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がん治療学研究分野
研究室の紹介(First View)
がんの「アキレス腱」を狙い撃つ。
次世代の「合成致死」戦略で、難治性がんの治療を変える。
私たちは、がん細胞特有の遺伝子欠損(弱点)を利用した「パラログ同時阻害」という独自の創薬アプローチで、まだ見ぬ治療薬の開発に挑んでいます。

研究コンセプト(Our Mission)
「薬でがんを治す」ための、論理的な戦略。
がん治療は今、変革期にあります。私たちは、がん細胞に見られる「遺伝子の欠失」に着目しています。欠失したがん抑制遺伝子の機能を薬で戻すことは困難です。しかし、その遺伝子機能を失ったがん細胞は、生存のために「別の遺伝子」に強く依存するようになります。この依存先(アキレス腱)を阻害することで、正常細胞を傷つけず、がん細胞だけを死滅させる——それが私たちが追求する「合成致死治療法(Synthetic Lethal Therapy)」です。
独自技術と成果(Research Highlights)
世界をリードする、独自の創薬プラットフォーム
Highlight 1: 次世代型アプローチ「パラログ同時阻害法」
従来の「1対1」の合成致死に加え、類似した機能を持つ2つの分子(パラログ)を同時に阻害する独自のスクリーニング法を確立。SWI/SNF欠損がん等に対し、全く新しい治療標的(CBP/p300等)を次々と同定しています。
Highlight 2: 難治性がん・小児がんへの挑戦
治療選択肢の少ない肺がん、膵臓がん、卵巣明細胞がん、そして小児のラブドイド腫瘍や肉腫。アンメットメディカルニーズの高いこれらのがん種に対し、国立がん研究センターならではの臨床検体網を駆使して挑んでいます。
Highlight 3: 代謝脆弱性の攻略
エピゲノム異常と代謝(メタボローム)の関連を解明。GCLC阻害など、がん特有の代謝経路を標的とした創薬シーズの開発を進めています。
[研究プロジェクトの詳細を見る >]
研究者・製薬企業の方へ(For Researcher and Industry)
アカデミア発の「創薬エンジン」を、貴社のパイプラインへ
当分野では、基礎研究の枠を超え、臨床応用を見据えた創薬開発研究を推進しています。独自のスクリーニング技術と、NCCが保有する豊富な臨床検体(PDX/オルガノイド)を掛け合わせることで、臨床成功確率の高い創薬シーズを提供します。
【ご提供可能なパートナーシップ】
- 独自プラットフォーム: 「パラログ同時阻害」スクリーニング系を用いた共同標的探索
- バリデーション: 難治性がんPDXモデルを用いた薬効評価・バイオマーカー探索
- シーズ導出: 同定済み有望標的・リード化合物のライセンスアウト
現在、複数のプロジェクトでリード化合物取得・非臨床PoC取得フェーズに進んでいます。
[共同研究についてのお問い合わせ >]
臨床医の方へ(For Clinicians)
臨床の疑問(Clinical Question)を、分子メカニズムで解く
臨床現場で直面する「薬剤耐性」や「治療標的のないがん」。その課題を解決するには、臨床検体に基づいたリバース・トランスレーショナルリサーチ(rTR)が不可欠です。先生方が抱える臨床的な疑問を、当研究室の解析プラットフォームで解明しませんか?共同研究のご提案を随時歓迎しています。
ポスドク・特任研究員・大学院生 募集(Recruitment)
多様なキャリアを応援。あなたに合ったスタイルで、がん治療開発に貢献してください
がん治療学研究分野では、将来のリーダーを目指す研究者はもちろん、高度な実験技術でチームの研究を支える「研究支援・技術専門職」の方を積極的に募集しています。あなたのライフステージやキャリアビジョンに合わせて、最適なポジションで力を発揮してください。
募集中のポジション
独立心旺盛な若手研究者(特任研究員・ポスドク)
- 役割: 独自のテーマを持ち、仮説立案から論文執筆までを主導する。
- 魅力: 世界トップレベルのジャーナルへの投稿支援、海外留学や独立に向けたキャリアメンタリング。
- こんな方に: 将来、PI(主宰者)や製薬企業のプロジェクトリーダーを目指す方。
【注目】研究支援・技術専門職(特任研究員:研究補助・テクニカルスタッフ枠)
- 役割: ラボ独自の「スクリーニング」や「細胞実験」など、プロジェクトの実務(実験)を専門的に担当し、研究の屋台骨を支える。
- 魅力:
- 「実験のプロ」として評価: 論文執筆やグラント獲得のプレッシャーよりも、確実な実験データの取得が評価されるポジションです。
- 最先端技術の習得: ロボットを用いたHTS(ハイスループットスクリーニング)や、希少がんのモデル作成など、他では経験できない高度な技術が身につきます。
- ワークライフバランス: 実験計画に基づいた業務が中心のため、ご家庭やプライベートとの両立もしやすい環境です(勤務時間の相談可)。
- こんな方に:
- 博士号取得後、アカデミアの競争よりも「純粋に実験が好き」「安定して研究に携わりたい」と考える方。
- 企業での研究経験があり、アカデミアでそのスキルを活かしたい方。
- ブランクからの復帰を考えているが、最先端の現場で働きたい方。
[募集要項へ >]
大学院生
未来のがん治療を、あなたの手で創り出しませんか?がん治療学研究分野では、熱意ある大学院生を募集しています。ここでは、最先端のゲノム解析技術や創薬スクリーニングを習得できるだけでなく、「自分の研究が新しい薬になる」というダイナミックなプロセスを体感できます。実験手技から論文執筆、キャリア形成まで、PIとスタッフが手厚くサポートします。
- 求める人材: 生物学・薬学・医学のバックグラウンドを持つ方、創薬に興味がある方
- 連携大学院: 長崎大学大学院、東京科学大学大学院、慈恵医科大学大学院等の学位取得が可能です。
共通の職場環境
- 国立がん研究センター研究所内の最新共通設備(FACS, 共焦点顕微鏡, LC/MS等)が利用可能。
- 医師、学生、テクニカルスタッフがフラットに議論できる風通しの良いチームです。
研究実績(News & Publications)
Press Release:プレスリリース
- 2024年6月26日 SMARCB1遺伝子欠損型の小児・AYA世代のがんに有望な治療標的と阻害剤を発見
- 2019年1月25日 日本人に多い卵巣明細胞がんなどでみられるARID1A遺伝子変異がんを対象に代謝(メタボローム)を標的とした新たながん治療法を発見
- 2015年12月9日 合成致死に基づく新しいがん治療標的を発見
Selected Publications:主要論文
Sasaki M, Kato D, Murakami K, Yoshida H, Takase S, Otsubo T, Ogiwara H.Targeting dependency on a paralog pair of CBP/p300 against de-repression of KREMEN2 in SMARCB1-deficient cancers.
Nat Commun. 2024 15(1):4770.
Ogiwara H., Takahashi K., Sasaki M., Kuroda T., Yoshida H., Watanabe R., Maruyama A., Makinoshima H., Chiwaki F., Sasaki H., Kato T., Okamoto A., Kohno T.
Targeting the Vulnerability of Glutathione Metabolism in ARID1A-Deficient Cancers.
Cancer Cell. 35:177-190.e8. 2019.
Ogiwara H., Sasaki M., Mitachi T., Oike T., Higuchi S., Tominaga Y., Kohno T.
Targeting p300 addiction in CBP-deficient cancers causes synthetic lethality via apoptotic cell death due to abrogation of MYC expression
Cancer Discov. 6(4):430-445. 2016.



