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(第27回 希少がんMeet the Expert)
「肉腫(サルコーマ)の診断」川井 章・吉田朗彦
(第27回 希少がんMeet the Expert)
更新日 : 2021年10月26日
- 日時:2018年8月17日金曜日 19時から20時30分
- 場所:国立がん研究センター中央病院 希少がんセンター待合
- 講師:川井 章 国立がん研究センター希少がんセンター長/中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科
- 講師:吉田 朗彦 国立がん研究センター希少がんセンター/中央病院病理診断科
動画
開催報告
希少がんを知り・学び・集う「希少がんMeet the Expert」の第27回セミナーが、「肉腫(サルコーマ)~診断」をテーマに2018年8月17日に開かれました。
セミナーは、加藤陽子(希少がんセンター)による司会のもと、西田俊朗(中央病院院長)による開会の挨拶で始まりました。今回のテーマである「肉腫の診断」について、西田からは「治療の選択において診断はとても大切です。医療者が非常に努力しても難しいのも診断です。現在の先端の診断技術でどこまでが可能になっているのか、ぜひみなさんに聞いていただきたい」という会場へのメッセージがあり、加藤が本日の流れと登壇者を紹介し、セミナーがスタートしました。
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司会:加藤 陽子
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開会挨拶
肉腫(サルコーマ)の診断は、「臨床診断」と「病理診断」によって行われます。「臨床診断」は、問診や画像検査などから疾患を推定することであり、「病理診断」は、患部から採った組織を調べて疾患を特定する診断です。最初の講演は、前者の「臨床診断」について、川井章(希少がんセンター長/中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)による解説です。「良性の肉腫と悪性の肉腫の違い」「骨肉腫とスポーツ障害を見分けるポイント」「骨・軟部腫瘍に詳しい医師のいる病院施設の探し方」などをテーマに具体的な説明がありました。
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講師:川井 章
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講演の様子
2つ目の「病理診断」については、吉田朗彦(希少がんセンター/中央病院病理診断科)が講演しました。「病理診断とは何か」「病理医は何をするのか」「肉腫の病理診断の問題点」が主なテーマです。まず、腫瘍から検査や手術で採ってきた組織をホルマリン固定のうえ薄く切り出して染色しプレパラートを作り、顕微鏡で観察しがんの種類などを特定するのが、病理診断です。専門に行う医師が病理医であり、病理医の仕事にはこのほか、手術断端の陽性陰性の評価、治療効果の判定なども含まれます。肉腫の病理診断ではほとんどの場合、通常のHE染色だけでなく「免疫染色」を行う必要があります。免疫染色ができる施設は多くはなく、また、10%の症例で必要となる遺伝子検索ができる施設はさらに限られてきます。軟部肉腫は症例数が少ないにもかかわらず、病型は150種類以上に及ぶうえに、組織像が多様な肉腫もあり、診断が特に難しいです。骨軟部腫瘍の5~10%は、専門とする病理医のだれが見ても分類できない「分類不能腫瘍」があるのが実情といいます。「肉腫の治療には正確な病理診断が大切なので、患者さんには自分の肉腫の病理診断を主治医に聞いてほしい。そして必要な場合には、病理外来などのセカンドオピニオンを利用してほしい」と締めくくりました。
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講師:吉田 朗彦
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会場の様子
ディスカッションは、講師の吉田朗彦、川井章、肉腫(サルコーマ)の会「たんぽぽ」の押田輝美さん、司会の加藤陽子が登壇し、がん情報サイト「オンコロ」の鳥井大吾が進行役を務めました。まずは参加者から事前に寄せられた質問が紹介されました。「診る病理医によって、診断名や悪性度のグレードが違う評価になることはあるか」「最初の手術(切除生検)で肉腫の全部を取るのはどのような場合か」「病院には、生検の組織がどのくらいの期間保存されているか」。これらに対する回答とともに、吉田からは、「病院には患者さんのがん組織が保存されており、必要な場合には患者さんがそれを借りて病理診断をもう一度見直すことができる。そのことを広く知っていただきたい」という話がありました。また、希少がんホットラインへの電話相談では、肉腫の病理診断名を知らない方も多いといいます。加藤は、「病理診断名はとても大事なので、主治医に漢字で紙に書いてもらうといいです」と、アドバイスがありました。新たに医療者用の専用回線を設けた「希少がんホットライン」を紹介して、会は閉会しました。
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ディスカッションの様子
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質疑応答:川井 章
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吉田 朗彦へは病理診断に関する質問が多数寄せられた
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フロアの質問にアドバイスする加藤 陽子