IVR(あいぶいあーる)
更新日 : 2024年4月11日
公開日:2014年4月28日
IVR(アイブイアール)とは
IVR(インターベンショナル・ラジオロジー:interventional radiology)とは、X線や超音波などの画像診断装置を用いて体内の状況を把握しながら、体表面の小さな穴から体内に挿入した特殊な器具を用いて行う治療です。体を切ることにより病巣を直接みて治療する外科的治療に比べ、体への負担(侵襲)が少ない点が特徴です。当センターでは、血管撮影装置とCT装置が一体となったアンギオCT装置2台を中心に、種々の装置を用いて、がんに関するあらゆる種類のIVRを行っています。また、IVRの研究を行う全国組織である日本腫瘍IVR研究グループ(JIVROSG)の基幹病院として、多数の臨床試験を行っています。
希少がんに対するIVR
腫瘍の治療のためのIVR
腫瘍に栄養を送る動脈にカテーテルを挿入して塞栓物質を流し虚血に陥らせる「動脈塞栓術」や、特殊な針を腫瘍に刺して焼いたり凍らせたりすることで腫瘍の組織破壊をきたす「アブレーション治療」があります。動脈塞栓術は、血流が豊富な腫瘍や出血を伴う腫瘍に対して行われます。アブレーション治療にはラジオ波焼灼療法(焼く)と凍結療法(凍らせる)がありますが、現時点では希少がんに対する保険適応がないため、一部のがんを対象に臨床試験として行っています。また、新しいアブレーション治療として、電気穿孔療法(ナノナイフ)、集束超音波療法があり、臨床試験で評価を行うための準備段階にあります。
動脈塞栓術
図1
カテーテル(細い管)から動脈に造影剤を流して写真を撮り、腫瘍に栄養を送る動脈を見つけます。
図2
腫瘍に栄養を送る動脈までカテーテルを進めて、血管を詰める粒(塞栓物質)を注入します。
抗がん剤を流すこともあります。
図3
腫瘍は縮小。
症状緩和のIVR
がんによるさまざまな症状に対して、IVRが有効な場合があります。がんや体の状態を総合的に判断して、治療法を選択します。下記のリストは、当センターで行っている主な症状緩和のIVRです。
- 点滴が難しい:中心静脈カテーテル、中心静脈ポート
- 胸水、腹水:ドレナージ、腹腔—静脈シャント
- 膿瘍:ドレナージ
- 閉塞性黄疸:胆管ドレナージ、胆管ステント
- 腰痛などの痛み:骨セメント、腫瘍アブレーション、動脈塞栓術、腹腔神経叢(ふくくうしんけいそう)ブロック
- 顔や下肢のむくみ:大静脈ステント
- 制御不能な出血:血管塞栓術
- 吐気、嘔吐、腹部膨満:消化管減圧術、経食道胃管挿入術(PTEG)
- 水腎症:腎瘻造設術
- 心嚢液貯留:ドレナージ
画像ガイド下生検
CT、X線透視、超音波、MRIを用いて、体幹部、四肢の腫瘍の組織を診断するため針を刺して組織を採取するものです。基本的に、体幹部、四肢であればほぼすべての部位の腫瘍に対し可能です。
図1 縦隔腫瘍に対するCTガイド下針生検
CTで血管など他臓器と腫瘍の位置関係を確認しつつ針を刺入することで、安全に生検を施行することが可能となります。
図2 左副腎腫瘍に対するCTガイド下針生検
体の深部にある病変でも、CTガイド下に針を刺入することで、安全かつ確実に生検が施行できます。
抗がん剤を流すこともあります。
日本腫瘍IVR研究グループにおける希少がんに関連する臨床試験
腫瘍の治療のためのIVR
- 上顎洞がんに対する放射線併用シスプラチン動注化学療法の第II相試験(実施中)
- 腹部・骨盤内実質臓器に対する経皮的凍結治療の第I/II相試験(準備中・先進医療B申請中)
- 腹部実質臓器に対するElectroporation治療の第I/II相試験(準備中)
- 骨軟部腫瘍に対するElectroporation治療の第I/II相試験(準備中)
症状緩和のためのIVR
- 骨盤内再発悪性腫瘍に対するラジオ波凝固療法の第I/II相臨床試験(実施中)
- 難治性腹水に対するシャント術の有効性を評価するランダム化比較試験(実施中)
- 有痛性椎体腫瘍に対する経皮的椎体形成術の有効性を評価するランダム化比較試験(実施中)
- 上部消化管通過障害に対する経皮経食道胃管挿入術の有効性を評価するランダム化比較試験(症例集積完了)
- 有痛性骨軟部・骨盤内腫瘍に対する経皮的凍結治療の第I/II相試験(準備中)
- 日本腫瘍IVR研究グループ(JIVROSG)(外部サイトにリンクします)
- 日本IVR学会(外部サイトにリンクします)
- 曽根 美雪(そね みゆき)
- 希少がんセンター
- 国立がん研究センター中央病院
- 放射線診断科、IVRセンター
- 菅原 俊祐(すがわら しゅんすけ)
- 国立がん研究センター中央病院
- 放射線診断科、IVRセンター