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連携大学院生インタビュー 吉松 有紀
吉松 有紀
東京大学 病因・病理学専攻
現職 国立がん研究センター研究所 希少がん研究分野 特任研究員
NCC在籍期間 2003年4月から2010年3月、2016年9月から現在2020年
指導者(役職は当時)
清野 透(ウイルス部 部長)
廣橋 説雄(総長/東京大学 連携教授)
中釜 斉(副所長/東京大学 連携教授)
研究所に来るきっかけ
私は小さいころから学校の先生になりたいと思っていました。次の世代に夢を伝える職業として教職に憧れていました。あるとき大学の教官から、学生として(旧)国立がんセンターで研究に参加できることを聞き、研究について知っておくことは学生の教育に役に立つのではないかと思い、研究所の門をたたきました。そのような動機から学生として研究に参加するようになったわけですが、がん研究に邁進する研究者を目の当たりにし、研究に向き合う真摯な姿に感動し、将来はがんの研究者になろうと思うようになりました。研究所では(旧)ウイルス部(清野透先生)で研究に参加させていただいていましたので、連携大学院に進み、同じ研究室で研究を継続しました。
研究所での生活
当時の私はウイルスによる発がん機構に関心があり、清野透先生にご相談し「子宮頸がんの発がん機構の解明」を研究テーマに選びました。博士課程では講義を受けることで単位を取得します。必要な単位はあっという間に取得したのですが、がんについて学びたかった私はたくさんの講義を受講し、がん研究の基礎知識を固めました。統計学の先生は面白い講義をされていらして、結婚相手の選び方についても統計処理で片づけてくれました。研究所では研究のプロ集団に加わりましたので、求められる高い水準についていけるよう昼夜を問わず必死でがんばりました。毎週のジャーナルクラブや研究進捗報告会では熱いディスカッションが繰り広げられていました。実験に熱中しすぎて遅くなることはしばしばあって、終電を逃さないように東銀座駅まで走っていました。また、連携大学院の教授だった廣橋説雄先生からは定期的にご指導を賜りました。最終学年の指導は中釜斉先生に引き継がれ、やはり適格なご指導を受けることができました。お二人からはがん研究を俯瞰的にとらえることの重要性を教えていただきました。
研究所は築地にあり、お寿司などの海鮮料理のメッカである築地場外は通りを隔ててすぐでした。また、ブランド/高級レストランの町・銀座まで歩いてわずか5分の距離ですし、もんじゃ焼きの聖地・月島までも徒歩10分です。このように、国内外の一流どころからB級グルメの店までたくさんの食事処に研究所は囲まれており、研究員の先生や同期の方と舌鼓を打っていました。帰宅途中には銀座でショッピングを楽しむこともあり、とても充実した大学院生活でした。
研究所でよかったこと
研究所にはユニークな方々が集まっておられます。いろいろな方々とのディスカッションが、のちの研究生活において何ものにも代えがたい貴重な財産となりました。論理的思考のもと仮説を組み立て、それを実験医学的に証明していくプロセスなど、研究の基礎となる力はすべて研究所で培いました。
研究ではたくさんの実験装置を使います。研究所の共通機器室には最先端の高額な実験装置が完備されており、必要なあらゆる実験が可能でした。研究費もふんだんにあり、朝から晩まで思いっきり実験をすることができました。私は経験ありませんが、先生方の話で世界の誰よりも先んじて素晴らしいデータを得たときには感動で胸が震えたことなどを伺い、感動が伝わってきました。
私はFred Hutchinson Cancer Research Center (FHCRC)に2010年に留学し、2016年に帰国いたしました。留学する際には研究所から機関推薦をいただき「平成21年度(2009年) 第12回 神澤医学賞-海外留学助成金: 子宮頸がん多段階発がん機構の解析, 吉松 有紀」の支援を受けることができました。FHCRCには、2008年にノーベル生理学医学賞を受賞されたハウゼン博士と一緒に研究をされていたギャロウェイ博士が子宮頸がんワクチンの研究をされておられ、引き続きウイルスとがんの研究をさせていただきました。その後、出産を機にワシントン大学病院の研究室へ移り、再生医療の研究を開始しました。海外で知り合った先生方の中には国立がん研究センターで働いている方もおられます。シアトルを離れた現在でも交流は続いています。
研究所の特徴の一つは、国内最大のがん専門病院である中央病院が隣接しているということです。臨床につながる研究においては、がんの患者さんの診療に携わっておられる臨床医との交流はとても大切です。臨床の方の「がんを治したい」というモチベーションや、日々の診療から発生する臨床上の疑問点からは、研究者として得るところが多いと感じています。また、新鮮な臨床検体やそれに附随した情報を研究に使うことができるのも、他の施設にはないメリットだと思います。このように、国立がん研究センターでがんの研究をすることの有難さを日々感じています。
後輩へのアドバイス
所属しております希少がん研究分野には、長崎大学/千葉大学/東京医科歯科大学の大学院生が研究に参加しています。分野長の近藤格先生は若い世代の育成に力を入れておられ、論文の読み方やまとめ方といった基本的なところから研究生活全般について、熱心にアドバイスをされています。女性は出産や子育てでキャリア形成が途絶えがちですが、職場の理解を得て家庭と研究の両立を図っています。女性が長く続けることができる職業として研究職は適していると感じる方は多いかもしれません。
どのような人と研究生活を過ごすかはとても大切です。「百聞は一見に如かず」ですので、学生時代からいろいろなラボを訪問させていただくと良いかと思います。研究所には多くの研究者がおられますので、ライフワークとして研究したいテーマや、将来の自分と重ねられる憧れの先生に出会えるかもしれません。
主要な論文(NCC在籍中)
