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自らがんを経験した人と、家族や友人ががんを経験した人のがん検診受診状況の比較:日本における横断調査(INFORM Study 2020)
更新日 : 2023年11月6日
目的
がんを経験したサバイバー、家族や親しい友人ががんを経験した人、自分も家族も友人もがんを経験していない人について、がん検診の受診状況や、がん検診に対する考えが異なるのかどうかを、横断調査のデータを使って明らかにすることにしました。
方法
INFORM Study2020の調査票の有効回答者3605人(回答率37.1%)のうち、3269人をデータ分析の対象としました。その内訳は、がんサバイバー(n=391)、自分はがん未経験だが家族ががん経験者(n=1674)、自分はがん未経験だが親しい友人ががん経験者(n=685)、自分も家族や親しい友人もがんを経験していない人(n=519)の4つのグループでした。これらの人たちの、対策型がん検診5種類(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん)と任意型がん検診1種類(前立腺がん:PSA検査)の受診の有無を比較しました。同様に、がん検診に関連する考えとして、「自分ががんになる可能性」「自分ががんになることへの心配」などを比較しました。
結果
がんサバイバーは、本人も家族・友人もがんを経験していない人と比べると、胃がん検診(OR, 1.75; 95% CI, 1.04-2.95)、大腸がん検診(OR, 1.56; 95% CI, 1.03-2.36)、肺がん検診 (OR, 1.71; 95% CI, 1.10-2.66) をより受診していることがわかりましたが、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん(PSA検査)の検診受診とは関連がありませんでした。家族にがん経験者がいることは、大腸がんおよび肺がんの検診受診と関連がありました。親しい友人にがんサバイバーがいることは、PSA検査の受診と関連していました。がんサバイバーと家族にがん経験者がいる人は、自分も家族や親しい友人もがんを経験していない人と比べて、「自分はがんにかかりやすい」「がんになることについて心配だ」と認識していました。がんサバイバーは他のグループより、検診でがんを発見できると強く信じており、検診を受ける傾向が強く見られました。またサブグループの分析により、がんサバイバーの胃がん検診と大腸がん検診の受診の間に交互作用があることが示されました。
結論
自分自身や家族・親しい友人ががんと診断された経験は、個人のがんに関する考えやリスク認知に影響を与え、がん検診を受ける可能性を高めると考えられます。本研究の結果は、がん検診の受診勧奨等のコミュニケーションの際に、対象者に合わせてメッセージを調節することが重要であることを示唆しています。例えば、がんに罹患することを心配している家族には早期発見すれば治療が可能だという自己効力感を高めるようなメッセージが必要な一方で、がん未経験者には「がんは他人事ではなく、あなたやあなたの大切な人にいつでも起こりうる」といった注意喚起のメッセージが有効である可能性があります。
発表論文
Akiyama M, Ishida N, Takahashi H, Takahashi M, Otsuki A, Sato Y, Saito J, Yaguchi-Saito A, Fujimori M, Kaji Y, Shimazu T, for the INFORM Study Group. Screening practices of cancer survivors and individuals whose family or friends had a cancer diagnoses – a nationally representative cross-sectional survey in Japan (INFORM Study 2020). J Cancer Surviv. 2023 Jun;17(3):663-676. doi: 10.1007/s11764-023-01367-4.