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2024年度「患者・市民パネル」検討会~みんなで考えて実装できるがん予防~
開催日時
開催日:2024年11月9日(土曜日) 開催時間:13:30~16:30
開催方式
現地(国立がん研究センターセミナールーム)とオンラインのハイブリッド
プログラム
- 開会挨拶
- 講演 「みんなで考えて実装できるがん予防~実社会で広く活用されるために~」
- グループディスカッション
- 各グループからの報告・全体共有、コメント
- 閉会挨拶
概要
国立がん研究センターでは、患者さんやその家族、一般市民の視点をふまえたがん対策の推進を目指し、全国のがん患者・家族・市民の皆さま約100名からなる「患者・市民パネル」にご意見をいただきながら、さまざまな取り組みを進めています。11月9日(土曜日)に、患者・市民パネルが集って意見交換する検討会を現地とオンラインのハイブリッドで開催し、全国から70名(現地55名、オンライン15名)のパネルのメンバーが参加しました。
開会にあたり、瀬戸泰之・国立がん研究センター中央病院長が挨拶しました。瀬戸病院長は「患者・市民参画(PPI)が最近の話題となる中、2008年から継続しているこの患者・市民パネルは先駆的な取組といえる。今回の検討会は北海道から九州まで幅広い年代の方々にお集まりいただく機会となった。患者・市民の視点からの声をいただくことが当センターにも日本のがん対策にも重要。ぜひ闊達な議論をお願いしたい」と述べました。
続いて当センターがん対策研究所行動科学研究部から、島津太一室長が「みんなで考えて実装できるがん予防」をテーマに講演しました。
有効であることがわかっているにもかかわらず市民に届いていないがん対策を、どのように届けるかを研究する「実装科学」という学問分野があります。限られた資源や人材でがん予防法を実装するためには優先順位をつけて重点的に取り組むことが必要で、研究者だけでなくがん予防法の利用者である市民の考え方を取り入れていくことが重要になります。一方で、日本では市民の意見を反映するための透明性のある仕組みがまだ整っていない状況が共有されました。
続いて患者・市民パネルを対象に事前に行われたアンケートの結果が紹介されました。がん予防法の評価基準6つ(疾病負荷の軽減、公平性、費用、観察可能性、複雑性、エビデンスと実践のギャップ)が用意されていましたが、研究者側の観点になかった新たな評価基準「費用対効果が高いか」「平等に提供されるか」が患者・市民側から得られました。
島津室長は、「ディスカッションによってがん予防法や評価基準への各々の理解を深めていただきたい。そして検討会終了後のアンケートで、評価基準の重要度について自信をもって順位付けしていただきたい。患者・市民による順位付けと、がん予防分野の研究者による予防法の採点とを組み合わせて、当センターで今後取り組む研究テーマに反映させる予定である」と述べました。
グループディスカッションでは、各々が考えるがん予防法の優先順位を決める評価基準とその理由を共有し、グループとしてどの評価基準を重要と考えるかを意見交換しました。現地9グループ、オンライン3グループには、患者・市民パネルに加えて、国立がん研究センターの職員がファシリテーター・書記として議論をサポートしました。
各グループから次のような話題や意見が出ました。「市民目線で自分事として考えると、公平性(格差の縮小)、複雑性(簡便に利用できるか)、観察可能性(効果が実感できるか)が重要。費用や費用対効果は国の立場で考えると出てくる基準だと思う」「HPVワクチンには効果があるのに積極的に実施されなかった期間がある。エビデンスと実践のギャップが重要で、不安や恐怖心があり解消する手立てが必要」「実際のデータに裏付けられた正しい情報を市民に届けることが重要」「効果が出るまでの時間が短いかどうかも重要になる」
各グループからの発表を受けて、島津室長は「用語などが研究者目線であることに気づかされた。費用とは国の資金なのか個人の自己負担なのか、公平性と平等性の違いがわかりにくいなどの意見があり、今後は定義を明確に示したい。また、多くのグループで情報発信やがん教育が話題になっていたことは興味深い。研究者が効果を考えるときには、がんにかかる人やがんで亡くなる人が減ることを重視する。しかし、情報や教育によって人々のがんの知識が増えるということも、格差の縮小や費用対効果にもつながることが期待できるため、重視すべき「効果」ではないかと感じた。このディスカッションをふまえて事後アンケートでは、個別のお考えもお聞きしたい」とコメントしました。
最後に井上真奈美・がん対策研究所副所長は閉会挨拶の中で「年2回開催している患者・市民パネル検討会は、当センターの研究者や医療者に欠けている視点を提供していただく心強い場である。これほどたくさんの人々が集う中で出された意見の多様性と、その中に見える共通する思いは、当センターの方向性を検討する上でとても重要。患者・市民パネルのメンバーは毎年入れ替わるが、これまでの継続した活動は知見の蓄積として大きな意義がある」などと述べました。