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造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査の社会実装
造血器腫瘍の発症・進展に重要なドライバー遺伝子異常が、我々を始めとして様々な研究グループから報告されています。さらに、これらの遺伝子異常は、様々な造血器腫瘍において治療薬の選択だけでなく、疾患の診断や予後予測に有用であることが報告されており、遺伝子異常をまとめて検出することが患者一人一人に合わせた「個別化医療」の実現に繋がることが期待されています。しかしながら、造血器腫瘍において重要な遺伝子異常は、塩基置換、コピー数異常、構造異常、融合遺伝子と多岐にわたり、これらを一度の検査で網羅的に検査できるNGSを用いた遺伝子パネル検査は、日本では実装されていません。我々は日本血液学会より発表された造血器腫瘍ゲノム検査ガイドラインに基づき、造血器腫瘍において重要な遺伝子異常を網羅的に検出可能な遺伝子パネル検査の開発を行っています。
プレスリリース:「国内初の造血器腫瘍を対象とする遺伝子パネル検査を開発」
さらに、当センター中央病院・東病院、ゲノム解析実績を有する医療機関、診断薬開発企業などと共同で、この遺伝子パネル検査の性能検証および検体入手からエキスパートパネル、結果報告に至るまでの臨床シーケンスの実用性の評価を行いました。この研究には当センター中央病院・東病院で治療を受けた血液がん患者(初発および再発の成人および小児患者)が対象となり、176人の患者を解析しました。97%の患者で1個以上の遺伝子異常が、1人の患者につき中央値7個の遺伝子異常が検出されました。特にIGH転座を始めとする構造異常や、稀なものを含む様々な融合遺伝子、生殖細胞系列の異常も検出でき、本遺伝子パネル検査の高い性能が示されました。また、診断、治療法選択、および予後予測における有用性の観点から、検出された遺伝子異常を血液がんの疾患ごとに評価しました。その結果、診断、治療法選択、予後予測を行う上で臨床上有用であると考えられる遺伝子異常が、それぞれ82%、49%、58%の患者で検出され、遺伝子パネル検査は特に診断、次いで予後予測に有用であることが示されました。本研究で得られた知見は日本における血液がん遺伝子パネル検査の普及および個別化医療の基盤となることが期待されます。
プレスリリース:「血液がんに対する包括的ゲノムプロファイリングのための遺伝子パネル検査の有用性を検証」
このように開発した造血器腫瘍遺伝子パネル検査は、国立がん研究センターを含む国内主要施設と大塚製薬による共同研究コンソーシアムにて臨床的有用性が検証され、大塚製薬が2024年3月29日に国内での製造販売承認申請を行い、2024年9月20日に造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト®」として国内での製造販売承認を取得しました。「ヘムサイト®」は国内で初めて製造販売承認された造血器腫瘍及び類縁疾患を対象とした遺伝子パネル検査であり、造血器腫瘍領域において個別化医療が大きく進歩し、よりよい医療に貢献することが期待されます。
大塚製薬プレスリリース:「国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査の製造販売承認申請について」
プレスリリース:「国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査 「ヘムサイト®」の製造販売承認取得について」
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