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2025年度「患者・市民パネル」検討会 ~2040年を見据えたがん医療のあり方を考える~
開催日時
開催日: 2025年11月30日(日曜日) 開催時間: 13:30~16:30
開催方式
現地(国立がん研究センターセミナールーム)とオンライン(Zoom)のハイブリッド
プログラム
- 開会あいさつ
- 説明/事前アンケート結果紹介
- グループディスカッション ~2040年を見据えたがん医療のあり方を考える~
- 各グループからの発表・全体共有
- 全体討論
- 閉会あいさつ
概要
国立がん研究センターでは、患者さんやご家族、一般市民の視点をがん対策に取り入れることを目的に、2008年度から「患者・市民パネル」の活動を行っています。2025年11月30日(日曜日)には、「2040年を見据えたがん医療のあり方を考える」をテーマとした検討会を、現地とオンラインを併用したハイブリッド形式で開催しました。当日は、全国各地より72名(現地62名、オンライン10名)のパネルメンバーが参加しました。
開会にあたり、松岡豊・がん対策研究所長は「超高齢化や医療人材不足などにより2040年にはがん医療を取り巻く環境が大きく変化する可能性がある」と指摘しました。また「当事者として地域ごとの状況や課題を踏まえながら、将来の医療提供体制を考えていくことが重要であり、本日の議論で得られた示唆を地域や関連機関で共有し、今後の議論のきっかけとなることに期待する」と述べました。
続いて、和田佐保・がん医療支援企画室長が、今回のテーマと事前アンケートの結果について説明しました。これまで全国で整備を進めてきた「がん医療の均てん化」と、限られた医療資源を効果的に活用するための「医療の集約化」をどのように両立させていくかが今後の大きな課題であることを共有しました。医療体制を見直す過程では、地域の住民がどのように医療へアクセスし、どのような不安を抱えるのかを丁寧に把握する必要性が強調されました。
グループディスカッションでは、現地9グループ、オンライン3グループの計12グループに分かれ、がん情報提供部、がん医療支援部、行動科学部スタッフのファシリテーションのもと、二つのテーマについて意見交換を行いました。一つ目のテーマは、「あなたが暮らす地域におけるがん医療の提供体制の現状」についてです。専門の医療機関までの距離が遠く受診時の移動や宿泊に負担が生じていること、交通費などの経済的負担が大きいこと、医療者不足により診療体制にばらつきがあること、医療情報へのアクセスに地域差があることなど、日常生活に直結するさまざまな課題が共有され、地域によって状況が異なる実態が見えてきました。
続いて取り上げたテーマは、「2040年を見据えた今後のがん医療の提供体制のあり方について」です。議論では、医療機関の役割分担をより明確にし、地域で標準治療を受けられる体制を維持していくことの重要性が挙げられました。また、専門医療機関との連携強化や、医療集約化の背景や目的を国民にわかりやすく伝えていく必要性についても意見が交わされました。さらに、通院可能な医療機関が限られることへの不安や、医療と生活支援を一体として整える必要性など、地域の実情に根ざした視点も多く示されました。
こうした議論を踏まえたグループ発表では、「医療のテーマパークのように治療と支援を集約した拠点をつくる」「AIをより活用して医療者の負担を軽減する」「患者を横断的に支えるがんケアマネージャーを新設する」といった、多様で具体的な提案が示されました。

グループディスカッションで出されたご意見やアイデアを受けて、藤澤大介・がん医療支援部長の司会進行で全体討論を行いました。全体討論では、参加者から次のような話題や意見が出ました。
「産科医療の集約化を現場で経験した立場から、人材不足や現場の負担を懸念している」「希少がんでは、大きい病院で治療した後に地域へ戻る際の連携不足が課題となっている。切れ目のない支援体制が重要」「通院の負担の増大が就労継続を難しくする。治療と仕事の両立を支える制度づくりを」「相談支援センターやサロンを訪れるにはまだハードルが高いと感じる。改善されることを望む」
これらの意見を通じて、医療・生活・就労・相談支援などが途切れずつながる体制づくりが、2040年を見据えた共通の課題として浮かび上がりました。
各グループからの発表や全体討論で出された意見を受けて、オブザーバーの藤也寸志・国立病院機構九州がんセンター名誉院長より、「集約化と均てん化は相反するものではなく、どこに住んでいても標準治療が受けられる体制を維持しつつ治療成績の向上を図るためには、集約化と均てん化の双方を両輪として考えていく必要がある」とのコメントがありました。また、地域の中小病院を含む医療の底上げを図り、拠点病院が地域全体を支える役割を担っていくことの重要性が述べられました。
最後に八巻知香子・がん情報提供部長より、がん対策がこれまで患者・市民の声に支えられて発展してきた経緯に触れながら、2040年を見据えた今回の議論に多様な視点を寄せていただいたことへの感謝が述べられました。八巻部長は、制度やサービスの見直しが求められるこれからの時代において、地域で暮らす患者・市民の視点を大切にし、引き続き協働しながら議論を重ねていくことが重要であると強調しました。
検討会後には交流会も開催され、参加者同士が日頃の経験や思いを共有する有意義な時間となりました。