- Establishment and characterization of NCC-ASPS1-C1: a novel patient-derived cell line of alveolar soft-part sarcoma. Yoshimatsu Y, Noguchi R, Tsuchiya R, Sei A, Sugaya J, Fukushima S, Yoshida A, Kawai A, Kondo T. Hum Cell. 2020 Oct;33(4):1302-1310. doi: 10.1007/s13577-020-00382-2. PMID: 32648033
- Establishment and characterization of a novel alveolar rhabdomyosarcoma cell line, NCC-aRMS1-C1. Sin Y, Yoshimatsu Y, Noguchi R, Tsuchiya R, Sei A, Ono T, Toki S, Kobayashi E, Arakawa A, Sugiyama M, Yoshida A, Kawai A, Kondo T. Hum Cell. 2020 Oct;33(4):1311-1320. doi: 10.1007/s13577-020-00403-0. PMID: 32715445
- Establishment and characterization of NCC-GCTB1-C1: a novel patient-derived cancer cell line of giant cell tumor of bone. Noguchi R, Yoshimatsu Y, Ono T, Sei A, Hirabayashi K, Ozawa I, Kikuta K, Kondo T. Hum Cell. 2020 Oct;33(4):1321-1328. doi: 10.1007/s13577-020-00415-w. PMID: 32815117
- Establishment and characterization of NCC-LMS2-C1-a novel patient-derived cancer cell line of leiomyosarcoma. Noguchi R, Yoshimatsu Y, Ono T, Sei A, Hirabayashi K, Ozawa I, Kikuta K, Kondo T. Hum Cell. 2020 Oct 1. doi: 10.1007/s13577-020-00443-6. PMID: 33001379
- Establishment and characterization of NCC-DDLPS1-C1: a novel patient-derived cell line of dedifferentiated liposarcoma. Tsuchiya R, Yoshimatsu Y, Noguchi R, Sei A, Takeshita F, Sugaya J, Fukushima S, Yoshida A, Ohtori S, Kawai A, Kondo T. Hum Cell. 2020 Sep 19. doi: 10.1007/s13577-020-00436-5. PMID: 32949334
- Establishment and characterization of a novel cell line, NCC-TGCT1-C1, derived from a patient with tenosynovial giant cell tumor. Noguchi R, Yoshimatsu Y, Ono T, Sei A, Hirabayashi K, Ozawa I, Kikuta K, Kondo T. Hum Cell. 2020 Sep 4. doi: 10.1007/s13577-020-00425-8. PMID: 32886306
- Establishment and characterization of NCC-MFS2-C1: a novel patient-derived cancer cell line of myxofibrosarcoma. Noguchi R, Yoshimatsu Y, Ono T, Sei A, Hirabayashi K, Ozawa I, Kikuta K, Kondo T. Hum Cell. 2020 Sep 1. doi: 10.1007/s13577-020-00420-z. PMID: 32870449
- Establishment and characterization of NCC-DFSP3-C1: a novel patient-derived dermatofibrosarcoma protuberans cell line. Yoshimatsu Y, Noguchi R, Tsuchiya R, Sei A, Nakagawa M, Yoshida A, Kawai A, Kondo T. Hum Cell. 2020 Jul;33(3):894-903. doi: 10.1007/s13577-020-00365-3. PMID: 32356243
- Establishment and characterization of NCC-ssRMS1-C1: a novel patient-derived spindle-cell/sclerosing rhabdomyosarcoma cell line. Yoshimatsu Y, Noguchi R, Tsuchiya R, Sei A, Sugaya J, Iwata S, Sugiyama M, Yoshida A, Kawai A, Kondo T. Hum Cell. 2020 Jul;33(3):886-893. doi: 10.1007/s13577-020-00359-1. Epub 2020 Apr 16. PMID: 32300959
