国立がん研究センターの生物統計家3名が
一般社団法人日本計量生物学会の試験統計家認定制度で「責任試験統計家」として認定されました
国立がん研究センターの生物統計学の専門家3名(研究支援センター生物統計部/社会と健康研究センター 保健社会学研究部長 山本精一郎、研究支援センター生物統計部長 柴田大朗、研究支援センター生物統計部/東病院 臨床研究支援部門 研究企画推進部 生物統計室 主任 野村尚吾)が、このほど一般社団法人 日本計量生物学会の試験統計家認定制度により、責任試験統計家として認定されました。
試験統計家認定制度は、臨床研究の科学的かつ倫理的な質を高めることで人々が有効かつ安全な医療の恩恵を受けること、併せて計量生物学の進歩と発展を目指し創設されたもので、国内の大学、医療機関、企業に所属する29名の責任試験統計家が今回初めて認定されました。
一般社団法人 日本計量生物学会
日本計量生物学会 試験統計家認定制度
責任試験統計家認定者一覧(外部PDFファイルへリンクします)
国立がん研究センターでは医師主導治験を含む臨床試験を数多く実施していますが、医療上の重要な研究仮説を取りあげ質の高い臨床試験を計画するためには、生物統計学の専門家の関与が必須です。
新しい治療法の効果や安全性を評価するためには、治療の対象となる患者さんの条件と人数、治療方法、比較対照とする治療、データを集める項目や集め方の規定、データの解析方法などを予め慎重に検討し、計画を立案することが必要ですが、その検討には統計学的な観点が欠かせないため、臨床試験を行う際には生物統計学の専門家を研究組織の一員として含めることが重要です。
そのため、1996年に一人目の生物統計家を常勤研究員として雇用して以来、継続的に体制整備に努めており、2018年4月現在8名の常勤生物統計家を擁しています。
医薬品の開発に関しては、1998年に公表された日・米・EU三極医薬品規制調和国際会議(ICH)のガイドライン「臨床試験のための統計的原則」(ICH-E9ガイドライン)により、生物統計学の重要性や生物統計家が臨床試験に関与することの必要性がより具体的に認識されるに至りましたが、日本国内においてはまだまだ生物統計家の数が少なく臨床試験のニーズに十分に対応出来ていない現状にあります。
さらに、昨今、研究不正の問題が社会的に注目されたという情勢もあり、研究を正しく行うための質の担保も求められるようになってきました。
そのような中、生物統計学の専門家が多く所属する一般社団法人日本計量生物学会が、臨床研究の科学的かつ倫理的な質を高めることで人々が有効かつ安全な医療の恩恵を受けること等を目指し「臨床研究の統計的デザインと解析・統計家の行動基準に関し深い知識を有し、実践している者を試験統計家(trial statistician)として認定」する、試験統計家認定制度が創設されました(http://www.biometrics.gr.jp/recognition/index.html)。
認定制度は、臨床研究のデザインと解析に関連する実務を行う「実務試験統計家」と臨床研究のデザインと解析の科学的・倫理的側面の責任を負う「責任試験統計家」の2種類の区分からなり、実務試験統計家も今後認定されます。
国立がん研究センターでは、生物統計学の専門家だけでなく様々な領域の専門家の協働を着実に推進し、質の高い科学性と倫理性の担保された臨床研究をより積極的に実施していきたいと考えています。