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「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」についての知識、態度、遵守の阻害要因に関するWebアンケートによる横断的な全国調査
更新日 : 2022年11月29日
背景
2019年7月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)と日本癌治療学会(JSCO)は、GRADEシステムに基づく診療ガイドライン作成方法であるMinds 診療ガイドライン作成の手引き2014に従って作成した「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」(以下、JSMO-JSCO CPG)を発行しました。発行から1年後の2020年9月に、本ガイドラインがJSMO会員およびJSCO会員にどの程度周知され、日常診療で活用されているかを調査しました。
方法
JSMO会員およびJSCO会員を対象に、全国規模の横断的なWeb上でのアンケート調査を実施しました。調査対象者のJSMO-JSCO CPGの認知度、クリニカルクエスチョン(CQ)毎の推奨に対する知識、態度、遵守の阻害要因について、先行研究で使用されたフレームワーク(図)に基づき作成した質問票を用いて調査しました。
結果
2020年9月から10月の期間に、JSMO会員およびJSCO会員1,230名から回答がありました(回答率はJSMO会員8.6%, JSCO会員4.8%)。調査時点でがん薬物療法に関与していない107名は除外されました。残りの回答者1,123名のうち、調査前にJSMO-JSCO CPGを認知していたのは674名(60.0%)で、そのうち492名(73.0%)が、ガイドラインの全部または一部を読んだと回答しました(書籍57.1%、JSMOウェブサイト34.8%、JSCOウェブサイト14.0%)。CQ毎の推奨に対する知識、態度、遵守の阻害要因は、CQ毎に大きく異なっていました。遵守の阻害要因(推奨に即した治療を行っていない理由)として最も挙げられたのは、推奨を知らなかった、推奨に同意しない、エビデンスが乏しい、患者アウトカムを改善するという期待がない、患者の希望・価値観と異なる、患者の要因(フレイルな患者が多い、併存疾患・身体機能低下など)でした。
結論
本調査では、ガイドライン遵守の阻害要因は、医療従事者の知識、態度、外的要因(患者要因)など、CQ毎に異なることが確認されました。これらの阻害要因を克服するために効果的な戦略をとることで、ガイドラインの実装を促進することが期待されます。今回の調査結果を踏まえ、日常診療における診療ガイドラインの普及を進める取り組みが必要です。
発表論文
Matsuoka A, Shimazu T, Takahashi M et al. A nationwide, cross-sectional, web-based survey on healthcare providers’ knowledge about, attitudes toward, and perceived barriers to adherence to clinical practice guidelines for anticancer drug therapy for older patients with cancer in Japan. J Geriatr Oncol 2022 https://doi.org/10.1016/j.jgo.2022.10.014