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E.胃がんマウスモデルを用いた、胃がん発症と悪性化に関わるp53 target geneの同定と機能解析
本研究により、悪性胃がんの良いモデルマウスを作製するとともに、胃がんの悪性化メカニズムを解明し、胃がん患者と死亡者を減らす事につながる新しい胃がん治療薬/診断薬の開発につながる研究成果を得たいと考えている。毎年、全世界で胃がんによる死亡者は約100万人に達しており、全世界のがん死亡者数の第2位を占めている。その中でも日本は特に胃がん多発国であり、毎年約5万人が胃がんで死亡している。死因となるような悪性の胃がんの効果的な治療と診断法の開発は、特に日本において、喫緊の研究課題である。
p53機能喪失はがんの悪性化と関わる事が知られるが、その分子的なメカニズムは明らかにされていない。死因となるような悪性の胃がんにおいてもp53変異が高頻度で認められるが、p53機能喪失がどのような悪性質の獲得につながるのかは未解明である。
金沢大学がん研究所 大島正伸教授が作製した胃がんモデルマウスであるGanマウス(K19-Wnt1/C2mE transgenic mouse)は、100%の頻度で胃がん(intestinal adenocarcinoma)を発症する。また、この際に生じた癌は、悪性度が低く、p53遺伝子は野生型である事がこれまでに判明している。そこで、本研究ではGanマウスをp53欠損マウスと掛け合わせ、ヒト悪性化胃がんを分子機序から再現する新規悪性胃がん病体モデルを作製する。さらに、このマウスで発症したがんを解析する事により、胃がんの悪性化に関わるp53標的遺伝子群を同定する。このようにして選出されたがん悪性化を抑制するp53標的遺伝子は、細胞レベル、遺伝子欠損マウスを使った個体レベルでの機能解析を行う。さらには、同定された遺伝子を標的とした癌治療薬、診断薬の開発を目指す。
図7:Ganマウスで発症するがんがp53機能喪失で悪性化すると考えられる。