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C.p53標的遺伝子であり、がん化促進能を持つIER5の機能解析

正常細胞では、HSF1(Heat Shock Factor1)という転写活性化因子の活性が低く保たれているが、HSF1は熱ストレスなどにより活性化し、ヒートショックプロテイン(Heat shock protein:HSP)を誘導することで、ストレスからの回復応答を誘導する。近年、HSF1は、がんの発生や悪性化にも関わっていることが報告されたが、その詳細なメカニズムは明らかとなっていない。

我々は、これまでがん化との関連が解明されていなかったIER5遺伝子が、腎がん、大腸がん、膵がんなど様々ながんで発現上昇し、HSF1と結合してHSF1を活性化しヒートショックプロテインを誘導し、ストレスを回避することでがん細胞の増殖に寄与することを明らかにした。

IER5の発現を抑制するとがん細胞の増殖が抑制されること、さらにはHSF1と結合できないIER5はHSF1を活性化できないことが示され、これらのことから、IER5とHSF1の結合を阻害する化合物の探索によって、がん治療薬の開発につながることが示唆された。

がん細胞は常に低酸素や栄養不足といったストレスに晒されており、ストレス下のがん細胞を保護するIER5遺伝子の機能はがん細胞の増殖や生存に重要であると考えられる。

図5:C. p53標的遺伝子でありがん化促進能を持つIER5の機能解析

図5:がん細胞はIER5遺伝子によりHSF1を活性化しがん細胞をストレスから保護し増殖する。

現在、ヒートショックプロテイン阻害剤をがん治療薬にする開発が進んでいるが、本研究成果を応用した、その上流にあるIER5を阻害する化合物の開発により、より効果の高いがん治療薬の創出に繋がることが期待される。

また、膀胱がん、脳腫瘍などでは、IER5及びヒートショックプロテイン高発現の患者で予後不良であり、IER5・ヒートショックプロテインの発現を調べたところ、正の相関が認められたことから、IER5-HSF1-ヒートショックプロテインという経路ががんの悪性化や転移に寄与する可能性が示唆された。今後、動物モデルを使った研究により、IER5ががんの浸潤転移にどのように関わるかを明らかにする予定である。