- Establishment and characterization of NCC-SS3-C1: a novel patient-derived cell line of synovial sarcoma. Yoshimatsu Y, Noguchi R, Tsuchiya R, Sei A, Sugaya J, Iwata S, Yoshida A, Kawai A, Kondo T. Hum Cell. 2020 Jul;33(3):877-885. doi: 10.1007/s13577-020-00354-6. PMID: 32274656
- Establishment and characterization of NCC-CDS2-C1: a novel patient-derived cell line of CIC-DUX4 sarcoma. Yoshimatsu Y, Noguchi R, Tsuchiya R, Kito F, Sei A, Sugaya J, Nakagawa M, Yoshida A, Iwata S, Kawai A, Kondo T. Hum Cell. 2020 Apr;33(2):427-436. doi: 10.1007/s13577-019-00312-x. PMID: 31898195
- An Ex-Vivo Culture System of Ovarian Cancer Faithfully Recapitulating the Pathological Features of Primary Tumors. Ghani FI, Dendo K, Watanabe R, Yamada K, Yoshimatsu Y, Yugawa T, Nakahara T, Tanaka K, Yoshida H, Yoshida M, Ishikawa M, Goshima N, Kato T, Kiyono T. Cells. 2019 Jun 26;8(7):644. doi: 10.3390/cells8070644. PMID: 31248002
- The oncogene KRAS promotes cancer cell dissemination by stabilizing spheroid formation via the MEK pathway. Ogishima J, Taguchi A, Kawata A, Kawana K, Yoshida M, Yoshimatsu Y, Sato M, Nakamura H, Kawata Y, Nishijima A, Fujimoto A, Tomio K, Adachi K, Nagamatsu T, Oda K, Kiyono T, Osuga Y, Fujii T. BMC Cancer. 2018 Dec 3;18(1):1201. doi: 10.1186/s12885-018-4922-4. PMID: 30509235
- Roles of the PDZ-binding motif of HPV 16 E6 protein in oncogenic transformation of human cervical keratinocytes. Yoshimatsu Y, Nakahara T, Tanaka K, Inagawa Y, Narisawa-Saito M, Yugawa T, Ohno SI, Fujita M, Nakagama H, Kiyono T. Cancer Sci. 108(7):1303-1309, 2017
- A critical role of MYC for transformation of human cells by HPV16 E6E7 and oncogenic HRAS. Narisawa-Saito M, Inagawa Y, Yoshimatsu Y, Haga K, Tanaka K, Egawa N, Ohno S, Ichikawa H, Yugawa T, Fujita M, Kiyono T. Carcinogenesis. 33(4):910-917, 2012
- An in vitro multistep carcinogenesis model for both HPV-positive and -negative human oral squamous cell carcinomas. Zushi Y, Narisawa-Saito M, Noguchi K, Yoshimatsu Y, Yugawa T, Egawa N, Fujita M, Urade M, Kiyono T. Am J Cancer Res. 1(7):869-881, 2011
- NRF2 mutation confers malignant potential and resistance to chemoradiation therapy in advanced esophageal squamous cancer. Shibata T, Kokubu A, Saito S, Narisawa-Saito M, Sasaki H, Aoyagi K, Yoshimatsu Y, Tachimori Y, Kushima R, Kiyono T, Yamamoto M. Neoplasia. 13(9):864-873, 2011
- 18.DeltaNp63alpha repression of the Notch1 gene supports the proliferative capacity of normal human keratinocytes and cervical cancer cells. Yugawa T, Narisawa-Saito M, Yoshimatsu Y, Haga K, Ohno S, Egawa N, Fujita M, Kiyono T. Cancer Res. 70(10):4034-4044, 2010
- An in vitro multistep carcinogenesis model for human cervical cancer. Narisawa-Saito M1, Yoshimatsu Y1, Ohno S, Yugawa T, Egawa N, Fujita M, Hirohashi S, Kiyono T. Cancer Res. 68(14):5699-5705, 2008