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さまざまな固形腫瘍に対するマルチオミクス解析を用いた病態解明
シークエンス技術の革新的な進歩に伴い、得られるデータは非常に大きなものになっております。莫大なデータの解析にはバイオインフォマティクス技術を用いて研究を遂行していく必要があります。当研究室が有するバイオインフォマティクス解析のノウハウを生かし様々な研究室と共同研究を行っております。脳腫瘍に限らず様々な悪性腫瘍のゲノム解析に携わり、泌尿器腫瘍や消化器腫瘍を中心とした固形腫瘍の研究も行ってきております。次世代シークエンサーのデータ解析から予後解析まで幅広い領域の解析を行っております。
これまでの脳腫瘍以外のゲノム解析研究(一部抜粋)
近年の研究から、尿路上皮癌ではエピゲノムに関連する遺伝子の異常が高頻度に生じていることが明らかになっています。そこで、当研究グループではより詳細な病態解明を目的に、エピゲノム解析をさらに進めるとともに、シングルセル解析を活用した研究を展開しています。これにより、新たな治療標的の同定や個別化医療の実現に向けた知見の蓄積を目指しています。
さらに、2,000例を超える悪性腫瘍の全ゲノムシークエンス解析を行い、これらの構造異常が多様な腫瘍において共通して存在し、特定の機能を担っている可能性があることを示しました。その中でも、この染色体構造異常により新たなcircular RNA(circRNA)が産生され、それが腫瘍形成を促進するoncogeneとして機能していることを解明しました。(Ashutosh Tiwari et al. BioRxiv, 2025)
本研究を通じて、MYC/PVT1領域の構造異常とそれに伴うoncogenic circRNAの形成が、悪性腫瘍の発生・進展に深く関与していることを示唆しており、新たな治療標的の探索につながる可能性があります。
当研究グループは、Children's National Hospital Pei Laboratoryとの共同研究を通じて、網膜芽細胞腫の全ゲノムシークエンスデータの解析を行っています。本研究では、これまでに知られているRB1遺伝子の異常にとどまらず、新たな遺伝子異常の発見を目指しています。さらに、Pei Laboratoryが確立した網膜芽細胞腫のマウスモデルを用い、その特性を詳細に解析するため、網羅的なシークエンス解析を実施し、腫瘍の分子メカニズムの解明に取り組んでいます。これらの研究を通じて、網膜芽細胞腫の発症メカニズムの理解を深め、新たな治療法の開発につなげることを目指しています。
これまでの脳腫瘍以外のゲノム解析研究(一部抜粋)
- Yoichi Fujii, Yusuke Sato, Hiromichi Suzuki, et al. Molecular classification and diagnostics of upper urinary tract urothelial carcinoma. Cancer Cell. 39(6):793-809, 2021
- Akira Yokoyama, et al. Age-related remodelling of oesophageal epithelia by mutated cancer drivers. Nature. 565(7739): 312-317. 2019
- Yusuke Sato, et al. Recurrent somatic mutations underlie corticotropin-independent Cushing's syndrome. Science. 344(6186):917-20. 2014
- Yusuke Sato, et al. Integrated molecular analysis of clear-cell renal cell carcinoma. Nature Genetics. 45(8):860-7. 2013
尿路上皮癌におけるエピゲノム異常解析と新たな治療標的の探索
当研究グループは、東京大学医学部泌尿器科と共同で、尿路上皮癌の病態解明に取り組んでいます。これまでに200例以上の尿路上皮癌を解析し、遺伝子異常の全体像、遺伝子発現プロファイル、およびDNAメチル化状態を明らかにすることで、尿路上皮癌の分子分類を提唱してきました。近年の研究から、尿路上皮癌ではエピゲノムに関連する遺伝子の異常が高頻度に生じていることが明らかになっています。そこで、当研究グループではより詳細な病態解明を目的に、エピゲノム解析をさらに進めるとともに、シングルセル解析を活用した研究を展開しています。これにより、新たな治療標的の同定や個別化医療の実現に向けた知見の蓄積を目指しています。
様々な悪性腫瘍のおけるMYC/PVT1の構造異常と癌関連circRNAの同定
当研究グループは、Sanford Burnham PrebysのBagchi Laboratoryとの共同研究を通じて、MYC/PVT1領域の染色体構造異常が多くの悪性腫瘍に共通する遺伝子異常であることを明らかにしています。特に、PVT1の染色体構造異常が特定の領域に集中して発生することを見出しました。さらに、2,000例を超える悪性腫瘍の全ゲノムシークエンス解析を行い、これらの構造異常が多様な腫瘍において共通して存在し、特定の機能を担っている可能性があることを示しました。その中でも、この染色体構造異常により新たなcircular RNA(circRNA)が産生され、それが腫瘍形成を促進するoncogeneとして機能していることを解明しました。(Ashutosh Tiwari et al. BioRxiv, 2025)
本研究を通じて、MYC/PVT1領域の構造異常とそれに伴うoncogenic circRNAの形成が、悪性腫瘍の発生・進展に深く関与していることを示唆しており、新たな治療標的の探索につながる可能性があります。
網膜芽細胞腫に対する遺伝子異常解析と腫瘍発生メカニズムの解明
当研究グループは、Children's National Hospital Pei Laboratoryとの共同研究を通じて、網膜芽細胞腫の全ゲノムシークエンスデータの解析を行っています。本研究では、これまでに知られているRB1遺伝子の異常にとどまらず、新たな遺伝子異常の発見を目指しています。さらに、Pei Laboratoryが確立した網膜芽細胞腫のマウスモデルを用い、その特性を詳細に解析するため、網羅的なシークエンス解析を実施し、腫瘍の分子メカニズムの解明に取り組んでいます。これらの研究を通じて、網膜芽細胞腫の発症メカニズムの理解を深め、新たな治療法の開発につなげることを目指しています。