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遺伝学的手法を利用したがん関連遺伝子マウス生体内スクリーニング
大腸がんの形成・悪性化の分子基盤を明らかにするために、SBトランスポゾンを利用した遺伝学的アプローチを用いています。これは、マウス生体内でトランスポゾンによる挿入変異を誘発させて腫瘍形成を誘導し、表現型から原因遺伝子を探る順遺伝学に基づいています。このシステムは、
- SBトランスポゾン(図1)
- トランスポゾンの転移を触媒するトランスポゾン転移酵素(SBase)
の二つの要素から構成され、Cut & Pasteの方法でトランスポゾンが転移し、遺伝子の挿入変異を引き起こします(図2)。
SBトランスポゾンは、遺伝子上流に挿入されることで過剰発現を誘導することも、遺伝子内に挿入されることで遺伝子の機能損失を誘導することも可能であり(図3)、OncogeneとTumor suppressor geneの両方を同定できます。
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図1. トランスポゾンの構造
- 図2. SBトランスポゾン挿入変異システムは、転移酵素とトランスポゾンより構成される
- 図3. トランスポゾン遺伝子近傍に挿入された場合に、脱制御を引き起こす。
我々は、この方法を用いて大腸炎関連腫瘍の形成に関与する遺伝子を網羅的に同定しました(Shimomura et al., Nat. Commun., 2023)。さらに詳細な解析により、炎症性サイトカインであるTNFaは、大腸上皮細胞の可塑性を誘導し、大腸炎関連腫瘍形成過程において細胞老化関連遺伝子の変異を促進する選択圧となっていること等が分かりました(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/1024/index.html)。