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NK細胞リンパ腫の自然発症マウスモデルの開発による腫瘍細胞起源および新規治療標的の同定
我々はこれまでに節外性NK/T細胞リンパ腫(ENKTCL)におけるゲノム異常の全体像を明らかにしてきました(Kataoka K, Leukemia, 2019; Ito Y, Cancer Res, 2024)(→節外性NK/T細胞リンパ腫(ENKTCL)における宿主およびウイルスゲノムの異常の全体像)。この中で、PD-L1の構造異常をはじめとする免疫関連分子の異常が多く認められることから、腫瘍の免疫微小環境がENKTCLの病態形成において重要な役割を果たすと考えられていました。しかし、従来の研究では、主に培養細胞や免疫不全マウスを用いた異種移植モデルが使用されてきたため、免疫微小環境を適切に評価できませんでした。
そこで我々はフランスのLucile Couronné研究室と共同で、ゲノム研究で得られた知見をもとに、NK細胞リンパ腫を自然発症するマウスモデルを開発しました(Koya J, Nat Commun, 2024)。本マウスは唾液腺をはじめとする特徴的な臓器に腫瘍を形成し、ヒトのNK/T細胞リンパ腫と類似した病態を示します。また、NK細胞リンパ腫の細胞起源が組織常在性NK細胞であることが明らかになりました。
また、本モデルを用いて、長らく不明であったEBウイルスの病態への関与を評価したところ、EBウイルスが腫瘍微小環境を変化させ、腫瘍発症を促進することを明らかにしました。さらに、CXCR-CXCLシグナルやKLRG1、MYCなどを標的とした治療が有効であり、新規治療法開発の可能性も示しました。
プレスリリース:「世界初のNK細胞リンパ腫の免疫環境を再現できるマウスモデルを開発」
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