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国立がん研究センター

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口腔がんの療養について

最終更新日:2023年10月17日

前回の動画▷口腔がんの治療について

リハビリテーション

口腔がんは生命に関わる重大な疾患であることはもちろん、生活するうえで重要な「食べる」「話す」といった機能が損なわれてしまうことがあります。これらの機能を保つことを目的として、手術を希望されない患者さんもいらっしゃいますが、口腔がんの治療成績は向上しており、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた治療をしっかり行うことをおすすめしています。

舌がんをはじめとする口腔がんの手術後は、切除した範囲の大きさにもよりますが、言葉をはっきり話せなくなったり(構音障害)、食べ物を噛んだり、飲み込んだりする機能の低下(摂食・嚥下障害)をきたして しまうことがあり、これらの機能を回復させるため、様々なリハビリテーションが必要になる場合があります。特に、自分の口から食べ物を食べたり飲み込んだりすることは、術後の回復を早めるためにも重要であり、誤嚥の防止にも役立ちます。損なわれた機能を補い、これまでの生活に近づけるためにも、ぜひ前向きにリハビリテーションに取り組んでください。

口腔がんのリハビリテーションでは、担当医や看護師はもちろん、発声や嚥下などの訓練を行う言語聴覚士(ST)、栄養状態の管理や食事形態の検討などを行う管理栄養士、口腔ケアや嚙み合わせ調整、口腔内補助装置の製作を担う歯科口腔外科医や歯科衛生士といった多くの専門家が協力しながら、チームとして患者さんをサポートしていきます。とくに口腔がんでは、手術した部位や切除範囲、回復状況など、個人差が大きいため、患者さん一人ひとりの状態に合わせたリハビリプログラムにそって、できるだけ術後早期から訓練を進めていきます。

<嚥下のリハビリテーション>

通常、飲食物は食道へ、空気は気管へとふり分けられますが、手術後はこの働きが低下して飲食物が肺に入ってしまい、誤嚥性肺炎などを起こすことがあります。こうした危険を避けるため、口から食事できるようになっても、食べ物にとろみをつけたり、一口量から少しづつ量を増やしていくなどの注意が必要です。

舌がんで舌を切除した場合では、残っている舌の大きさや再建した舌の状態に合わせて、舌そのものの運動訓練を行ったり、舌を使わずに飲み込む動作を練習したりします。

舌が動かせない場合は、熱いものをズルズルとすする、いわゆる「すすり飲み」が適しています。また、いすの背もたれに寄りかかり、首を後ろに曲げ、重力を利用して喉に食べ物を送り込む訓練を行うこともあります。

<構音のリハビリテーション>

頬や唇、残っている舌などのうち、どの部位をどのように動かせば、発音できるかについて、鏡などを見ながら練習します。舌を切除している場合には、舌の運動訓練が必要です。また、唾液がうまく飲み込めないことで、正しい発声・発音が難しくなっているような場合には、唾液をしっかり飲み込むための嚥下訓練とともに、口を大きく動かして発声・発音する練習を行います。

<装置を使ったリハビリテーション>

手術後の状態により、舌接触補助床(PAP)や軟口蓋挙上装置(PLP)という装置を口にはめて、嚥下や発音の練習を行うことがあります。PAPは、舌と口蓋(上あご)との間の隙間を埋める入れ歯のような装置で、舌の動きが悪く、舌が上あごに接触できない人に用います。舌が上あごに接触すると、カ行やタ行が発音しやすくなります。PLPは、軟口蓋の動きがよくない人に用います。上あごに装着し、軟口蓋を少し持ち上げることで、息が鼻に漏れるのを防ぎ、発音しやすくなります。

<頸部郭清術後のリハビリテーション>

頸部のリンパ節郭清を行った場合、手術後に、顔のむくみ、頸部の変形・こわばり、肩があがりにくくなるなどの運動障害があらわれることがあります。理学療法士や作業療法士などの指導のもと、肩や首に負担がかからない生活を心がけながら、腕をあげたり、肩や首を回したりするリハビリテーションを行います。退院後も継続することで症状は軽減されます。

