基づいて算出した指標のため、他の国との比較や都道府県間等の比較に基づくがん対策に用いられています。

実測生存率

死因に関係なく、全ての死亡を計算に含めた生存率で、診断例に対する何年後の生存患者の割合で示されます。計算方法は複数存在しますが、Kaplan-Meier法による実測生存率であることが多く、本報告においてもKaplan-Meier法を用いて実測生存率を算出しています。診断日等の起算日から、ある一定期間後の患者の生死状況を直接的に示す指標です。

疾病特異的生存率

がん以外の死因による死亡を「打ち切り」として計算するため、正確に推定するためには死因ががんであったかを把握する必要があります。臨床研究で用いられることが多いですが、がん対策や疫学・公衆衛生学的視点では、原死因としてがん以外のがん罹患に関連する全ての患者負担も含めて評価したいため、あまり採用されていません。

相対生存率

疾患特異的生存率では測定できない、がんに罹患した患者の負担を評価するため、相対生存率という概念が用いられます。対象と同じ地域、性、年齢、診断年(歴年)の一般の集団の生存率を期待生存率として算出し、実測生存率で割って算出する方法で、一般の集団とがん患者との生存率の比として表されます。そのため、生存率の高いがん種では、一般の集団よりも健康に留意し医療機関を受診すること等の理由から、生存率が100%以上になることもあります。

純生存率(Net Survival)

期待生存率を算出することなく純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して、実測生存率に重み付けをするのが純生存率です。がん死因と他死因が不可分であり、特に高齢患者のようにがん死因と他死因とで共通する死亡リスクがある場合に生存率を過大評価してしまう偏りを克服しています。現在、Pohar-Perme 法による純生存率は、国や都道府県等、一定の集団を対象とした住民ベースのがん統計に、国際的にも広く採用されています。

サバイバー生存率(Conditional Survival Rate,条件付生存率)

診断日からの経過日数ごとに、そこからある期間(例:5年間)を生きる確率を示したものです。診断後経過した日数を起点として「次の○年の生存率」を条件付生存率といいますが、国立がん研究センターにおいて「サバイバー○年生存率」と呼び、図1、2では診断日からの時間経過を横軸、「サバイバー○年生存率」を縦軸としています。(注意:院内がん登録2013-2014年5年生存率集計の際に、特別集計として公表した「サバイバー1年生存率」は、経過年数ごとにそこから1年後の生存率を計算しています。今回の特別集計では経過年数ごとにそこから5年後の生存率を計算しており、比較はできないことに留意してください。)

院内がん登録2012年10年生存率概要

2012年登録の院内がん登録データを提出した拠点病院およびその他の院内がん登録実施施設(拠点外病院)の361施設から10年予後情報付腫瘍データ543,081例を収集し、集計しました。
がんによってはその特性上、性別、年齢、ステージ、手術の有無により、生存率に違いがあり、その解釈には留意が必要です。

院内がん登録2012年10年生存率結果のポイント

2012年の全がんの実測生存率は46.6%、純生存率は54.0%(報告書P26)

10年という期間の経過をみるため、がんによっては年齢階級別の実測生存率と純生存率に大きな差がみられました。これは年齢が高くなるほど、がん以外の原因で亡くなる確率が高くなることが影響していると考えられました。

特別集計:サバイバー5年生存率の概要

今回収集したデータを用いて、主ながん種(胃がん、大腸がん、肝細胞がん、肝内胆管がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がん、膀胱がん、甲状腺乳頭濾胞がん、胆嚢がん、喉頭がん、腎がん、腎盂尿路がん、卵巣がん)の病期別サバイバー5年生存率(Conditional Survival Rate)を算出し、特別集計として報告書にまとめました。

特別集計:サバイバー5年生存率の集計結果

がんと診断後、10年間のデータを用いてサバイバー5年生存率を初めて集計(報告書 P68)

進行期では1年生存するほど5年生存率が改善傾向
治療による根治がより期待できる病期(I・II期)では、多くのがん種でサバイバー5年生存率はほぼ横ばいになりますが、進行期(III・IV期)では1年生存するほど5年生存率が改善する傾向がみられました(例:図1)。その一方で乳がんは、どの病期でもサバイバー5年生存率はほぼ横ばいであることから、長期の治療と経過観察が必要なサブタイプがあることを反映していると推測されました(図2)。
同じがん種・病期であっても年齢やその他の因子によって予後が異なるということに注意が必要ですが、がん種や病期によっては「診断後1年以上生存した場合の5年生存率」は、診断時よりも改善する傾向であることが、治療を受ける方々にとって少しでも明るいメッセージになることを期待しています。

<図1>胃がんの各病期のサバイバー5年生存率

胃がんの各病期のサバイバー5年生存率を1期から4期の折れ線グラフで表した画像

<図2>乳がんの各病期のサバイバー5年生存率

乳がんの各病期のサバイバー5年生存率を1期から4期の折れ線グラフで表した画像

お問い合わせ先

院内がん登録生存率集計について

国立研究開発法人国立がん研究センター
がん対策研究所 がん登録センター 院内がん登録分析室
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
ダイヤルイン:03-3547-5201(内線1600) E-mail:hbcr_analysis●ml.res.ncc.go.jp

その他全般について

国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
ダイヤルイン:03-3547-5201(内線 3548)
TEL:03-3542-2511(代表) E-mail:ncc-admin●ncc.go.jp

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