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中小企業の職場禁煙プログラムの実施方法を整理 ― 効果を保ちながら柔軟に導入するための要素を明らかに
更新日 : 2026年4月8日
中小企業の職場禁煙プログラムの実施方法を整理 ― 効果を保ちながら柔軟に導入するための要素を明らかに
中小企業における職場禁煙プログラムの適応:FRAME-ISを用いたKey formsの特定
【なぜこの研究を行ったのか】
喫煙は、がんや心臓病など多くの病気の原因となる重要な健康問題です。職場で喫煙対策を進めることは、従業員の健康を守るだけでなく、病気による欠勤の減少や生産性の向上にもつながります。
しかし、職場で喫煙対策を広げるうえでは、次のような課題があります。
・特に中小企業では人員や専門知識などの資源が限られているため、喫煙対策が十分に実施されていない。
・研究で効果が示された健康プログラムでも企業ごとの状況が異なるため、そのまま導入することが難しい。
そこで本研究では、中小企業の職場で喫煙対策を進めるための支援プログラム(eSMART-TC)を対象に、実際の職場でどのように導入・実施されるのかを分析しました。特に、プログラムの効果を保つために重要な要素と、現場の状況に応じて調整できる要素を明らかにすることを目的としました。
【どのように研究を実施したのか】
研究では、研究者と保健専門職が企業と協力しながらプログラムを実施し、その過程で行われた取り組みや変更の内容を記録しました。これらの変更は、介入の実施過程で生じる調整や変更を整理するための研究の枠組みである「FRAME-IS」を用いて記録しました。
さらに、その記録をもとに研究者と保健専門職が議論を行い、プログラムを効果的に、かつ柔軟に実施するために重要な要素を整理しました。
【分かったこと】
喫煙対策プログラムの実施には
・4つの基本的な機能(Core functions)
・26の具体的な実施方法(Forms)
があることが整理されました。
さらに、26のFormsを整理した結果
・19項目はやり方を変えずに実施することが望ましい方法(Key forms)
・7項目は企業の状況に応じて柔軟にやり方を調整できる方法(Forms)
であることが示されました。
下の表に具体例を示しました。例えば、喫煙者に対して禁煙外来など科学的根拠に基づいた方法を紹介することは、やり方を変えずに実施することが望ましいと考えられます。一方で、禁煙希望者に禁煙宣言書を提出させるかどうかは、事業所の考え方や個人のニーズに応じて柔軟に変更することが可能です。
つまり、Key formsはやり方を変えずに実施することが重要であり、Formsは状況に応じて調整しても効果的な喫煙対策支援が可能であることが分かりました。
また、研究者だけでなく企業担当者や保健専門職など、関係者が協力してプログラムを改善していくことが、職場の状況に合った喫煙対策を進めるうえで重要であることも明らかになりました。
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Core function (重要な機能) |
Forms (具体的な実施方法) |
Key forms (そのまま実施したほうが良い項目) |
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禁煙キャンペーンを通じて従業員の禁煙を支援する |
担当者は、喫煙者に対し、禁煙外来クリニックなどの科学的根拠に基づいた禁煙方法を紹介する |
〇 |
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キャンペーンの準備期間は1ヶ月とする |
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禁煙希望者は、禁煙宣言書を提出する |
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担当者は、喫煙者と面談をして禁煙への関心度を評価し、それに応じて必要なアドバイスを提供する |
〇 |
【分かったことをどう活かしていくのか】
本研究から、健康増進プログラムを実際の職場に導入する際には、
・効果を生み出すために重要な要素(Core functions)と具体的な実施方法(Forms)を特定する。
・実施方法は、現場の状況に応じて柔軟に調整するもの(Forms)と、調整せずにそのまま実施するもの(Key forms)に分けて実施する。
ことが重要であることが示されました。
これらの知見は、特に資源が限られている中小企業において、喫煙対策の効果を保ちながら取り組みを広げるための実践的な手がかりとなることが期待されます。
本研究は特定の喫煙対策プログラムを対象としているため、他の健康対策にそのまま当てはまるとは限りません。今後は、より多くの企業でこの方法を検証し、職場での健康づくりの取り組みをさらに広げていくことが期待されます。