口腔がんのリハビリテーションは、退院後も外来や自宅で継続しなければならないケースも多く、長期間に及ぶこともあります。うまくいかず、もどかしい気持ちになることもあるかもしれませんが、口の機能は、栄養状態や生活の質(QOL)に直結する重要な機能ですので、焦らず、リハビリテーションを続けていただきたいと思います。

復職を希望されている場合は、今後の回復の見込み(どの程度まで嚥下機能、構音機能が回復するか、どのくらいの期間がかかるのか)も含めて担当医とよく話し合ったうえで、復帰に向けた目標を設定します。目標に向かって、チーム一丸となって取り組んでいきますので、分からないこと、不安なことがあれば、気軽に相談してください。

療養

口腔がんの治療には、治療法によって2週間から3ヵ月程度かかります。手術が主となるため、入院が必要で仕事や学校を休まざるを得なくなりますが、再発が多いがんでもありますので、最初にしっかりと治療することが大切です。

治療を受ける際には、口腔ケアを積極的に行うことで、合併症を予防することができます。口の中にたくさん存在する細菌が原因で感染症になることがありますので、粘膜に刺激のないやさしいブラッシング、うがいやこまめな水分補給など、口の中を常に清潔でうるおった状態に保つようにしましょう。治療後も定期的に口腔内の検診を受け、虫歯などがあれば早めに治療するようにしてください。

手術した部位によっては、口や舌、首が動かしにくくなったり、痛みやしびれなどの後遺症があらわれることもあります。そのままにしておくと、機能が低下してしまうため、安静が必要な期間を過ぎたら、機能回復のための練習(リハビリテーション)が必要です。話す、飲み込む、食べるといった動作は、多くの筋肉や神経の複雑な働きによって可能になります。身ぶりや手ぶり、メモによる筆談などを組み合わせながら、なるべく喉を使うように心がけましょう。喉の動きをよくすることが、話す、飲み込むなどの動作の助けになることもあります。

手術後の後遺症で、これまで通りの生活ができず、不安に思うこともあると思いますが、多くの場合は、だんだんと日常生活に支障なく過ごせるようになります。治療後は、リハビリテーションを中心にしたスケジュールを組み、焦らずに日常生活を取り戻していくことが大切です。不安に思っていることがあれば、主治医とよく相談してください。

放射線治療を行った場合も、口の中の乾燥や味覚障害、食事がしにくいといった副作用がみられることがあります。これらは、しばらくすると回復しますが、治療後かなり経ってから、虫歯や骨髄炎があらわれることもありますので、口の中の状態には十分に気をつけながら生活を送る必要があります。

口腔がんの患者さんは、咽頭がんや食道がん、肺がんなどを併発しやすく、治療から数年たって再発するケースもあります。治療後1年間は1~2ヵ月に1回程度、受診間隔は広がっていきますが、完治には5年間の継続的な受診が必要です。再発や併発のリスクを減らすためにも、治療中はもちろん、治療後も禁煙し、飲酒を控えるなど、生活習慣に注意してください。

定期的な検査や規則正しい生活を心がけながら、体調管理、機能回復に努めましょう。

予防

口腔がんは、自覚症状に乏しく、口内炎や口の中のけがと区別しづらいため、症状が進んでから気づくことも少なくありません。一方で、 喫煙や飲酒などの生活習慣を改善し、口の中を清潔に保つことで、予防することができるがんでもあります。ふだんから自分で口の中をチェックしたり、1年に一度は口腔内の検診を受け、早期発見を心がけてください。気になる症状が3~4週間以上続くようであれば、早めにかかりつけ医や耳鼻咽喉科、頭頸部外科医、歯科医などに相談しましょう。

図:口腔がんを予防するための注意

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図:口腔がんのチェックリスト

oral_004_9.png
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